一年中気を付けたい RSウイルス/ヒトメタニューモウイルスについて

日本赤十字社医療センター 小児科専門医
みてねコールドクター小児医療アドバイザー 風間尚子先生が解説

RSウイルス感染症は、子どもが感染する病気として知られています。近年、似たような症状が出現するヒトメタニューモウイルス感染症の流行もみられるようになりました。ヒトメタニューモウイルスについては、聞き馴染みのない親御さんがいらっしゃるかもしれませんが、基本的な対処方法はRSウイルス感染症と同様です。今回は改めて、お子さんが感染したときの対応方法、登園の目安、親御さんからのよくある質問にお答えします。

どんな病気？

RSウイルス感染症とヒトメタニューモウイルス感染症は、どちらもウイルスが原因の呼吸器感染症です。2つは、初めて感染する年齢や流行する時期に違いがあります。それぞれの特徴を解説します。

RSウイルス感染症

RSウイルスが原因の感染症です。1歳までに半数以上が、2歳までにほぼすべての子どもが少なくとも1度は感染し、何度も繰り返すとされています。

症状は、発熱・鼻水など風邪のような症状から肺炎までさまざまです。生後6カ月以内に感染すると重症化する場合もあり、注意が必要です。年長の子どもや大人もRSウイルスに感染する可能性があり、介護施設での集団発生が問題となる場合もあります。

1年を通して確認され、以前は夏から秋がピークでした。2021年以降は、春から初夏に増加し、夏にピークがみられるようになっていましたが、2025年は年始から増加傾向になっています。

ヒトメタニューモウイルス感染症

ヒトメタニューモウイルスが原因の感染症で、RSウイルスと似たような症状がみられます。特徴は高熱が数日続くことです。

呼吸器の感染症のなかで、子どもは5〜10％、大人は2〜4％がヒトメタニューモウイルスによる感染と考えられています。初めて感染する時期は1〜10歳で、RSウイルスより遅めです。

1年中発症が確認されますが、流行はRSウイルスと似ています。

どんな症状が出るの？

RSウイルスやヒトメタニューモウイルスは、感染するとほぼ同じような症状がみられます。おもに以下の症状です。

・発熱
・鼻水
・咳
・くしゃみ
・喘鳴（ぜんめい：呼吸がゼイゼイしたり、ヒューヒューしたりする）

ウイルスに感染してから発症するまでは4〜6日程度で、発熱や鼻水がみられるようになります。症状は数日続き、多くの場合自然によくなりますが、重くなると咳がひどくなったり、喘鳴が出現したりします。細気管支炎（※）や肺炎を引き起こす可能性もあるため、注意しなければなりません。RSウイルスに初めて感染した赤ちゃんや、基礎疾患のある子ども（早産児や心臓や肺に基礎疾患がある子ども）はとくに重症化しやすいとされています。このような症状がある場合は、早めに受診するようにしましょう。また、細気管支炎にかかった子どもは、将来喘息を起こす可能性があります。

中耳炎も起こりやすいです。乳幼児は自分で痛みを訴えられないため、機嫌が悪くなる、耳に手をやるなどの様子に注意しましょう。

※細気管支炎とは：生後2歳未満の赤ちゃんにみられ、空気の通り道で一番細い「細気管支」と呼ばれる部分に炎症が起こる病気

検査はどうする？

検査は迅速検査キットを使用して行います。鼻の奥の粘液を綿棒で擦り、採取した液を検査キットに垂らしてウイルスの有無を検査します。結果が出るまでは10～15分程度です。

ただし、必ずしも受診したすべての子どもに行われるわけではありません。医師が必要と判断した場合に行われます。たとえば、基礎疾患があり重症化リスクが高い場合です。通常は、症状や流行状況から診断されます。

ヒトメタニューモウイルスも同様の対応です。

感染したらどうする（治療法は）？

地域や家族の感染状況をみて、感染が疑われるときはかかりつけ医を受診しましょう。基本は熱や咳などの症状を和らげる治療となります。RSウイルスやヒトメタニューモウイルスの特効薬はないためです。受診すると熱を下げる薬や、咳・鼻水を抑える薬など症状に合った薬が処方され、おおむね1〜2週間程度でよくなります。

ただし、症状によっては入院が必要な場合もあります。以下の場合や症状が急変した際は、すぐに受診するようにしてください。

・呼吸が苦しそう
・顔色が悪い
・食事や水分がとれない
・高熱が続いている
・ぐったりしている

風邪のときと同じように、お家で栄養や水分を適切に摂取しながら、安静に過ごすのが大切です。

ホームケアのポイント

発熱時は、寒気を伴う場合があります。寒がっているときは衣類や掛け物を調整し、暖かくしてあげましょう。熱が上がりきり寒気が落ち着いたら、首やわきの下、脚の付け根を冷やしてあげるとよいでしょう。高熱のときは、医師に処方してもらった解熱剤を使用し、熱を下げるようにします。お薬は必ず指示通り使うようにしてください。高熱が続いているときは、入浴を控え体を拭いて清潔を保つようにしましょう。

体がつらいと食欲は低下し、食事や水分を十分にとれなくなります。食欲が低下しているときはお子さんが好きなもの、のど越しのよいものを中心に食べさせてあげましょう。こまめな水分補給は、脱水症を予防するために大切です。

食欲が低下しているときは、以下の食べ物や飲み物がおすすめです。

・子ども用のイオン飲料
・野菜スープ
・ぞうすい
・ヨーグルト
・りんご果汁
・煮込みうどん

食事や水分の摂取量とあわせて、尿の回数や量も確認しましょう。食事や水分がとれない状況が続き、尿の量が少ないときは脱水症の可能性があります。活気がなく、機嫌も悪いようであれば、再度受診するようにしてください。
　　　　　
家庭内感染を防ぐには？

RSウイルスもヒトメタニューモウイルスも、感染経路は飛沫感染と接触感染です。家庭内で感染する場合も多いため、予防対策が大切です。日頃から習慣づけるとよいでしょう。

飛沫感染の予防には、咳やくしゃみの飛沫を浴びないことが大切です。ポイントは以下の通りです。
・マスクを着用できる年齢のお子さんにはマスクをしてもらう
・小さなお子さんの場合は、大人がマスクを着用する
・タオルや食器の共用を避ける
・お子さんの世話をしたあとや外出から帰ったあとは、うがいをする

接触感染の予防には、手洗いと消毒が効果的です。ポイントは以下の通りです。
・こまめに石けんを使用し手洗いをする。指の間や指の付け根、手首は洗い残ししやすい場所であるため、念入りに
・お子さんが日常的に触れるおもちゃや手すりを消毒する
・消毒は、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムを使用する
（消毒により金属製品や木工製品に影響を及ぼす場合もあるため、消毒液の注意事項をよく読んで使用する）

※参照：国民の皆さまへ（新型コロナウイルス感染症）手洗いについて/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593494.pdf

登園・登校はいつから大丈夫？

RSウイルス感染症もヒトメタニューモウイルス感染症も、インフルエンザのような定めはありません。症状が落ち着き、活気も戻った頃が目安になります。かかりつけ医や園、学校と相談して決めるとよいでしょう。

※参考：RSウイルス感染症Q＆A（令和6年1月15日改訂）/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html
※参考：RSウイルス感染症とは/NIID国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/rs-virus.html

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