育児のお悩みを小児科医をはじめとしたパパママ医師が解説する育児相談コラム。第2弾は「子どもの睡眠対策編」です。
解説してくれるのは第1弾に続き、新生児科医・小児科医の”ふらいと先生”こと、今西洋介先生です。
子どもの健康や発育に関して様々な情報が溢れている今、ふらいと先生の解説は、医学的な研究結果や医療の視点からアドバイスをしてくれるので、正しい判断がしやすくなります。
育児における「なんとなくこれをしたほうが良さそう、これは悪そう」といったことの裏付けを知ることで、安心感や自信を持って子育てができます。ぜひご覧ください。
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新生児科医・小児科医ふらいと先生が解説
子どもにとって睡眠は大切であり、世界の中でも日本の子ども達は睡眠不足に晒されている事、不登校の子どもの中に睡眠不足が隠れている事などを第1弾の記事で解説しました。
ではこう言った事がわかって、肝心な対応策として、エビデンスがあるのはどういったものでしょうか?今回は子どもの睡眠不足の対応編を解説していきます。
昼寝の影響
生後しばらくは昼夜の区別なく寝たり起きたりを繰り返してしまい、大変個人差がありますが生後3ヶ月頃より夜に寝る時間のほうが長くなります。そして段々とまとまって睡眠をとるようになり、1歳を過ぎるころには1日1回昼寝をするようになります。
米国の調査では3歳では40%が昼寝をしなくなり、6歳ではほとんどの子供が昼寝をしなくなるという結果が出ています(#1)。これは大脳も休んでいるノンレム睡眠と、大脳が活発に動いているレム睡眠との比率が成長するにつれて変化していくためです。つまり、生まれた直後はまだ活動性が低いですが、生後1ヶ月になるとレム睡眠の割合が比較的高くなります。それ以降成長するに従って、ノンレム睡眠の割合が高くなっていくのです。
ここで大切なのは、これらの年齢の数字は一概に区切れないという事です。体の成長や発達と同じように睡眠も個人差が非常に大きいのです。隣の子どもは夜泣きしないと聞いたのに、なんでうちの子はこんなに夜泣きするのだろうと不思議に思われることもありますが、それはこの為です。
しかし、どの子にも共通として言えるエビデンスとしては、「昼寝の取り方によっては睡眠不足になってしまう」ということです。昼寝を終わらせる時間が遅いこと、昼寝の時間が長いこと場合などでは就寝時間が遅い事がわかっています(#1)。
昼寝の取り方には十分注意したいですね。
寝室環境と睡眠ルーティン
同じ大人でも蔑ろにすることもありますが、寝室環境は結構大切です。寝る前に遊ぶものを片付けて部屋を暗くするのは、理想の寝室環境づくりと言えます。就寝する際に部屋の電気がついているとそれだけで睡眠時間が短くなる事がわかっています(#2)。
もし暗闇を怖がるのであれば、うっすら照明をつけるような間接照明をつけるのが良いと思います。
環境づくりは何も「明るさ」だけではありません。エアコンを使用して心地よい温度を保ち、周りの音にも気を使います。家の周りが騒がしければ窓を閉めることも大切でしょう。
また、寝る前のルーティンも子どもたちにとって大切な事です。つまり「毎日寝る前に同じことをする」というものです。絵本を読むのも良いですし、好きな音楽を一緒に聴くのもいいですね。また、体をトントンしながら寝かしつけというのもいいかもしれません。ちなみに我が家の場合は絵本の読み聞かせでした。こういったベッドタイムでのルーティンをする日が多いほど就寝時間が早く、睡眠時間が長い事が研究でわかっています(#3)。
ただし、ルーティンと言っても何でも良いわけではありません。よく父親に多い勘違いとして寝る前のルーテインとして激しい運動をする家庭があります(相撲など)。これは体や心を興奮させてしまうので、かえって逆効果です。できれば避けたほうが良いでしょう。
また、夕食や入浴も注意が必要です。就寝前の夕食は肥満にもなりかねませんし、安眠を妨げてしまいます。できれば2時間は避けたほうが良いでしょう。早起き早寝の家庭には夕食を摂る時間が不規則な家庭は少なかったというデータ(#4)は大変興味深いものです。
これらは全て、親が我が子のより良い睡眠を確保するために出来る事です。ルーティンは家庭毎に異なりますので、それぞれのご家庭で決めてもらえたら嬉しいです。
メディアの影響
スマホ、テレビなどメディア使用時間が増加すると就寝時間が遅くなり、睡眠時間が短くなるのはすでに明らかでしょう(#5)。しかし一概にメディアの使用はそれだけといえず、近年の「GIGAスクール構想」によりタブレットを用いて学習する機会が大変多くなりました。タブレットを使用した勉強で、いつの間にかスクリーンタイムが伸びてしまい睡眠不足になっているというパターンもあります。
日本の小学生を対象とした研究(#6)では、子どものメディアの長期使用の原因として以下の要素が挙げられました。
・親の不健康な生活スタイル
・メディア使用時のルールがないこと
・両親がメディアのヘビーユーザーであること
小学生はまだ自分でスケジュールを立てる事が苦手で未熟ですから、親のメディアへのリテラシーがそのまま子どもに影響を与えると言っても過言ではないでしょう。
マイオピニオン
自分も40歳を過ぎて睡眠中に突然夜中起きたり、寝られなくなったりと睡眠でのトラブルがとても大きくなりました。これは完全に加齢によるものと、スマホによるものがあります。中途覚醒してスマホを見出すと全く眠れなくなってしまいます。とても悲しい事ですが、エビデンスを体感しています。我が家の子どもも睡眠時間の確保には大変悪戦苦闘しています。眠るためには絵本を毎日読んでいるのですが、絵本が大好きなあまり絵本を読むと興味津々となりアドレナリンが出て眠れなくなる時もあります。これはエビデンスに反しています。。このように子どもの睡眠は子どもそれぞれの特性があり、その幅も広いため非常に難しい問題があります。それぞれの家庭で合う形の睡眠対策を取られるのが良いでしょう。
回答者:今西洋介先生(ふらいと先生)
新生児科医・小児科医、医学博士(公衆衛生学)。小児科学会専門医。周産期新生児学会専門医。医療漫画『コウノドリ』取材協力。富山大学医学部卒業後、都市部と地方の両方のNICU(新生児集中治療室)で新生児医療に従事。
ふらいと先生のニュースレター https://flight.theletter.jp/ では、未成年のお子さんがいらっしゃる親御さんが知っておくべき「エビデンスに基づく子どもを守るための知識」を発信中。
参考文献
#1. Nagasawa M, et al. Sci Rep 2016;6:27246
#2. Carter B, et al. JAMA Pediatr 2016;170:1202-1208
#3. Mindell JA, et al. Sleep 2015;38:712-722
#4. Fukuda K, et al. Sleep Med 2019;61:73-81
#5. Hale L , et al. Sleep Med Rev 2015; 21:50-58
#6. Yamada M, et al. J Epidemiol 2018;5(28):407-413
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