
健康診断とは、病気を確定するためのものではなく、「スクリーニング検査(ふるい分け)」としての役割を担っています。日々の生活では気づきにくい変化を早めに見つけ、必要に応じて医療機関での精査や対応につなげることが目的です。
健診は、年齢や施設の種類に応じて「児童福祉法」や「学校保健安全法」などの法律に基づき、すべてのお子様に対して毎年定期的に行われることが義務づけられています。
健診をより有意義なものにするために、事前にいくつかの点を確認・準備しておくと安心です。
問診票は、お子様の普段の状態を把握するための大切な資料です。以下の点を事前に確認しておきましょう。
■現在服用中の薬・アレルギーの有無
■最近気になっている症状(疲れやすい、視力の変化、頭痛など)
■既往歴(これまでにかかった主な病気や手術)
■発達面や生活面で気になっていること
■前日は十分な睡眠をとらせる(特に視力・聴力検査の精度に影響します)
■尿検査がある場合は、指定された時間帯の尿を採取する
■動きやすい服装で登校させる(内科診察で脱衣しやすいものが便利です)
■眼鏡・補聴器を使用しているお子様は、必ず持参させる
普段気になっていることや、配慮が必要な事情がある場合は、健診前に担任の先生や養護教諭に伝えておくことで、スムーズな対応につながります。
■ 身長・体重の測定
成長の様子を確認します。急激な増減や、年齢・性別の平均から大きく外れている場合には、成長ホルモンなどのホルモン分泌の異常がないかなどを調べるため、医療機関への受診を促すことがあります。
■ 視力・聴力検査(年齢・発達に応じて)
普段の生活では気づきにくい「見えにくさ」「聞こえにくさ」を確認します。特に小学生においては、視力は本人が自覚していないことが多く、黒板の文字が見えにくい、授業に集中しづらいなど学習への影響が出ることがあります。健診で視力の低下が疑われた場合には、眼科での精密検査やメガネの作成が必要となることもあります。聴力についても、学習や集団生活への支障を防ぐために、早期発見・対応が大切です。
■ 歯科健診
むし歯、歯肉炎、噛み合わせ、生え変わりなどを確認します。初期の異常は痛みを伴わないことも多く、早期発見が大切です。
■ 尿検査(小学生以上)
腎臓や代謝に関わる病気の早期発見を目的としています。たんぱく尿・血尿・尿糖などを調べ、腎臓の機能異常(特にIgA腎症)や代謝の異常(糖尿病)を示す可能性がある場合は、再検査や精密検査が勧められます。
■ 心電図検査
小学生以上の特定の学年で行われます。心臓疾患や不整脈の疑いを検出することができます。
■ 内科健診(身体診察)
背骨のゆがみ(側弯症):事前に問診票で姿勢のチェックを行うことが多いです。普段からの姿勢も影響しますので、姿勢が気になる方はストレッチなどもお勧めです。
心音・呼吸音の異常:肺の音・心臓の音を聴診します。稀に心臓の雑音が聞こえることもあり、心電図の結果などと合わせて精査を勧める場合があります。
甲状腺の腫れ:甲状腺ホルモンの異常と関連することがあり、触診でチェックを行います。
皮膚の状態:全身を確認し、湿疹やかぶれなどのトラブルがないかをチェックします。アトピー性皮膚炎は慢性的なかゆみや肌荒れが学習・生活に影響を与えることもあり、受診を促すことがあります。
全身状態・発達の様子:年齢に照らして明らかに気になる様子(発語・運動発達・受け答えなど)があれば、総合的に判断して医療機関への相談を促します。
近年、身体的な健康に加えて、子どもの発達やメンタルヘルスへの関心が高まっています。健診の場では詳細な発達評価を行うことはできませんが、学校生活への適応に難しさを感じている場合や、集中力・コミュニケーションに気になる点がある場合には、健診を機に専門家への相談を検討することも大切です。
不登校や情緒的な問題、発達障害の特性(ADHD・ASD・学習障害など)は、早期に気づいて適切なサポートにつなぐことで、お子様の生活の質が大きく改善することがあります。
気になることがあれば、担任の先生・養護教諭・スクールカウンセラー、かかりつけの小児科医など、まずは身近な専門職に相談してみてください。
健診の結果はご家庭に通知されます。「要受診」「要精密検査」などの所見があった場合も、必ずしも病気というわけではありませんが、念のため医療機関での確認をお勧めします。
| 視力の異常 | 眼科 |
|---|---|
| 聴力の異常 | 耳鼻咽喉科 |
| 歯科の異常 | 歯科・小児歯科 |
| 尿検査の異常 | 小児科または腎臓内科 |
| 心電図・心音の異常 | 小児循環器科または小児科 |
| 甲状腺・内分泌の異常 | 小児科または内分泌科 |
| 皮膚の異常 | 皮膚科 |
| 発達面の気になること | 小児科・発達外来・児童精神科 |
また、園や学校では必要に応じて保健指導や健康相談を行い、生活習慣や発達面のサポートも行っています。健診の結果を受け取ったら、まず学校の養護教諭に相談するのも一つの方法です。
**Q. 眼鏡や補聴器をつけたまま検査してよいですか? **
A. 視力・聴力検査は、「矯正なし」の状態で行うのが基本です。眼鏡・補聴器は持参のうえ、当日の指示に従ってください。矯正あり・なし両方を測定する場合もあります。
**Q. 子どもが健診を嫌がる・怖がる場合はどうすれば? **
A. 事前に「どんなことをするか」をやさしく説明してあげると安心感につながります。「お医者さんがからだを元気に守るために確認してくれるんだよ」など、ポジティブな言葉かけを心がけましょう。強く怖がる場合は、担任や養護教諭に事前に伝えておくと配慮してもらえます。
**Q. 「要受診」の通知が来たけれど、急いで受診する必要がありますか? **
A. 通常の「要受診」通知は、緊急を要するものではありません。ただし、放置するとリスクが高まる場合もありますので、2〜3週間以内を目安に受診することをお勧めします。「早急に受診してください」などの記載がある場合は優先的にご対応ください。
Q. 健診で異常がなければ、かかりつけ医への相談は不要ですか?
A. 健診はあくまでスクリーニング(ふるい分け)です。「異常なし」でも、普段の生活で気になることがあれば、かかりつけの小児科医にご相談ください。些細なことでも相談できる「かかりつけ医」の存在は、お子様の健康管理においてとても大切です。
Q. 尿検査の採取のコツはありますか?
A. 起床後の最初の尿(早朝尿)を使用するのが基本です。採取の際は、中間尿を取ることが大切ですので、最初に少し排尿してから容器に採取するようにしましょう。前日の水分摂取量や激しい運動は結果に影響することがあるため、健診前日は普段通りの生活を心がけてください。
健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。お子様の成長と健康を、学校・家庭・医療が連携して支えるための大切な機会です。
健診に限らず、お子さまの体調や発達、生活面で気になることがある場合には、事前に園や学校へご相談・共有いただくことがとても大切です。ご家庭と園・学校が協力し合いながら、お子さま一人ひとりの健やかな毎日を支えていけたらと願っています。
解説者:小児科専門医 みてねコールドクター小児医療アドバイザー 風間尚子先生

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