
「子どもが全然ご飯を食べてくれない…」「動画ばかり見せてるけどいいのかな…」「他の子よりも少し言葉が遅れてるかも…」など、子育てに悩みはつきないですよね。
みてねコールドクターでは今後、そのような育児のお悩みを医師が解説していきます。
回答するのは皆さんと同じ立場であるママやパパであり、同じ悩みを持つ小児科医や専門医の方々です。
子育て中の皆さんの身近な相談相手として、応援団として、先生方とタッグを組んで記事を配信していきますので、ぜひお読みください。今後、皆さんからのお悩みも募集予定です。
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初回のテーマは「子どもの睡眠時間」です。「早く寝かせたいのに寝てくれない…」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。医療漫画「コウノドリ」のモデルとなった新生児科医・小児科医の”ふらいと先生”こと、今西洋介先生に子どもの睡眠時間についてお話を伺いました。
子どもの睡眠に関する保護者の悩みは永遠のテーマですよね。これは、実際の診療でも遭遇するお悩みの一つです。そもそも、子どもの睡眠は今なぜ話題に上がるのでしょうか。そして科学的な根拠として何がわかっているのでしょうか。これらを知っておくだけでも、関連する心配事が少なくなるものです。
子どもの睡眠について、様々なエビデンスと共に3回にわたって解説していきたいと思います。
子どもの睡眠の理想時間は4-11ヶ月児は12-15時間、1-2歳は11-14時間、3-5歳は10-13時間とされています(#1)。
しかし、米国のデータでは幼児期や学齢期の子どもの20-40%が夜中に目が覚める、入眠困難、1人で眠れないなど睡眠に何らかのトラブルを抱えているというものもあります(#2,3)。
子どもの睡眠時間の国際比較(#4)を見てみると、世界各国に比べて日本の睡眠時間は最も短い事がわかります。それだけでなく、日本の子ども達は起床時刻も寝具に入る時刻のどちらも、世界で最も遅い事がわかっています。
合計睡眠時間の国際比較
大阪大学による国内調査では、3歳児の4割以上が22時以降に寝ており、半数以上が週末のみ遅寝遅起きを経験する毎日を送っています(#5,6)。
このように、日本の子ども達が抱える睡眠の問題は非常に深刻です。
では、睡眠障害は子ども達の健康にどんな影響を与えるのでしょうか?
これは大人と同じで、睡眠不足は下記のような症状を認めます。
・集中力の低下
・落ち着きのなさ
・感情コントロールの困難さ
・学業成績の低下
最近、自分の子どもが成績が振るわない、イライラしていると感じたら、睡眠障害がないかどうか考えてみるべきだと思われます。
特に、不登校の状態になっている子どもは注意が必要です。不登校が原因で睡眠障害を引き起こしているのか、それとも睡眠障害が不登校を引き起こしているのかを見極める必要があります。
不登校の状態であると、当然朝起きることが困難になります。親はどうしても朝起きられれば学校に行ける!と安直に考えがちですが、原因が別にあって不登校となっている場合には、「朝起きれたら学校いけるじゃん!」と言われることを恐れて、睡眠障害に陥ってるケースもあるので、不登校は注意が必要でしょう。
また、精神的な問題だけではありません。
不十分な睡眠時間や睡眠の質の悪さは、小児の肥満に直結することが広く知られています(#7)。もちろんこれらの肥満につながるような睡眠障害は将来的に心筋梗塞や狭心症などの心臓血管系の病気を発症しやすくなり、死亡率を有意に上げる事が言われています(#8)。
睡眠不足は子どもの発達にも影響を及ぼします。
聞いたことがあるかもしれませんが、睡眠は記憶を保持する作用があります。小学生を対象とした研究で、頻繁に昼寝をする人はそうでない人よりも記憶タスクへの反応時間が速いと言うデータがあります(#10)。更に十分な質の高い睡眠を経験している人は、自分の記憶をまとめたり、記憶の中から単語を思い出す事が優れていると言うものもあります(#11)。
また睡眠時間が短いと、外在化行動といって家の外に出ると高いレベルの攻撃的な態度を持つようになります。アフリカ系アメリカ人の若者を対象とした研究では、睡眠障害が子どものナイフや銃の所持率を上げたという事実もあります。
今回は「子どもの睡眠障害が健康に与える影響」について解説しました。
これだけエビデンスを並べましたが、当然当てはまる所と当てはまらない所があります。うちの三姉妹も規定時間通りに寝る長女は性格も落ち着いていますが、学業は普通です。しかし、睡眠時間が乱れている次女は学業成績は良い方ですが、気性は荒いです。我々夫婦は色々工夫を凝らしましたが、結局は性格によるところも大きいのではと感じてしまいます。
小児科外来でも睡眠に関する問い合わせは非常に多いですが、子どもの睡眠障害は親の自分が悪いのだと、自分を責めないようにしてください。
次回は、子どもの睡眠障害に対する徹底対策編を解説していきます。
回答者:今西洋介先生(ふらいと先生)
新生児科医・小児科医、医学博士(公衆衛生学)。小児科学会専門医。周産期新生児学会専門医。医療漫画『コウノドリ』取材協力。富山大学医学部卒業後、都市部と地方の両方のNICU(新生児集中治療室)で新生児医療に従事。
ふらいと先生のニュースレター https://flight.theletter.jp/ では、未成年のお子さんがいらっしゃる親御さんが知っておくべき「エビデンスに基づく子どもを守るための知識」を発信中。
参考文献
#1. Hirshkowitz M, et al. Sleep Health 2015;1(4):233-243
#2. Williamson AA, et al. Sleep Med. 2019;63:5–8.
#3. Honaker SM, Meltzer LJ. Sleep Med Rev. 2016;25:31–39.
#4. Mindell JA, et al. Sleep Med 2010;11(3): 274-80
#5. Doi Y, et al. Chronobiol Int 2015;32:1101-1108
#6.Fukuda K, et al. Sleep Med 2019:61:73-81
#7. Matthews KA. Sleep Med. 2016;18:36–49.
#8. DeBoer MD. J Am Coll Cardiol. 2015;66:755–757.
#9. Liang Y, et al. Endocrine. 2015;50:87–92.
#10. Ji X, et al. Behav Sleep Med. 2019;17:537–551.
#11. Henderson LM, et al. Dev Sci. 2012;15:674–687.
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