2023.12.14
病気知識

インフルエンザについて

日本赤十字社医療センター小児科専門医 風間先生がよくある質問にお答えします

拡大中のインフルエンザ。例年は気温や湿度が低下する12~4月頃に流行し、1月末~3月上旬にピークを迎えることが多いですが、2023年はすでに夏ごろから患者数が増え始めました。今回は改めて、お子さまが感染したときの対応方法や注意したいこと、親御さまからのよくある質問にお答えします。

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インフルエンザとは?

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが鼻や喉(上気道など)の粘膜に感染することで発症する病気です。気道感染症ですが、いわゆる一般の「かぜ症候群」よりも症状が重くなりやすい疾患で分けて考えるべき感染症です。

インフルエンザウイルスは抗体が短期間で消失してしまい、流行株も多いため何度も感染しうるウイルスです。
冬に流行する「季節性インフルエンザ」は、A型とB型によるものです。

インフルエンザウイルスは、感染源となる患者や感染者がくしゃみや咳をする際にウイルスが空中に拡散し、これを吸い込むことで感染が広がります。感染力は非常に高いですが、ウイルスが単に手に触れただけでは感染しません。感染するのは、ウイルスが手に付いた後、口や鼻、または目などの粘膜に触れる場合です。特に子どもは手が口や鼻に行きやすく、体内にウイルスが入り込むリスクが高いと言えます。

どんな症状が出るの?

インフルエンザの特徴は症状が比較的急速に現れる事です。主な症状には下記のようなものがあります。

・38℃以上の発熱
・頭痛
・関節痛
・筋肉痛
・全身の倦怠感
・鼻汁
・咳

発熱は3~4日間続き、症状が回復するまで1週間程度かかることもあります。気管支炎、肺炎、子どもでは、まれに急性脳症を併発し重症化することもあります。

感染したらどうする?

インフルエンザは基本的には自然に回復する病気ですが、急激に体調が変化したり重症化する場合もあります。

症状や持病によって薬の使用が検討され、治療薬としてタミフル・リレンザ・イナビル等の「抗ウイルス薬」があります。これらの抗ウイルス薬は気道の粘膜の細胞内でのウイルスの増殖を抑制します。
症状が出てから48時間以内に服用することで、発熱期間が短くなり、感染力を下げる効果が期待できます。
発熱、咳、痰等の症状が強い場合には、症状を抑える薬を使用して経過をみます。(対症療法)

病院受診のタイミングはいつ?

高熱が出たり、疑わしい症状がある時には医療機関を受診しましょう。感染力が強いので、感染に気づかずに学校や会社に行くと感染を広げることになります。

発症後48時間以内であれば抗ウイルス薬の効果も期待できます。
ただし、発症後すぐ検査を受けても陽性に出ない場合がありますので、症状が出てから少なくとも8時間~12時間以上経過してから受診されることをおすすめします。

乳幼児や高齢者は脱水を起こしやすいため、半日以上何も口にできなかったり、口にしても吐いたり下痢をしている場合は病院を受診しましょう。

ホームケアのポイント

高熱(38.5℃以上が目安)でない場合、また下痢等の症状がなく水分が問題なく摂れる場合は一般的な風邪を引いた時と同じ対応でよいでしょう。
水分や消化の良い食べ物をとり、自宅で安静に過ごしましょう。

熱が高い場合、平熱の時より多くの水分が体から失われてしまうため、こまめな水分補給が必要です。お茶や水だけでは体に必要なミネラル分が摂れないので、イオン飲料や経口補水液等がおすすめです。
特に2歳未満の乳幼児は水分摂取が必要なため、注意して水分を与えることが重要です。
そして、体力を落とさないよう食べられるときに食べられるものを摂るようにしましょう。

〈おすすめの食事〉
・口あたりの良いゼリー
・アイスクリーム
・うどん
・お粥

インフルエンザでの異常行動について

インフルエンザにかかった際、抗インフルエンザウイルス薬服用の有無や種類にかかわらず、異常行動が報告されているため、自宅で療養する場合は、少なくとも発熱から2日間は、保護者や同居の家族の方はお子さまから目を離さず、転落等の事故の予防をしましょう。

転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動は、小学生以上の小児・未成年者の男性で、発熱から2日間以内の発現の報告が多いことが知られています。

<事故防止のためにできること>
・玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う
・ベランダに面していない部屋で寝かせる
・2階建ての家屋の場合は1階の部屋で寝かせる

登園・投稿はいつから大丈夫?

インフルエンザは学校保健安全法により第2種学校感染症に定められており、「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児の場合は3日)が経過するまで」が出席停止期間となります。
(ただし、病状により学校医や他の医師が感染のおそれがないと認めたときはその限りではありません。)

一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。
解熱とともに排出されるウイルス量は減少しますが、解熱していても咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクを着用する等、周りの人へうつさないよう配慮しましょう。予防接種を受けるときは、治癒後1~2週間開けるようにしてください。                                   
     
どうやってインフルエンザ対策する?

季節性インフルエンザの場合、流行前にワクチンを接種することで発症を抑えたり、発症した場合の重症化を防ぐことができます。65歳以上の高齢者施設に入所している高齢者では、ワクチンを接種することでインフルエンザ発症が34~55%予防され、死亡を82%阻止したとされる国内研究結果があります。

日本ではA型とB型が流行することが多く、毎年流行が予想される型のワクチンが作られ、接種されます。ワクチン接種(13歳未満は2回接種)の2週間後から約5ヶ月間は一定の効果が持続しますが、接種1ヶ月後をピークに免疫効果は徐々に低下します。

ワクチンは生後6ヶ月から打つことができます。12歳(満13歳)までの子どもは免疫機能が未熟なため、1回の予防接種では抗体ができにくいといわれており、予防接種を2回受けることになっています。13歳以上であっても医師から必要と判断された場合には2回接種することもできます。

教えて!風間先生~インフルエンザについて、親御さんからよくある質問に小児科医が回答~

日本赤十字社医療センター 小児科専門医 風間 尚子先生がよくある質問にお答えします。

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Q:タミフルは何歳から使用できますか?
A:生後2週間から使用できます。(※早産児は修正月齢で考える)
0~2歳未満の小児は重症化しやすいため、アメリカのCDCや日本小児感染症学会でもタミフルの投与が推奨されています。

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Q:予防接種はしたほうがいいでしょうか?
A:インフルエンザワクチンの効果は、主に合併症や重症化を抑えることにあります。ワクチン接種してもインフルエンザにかかってしまうこともありますが、症状の軽症化や重症化の抑制効果が期待できます。そのためワクチン接種を推奨しますし、受験など外せない行事がある方や、基礎疾患をお持ちの方は積極的に受けるといいでしょう。
現在主流のインフルエンザワクチンは不活化ワクチンで、抗体の持続期間が4~5ヶ月程度です。本年度より経鼻投与できる生ワクチンはより長期に効果があり今後期待されています。

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Q:家族内感染を防ぐ方法は?
A:新型コロナウイルスと同じように、飛沫感染するウイルスです。マスクや手洗いといった感染対策が主になります。(家庭内で隔離ができればなお良いですが、小さなお子様では難しいですよね。看病する親御さんが感染しないように対策をしましょう!)

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Q:同じシーズンに2回インフルエンザに罹ることもありますか?
A:頻度は少ないですが、流行株が異なっている場合には2回感染することもあり得ます。

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外来診療をしていると、現在さまざまな感染症が同時に流行していると感じます。特にインフルエンザは集団生活をしている小児の間ではあっという間に広がります。園や学校の感染状況も気にして、お子さんの体調をみてあげてください。発熱がある場合には適切な治療を受けることはもちろん、感染を広げないために診断を受けることも大切です。

監修医師のご紹介
日本赤十字社医療センター 小児科専門医/株式会社コールドクター 往診医 兼 小児医療アドバイザー
風間尚子先生

東邦大学医学部卒業。 
神奈川県立こども医療センターを経て、日本赤十字社医療センター小児科勤務。
AHA PALS(小児二次救命処置)インストラクター資格保持。


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・どう使う?ママパパ体験談①「子どもの咳と鼻水が酷く、オンラインで診てもらいました」
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