2025.12.12
ドクター通信

RSウイルスから守る、“おなかの中で始まる予防接種”

― 妊娠中に受けるRSウイルスワクチン「アブリスボ」―

RSウイルスは、冬から春にかけて流行する呼吸器の感染症で、ほとんどの子どもが2歳までに一度はかかるといわれます。多くは軽い風邪のような症状で済みますが、生まれたばかりの赤ちゃんでは細気管支炎や肺炎を起こし、入院が必要になることもあり注意が必要な感染症です。
 
これまでRSウイルスの重症化を防ぐ方法としては、「ベイフォータス(ニルセビマブ)」や「シナジス」といったモノクローナル抗体製剤が使われてきました。
これらは“ワクチン”ではなく、あらかじめ作られた抗体を注射して防御力を一時的に高める方法で、早産児や心臓病などの基礎疾患をもつ赤ちゃんが対象でした。
 
一方、2024〜2025年シーズンから日本でも導入されたアブリスボ(Abrysvo)は、妊婦さん自身が接種するタイプのRSウイルスワクチンです。
妊娠後期(妊娠24〜36週)に接種することで、お母さんの体内でRSウイルスに対する抗体を作り、それが胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。この「移行免疫」により、赤ちゃんは生まれた直後からRSウイルスへの防御力を持つことができるようになります。
 
海外の研究では、生後6か月までのRSウイルスによる感染や重症化を有意に減らす効果が示されており、アブリスボはこの有効性をもとに承認されました。添付文書上の接種時期は妊娠24〜36週ですが、より効果を高めるためには28週以降の接種が有効と考えます。
※抗体が十分に作られるまでには約2週間かかるため、接種直後に早産となった場合には十分な効果が得られない可能性もあります。
 
主な副反応は注射部位の痛みや倦怠感、軽い発熱などで、多くは一時的なものです。
現在は自費(約2〜3万円)での接種が中心ですが、一部自治体では助成の動きもありますので、お住まいの自治体の情報をぜひチェックしてみてください。
 
<小児科医より>
従来は冬季に流行し、小児科の入院も多くRSウイルスの乳幼児が占めていましたが、近年は流行のパターンが予測できず、夏場にも流行したりと通年性の感染症になりつつあります。特に乳児のRSウイルス感染症での重症例は小児科医としてたくさん拝見しておりその怖さも十分に体感してきました。また感染後はしばらく喘息のような気管支炎の状態が続くことも感染を避けたい理由の一つです。
これまで「重症化しやすい赤ちゃんだけを守る」方法だったRSウイルス対策に、
「すべての赤ちゃんを生まれる前から守る」という新しい選択肢が加わりました。
小さなお子さんがいる方や、次のご妊娠を考えている方は、ぜひ医師と相談してみてください。

kazama (1).png

解説者:小児科専門医 みてねコールドクター小児医療アドバイザー 風間尚子先生

ーーー

子どもも、親も、救いたい。
家族のためのオンライン診療アプリ「みてねコールドクター」

みてねコールドクターでは、24時間365日、ビデオ通話で医師の診察を受けられます。
夜間・休日に診察を受けたい、病院での長い待ち時間は子どもがぐずってしまい大変、
お薬が欲しいけど病院に行く時間がないなど、家族の病気や通院のお悩みをサポートします。
お薬はお近くの薬局、または一部エリアではご自宅での受け取りが可能です。
どうぞご相談ください。

・みてねコールドクター【オンライン診療】のご紹介
https://calldoctor.jp/news/article/50/
 
・「オンライン診療、どうやって診てもらうの?」受診の際のポイントを医師が解説
https://calldoctor.jp/news/article/71/
 
・オンライン診療でのお薬の受け取り方
https://calldoctor.jp/news/article/177/
  
・子どもを守るインフルエンザ予防接種 ― 時期・種類・副反応まで解説
https://calldoctor.jp/news/article/2064/
 
・小児科医Q&A「子どものインフルエンザ、いつ受診する?いつ登園できる?よくある質問」
https://calldoctor.jp/news/article/2191/

img_mitene_calldoctor_family_OL_07d0edb1a0 (1).png

同じカテゴリーの記事