感染症

新生児・赤ちゃんのRSウイルス感染症|症状・重症化サイン・予防と受診目安を小児科医が解説

新生児・赤ちゃんのRSウイルス感染症|症状・重症化サイン・予防と受診目安を小児科医が解説
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赤ちゃんが咳や鼻水を出し始めると、「もしかしてRSウイルス?」と心配になる保護者の方は多いと思います。RSウイルス感染症は月齢が低いほど症状が重くなりやすく、特に新生児では無呼吸発作を起こすこともあります。この記事では、月齢別の症状の特徴・夜間の緊急サイン・家庭内での感染予防・予防薬の考え方を順を追って解説します。

新生児・乳児の月齢別にみるRSウイルス感染症の症状

RSウイルス感染症は「風邪の一種」と言われますが、月齢によって症状の出方や重さが大きく異なります。3歳の子どもと生後1か月の赤ちゃんとでは、同じウイルスへの感染でも体への影響がまったく違います。新生児や月齢の低い乳児では、高熱がなくても哺乳量の低下や呼吸パターンの変化だけで注意が必要な状態になることがあります。月齢ごとの症状の特徴を知っておくと、日々の観察ポイントが明確になり、受診のタイミングを判断しやすくなります。

新生児(生後28日以内)に特有の症状と無呼吸発作のリスク

新生児期のRSウイルス感染症で最も注意すべきは、「無呼吸発作(むこきゅうほっさ)」です。これは呼吸が一時的に止まる状態で、新生児では発熱や咳が目立つ前に、突然の無呼吸が初期症状として現れることがあります。

見た目は眠っているように見えても胸の動きが止まっている場合がありますので、就寝中の呼吸の観察が特に重要です。また、哺乳量の低下・機嫌の変化・顔色の悪化といったわかりにくいサインにも早めに気づく必要があります。生後28日未満で37.5℃以上の発熱がある場合は、他の症状がなくても速やかに小児科を受診してください。

生後1〜6ヶ月の乳児でみられる哺乳困難と呼吸症状の変化

生後1〜6か月の乳児では、透明な鼻水と軽い咳から始まることが多いです。この時期の赤ちゃんは鼻だけで呼吸しているため、鼻づまりがあるだけで哺乳が著しく困難になります。「いつもより授乳時間が長い」「飲んでいる途中で苦しそうに離す」「体重が増えていない」という変化は、鼻づまりによる哺乳困難の典型的なサインです。

発症から3〜5日目ごろに咳が強くなり、息を吸うたびに「ゼーゼー・ヒューヒュー」という喘鳴が聞こえる場合は、下気道への炎症が広がっているサインです。この段階では自宅での様子見ではなく、小児科受診を検討してください。

細気管支炎・肺炎へ進行するときのサイン

RSウイルスが下気道に到達すると、細気管支炎や肺炎へ進行することがあります。乳幼児における肺炎の約半数、細気管支炎の50〜90%がRSウイルスによるものと報告されており、決してまれな合併症ではありません。

サイン 具体的な様子 対応
陥没呼吸 息を吸うたびに鎖骨下・肋骨の間がペコペコとへこむ 夜間でも受診を検討
鼻翼呼吸 小鼻がピクピクと膨らんで一生懸命息をしている 夜間でも受診を検討
喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー) 息を吐くときに音がする・横になれないほどひどい 早急に受診
哺乳量の急激な低下 普段の半量以下・飲もうとしない 翌日早めに受診
顔色・唇の異常 青白い・紫色を帯びている 救急受診

「昨日より明らかに呼吸が苦しそう」「飲めなくなった」という変化があれば、時間帯を問わず医療機関へ連絡することをためらわないでください。

すぐに受診・救急を判断する緊急サインと入院の目安

RSウイルス感染症は多くの赤ちゃんが自宅で回復できますが、月齢が低いほど急に悪化するリスクがあります。受診のタイミングを見誤らないために、「呼吸の様子がいつもと違う」「飲めなくなってきた」という変化をとらえることが重要です。特に深夜に状態が急変することがあるため、救急受診の目安と入院が必要になるケースを事前に知っておくと、夜間に慌てずに対応しやすくなります。

夜間でも受診を急ぐべき症状チェック

夜間であっても、次の症状が見られた場合は救急外来または救急車の利用を検討してください。「呼吸の様子」が最も重要な確認ポイントです。

夜間受診を急ぐべき症状:

  • 呼吸のたびに肋骨の間や首元が内側にくぼむ動きが見られる(陥没呼吸)
  • 小鼻がピクピクと膨らみ、苦しそうに息をしている(鼻翼呼吸)
  • 唇や顔の色が青白い・紫色を帯びている(チアノーゼ)
  • 呼吸が急に止まったように見える・ぐったりしている(無呼吸発作の疑い)
  • 水分がまったく取れず、6時間以上おしっこが出ていない
  • 生後3か月未満で38℃以上の発熱がある

「呼吸は落ち着いているが心配な症状がある」という場合は、夜間の小児救急電話相談(#8000)に相談することも一つの方法です。判断に迷ったときはためらわず連絡してください。

入院が必要になるケース――酸素・点滴・無呼吸発作への対応

RSウイルス感染症で入院が必要になるのは、主に「呼吸管理」「水分補給」「無呼吸の監視」が自宅では対応できない状態になったときです。1歳未満の乳児、特に生後6か月未満や早産児・基礎疾患のある赤ちゃんは入院に至るリスクが高い傾向があります。

入院が必要な主な理由 具体的な状態 院内での対応
呼吸管理 酸素飽和度(SpO₂)の低下・呼吸困難 酸素投与・必要に応じ呼吸補助
脱水・哺乳不能 水分が取れず体重減少・尿量低下 点滴による水分・電解質補充
無呼吸発作 呼吸が繰り返し止まる モニター管理・刺激による覚醒
全身状態の悪化 ぐったり・反応が鈍い・顔色不良 全身管理・原因精査

入院の判断は医師が行いますが、「様子を見ている間に悪化する」ケースもあります。赤ちゃんの呼吸や反応が「いつもと違う」と感じた瞬間に、早めに医療機関へ連絡することが安全です。

赤ちゃんへのRS感染を防ぐ家庭内対策

RSウイルス感染症の最大の感染源は、多くの場合、家庭内のきょうだいや大人です。大人や年上の子どもにとって「ただの鼻風邪」が、新生児・乳児にとっては重症化の引き金になることがあります。

完全に感染を防ぐことは難しくても、家庭内での感染経路を意識した対策によって、赤ちゃんへのウイルス到達を大幅に遅らせたり量を減らしたりすることが可能です。特に流行シーズン(近年は春〜夏を中心とした時期)は、普段の生活習慣を少し見直すだけで予防効果が高まります。

きょうだい・大人が感染源になりやすい理由と接触感染対策

RSウイルスは感染した人の鼻水・咳・くしゃみに含まれており、手を介した接触感染が主な経路です。大人や年長の子どもはある程度の免疫があるため、「少し鼻水が出る程度」の軽症で済むことが多いです。しかしその間も鼻水や手にウイルスが付着しており、赤ちゃんへ接触するたびに感染させてしまう可能性があります。

特に保育園や幼稚園に通うきょうだいは、流行時期に軽症または無症状のまま家庭内へウイルスを持ち込みやすいことを念頭に置きましょう。授乳・抱っこ・顔へのキスなどの密接な場面では、大人・きょうだいを問わず手洗いを徹底することが、最も効果的な感染遮断策になります。

手洗い・授乳前の消毒・マスクの優先順位

感染対策は「全部やる」よりも「優先度の高いものを確実に続ける」ことのほうが現実的です。赤ちゃんと接する場面ごとに、次の順で対策を実施してください。

感染対策の優先順位:

  • 【最優先】授乳・抱っこ・おむつ交換の前に必ず手洗い(石けんで20秒以上)
  • 【次に優先】帰宅後・鼻をかんだ後・外出先から戻ったきょうだいが赤ちゃんに触れる前に手洗い
  • アルコール消毒は手洗いの代替として使用可(RSウイルスにはアルコールが有効)
  • きょうだいや大人に咳・鼻水症状があるときは、赤ちゃんの前でのマスク着用を検討する

赤ちゃんに最も接触する人(主たる養育者)が徹底するだけで感染リスクを大きく下げることができます。全員が完璧にできなくても、一番近くにいる大人の対策を優先してください。

予防薬(ニルセビマブ・パリビズマブ)の対象と考え方

RSウイルスに対する有効なワクチンは現在ありませんが、重症化を防ぐためのモノクローナル抗体製剤(予防薬)が存在します。2024年に日本で承認されたニルセビマブは、従来のパリビズマブとは異なり、ハイリスク児だけでなく初めてのRSウイルス流行シーズンを迎えるすべての乳児が対象となりうる新しい選択肢です。ただし、ハイリスク対象者でない場合は保険・公費助成の対象外となり全額自費での負担となります

薬剤名 主な対象 投与方法
パリビズマブ 早産児・先天性心疾患・慢性肺疾患などハイリスク児 流行期間中、毎月1回の筋肉注射
ニルセビマブ 流行シーズン前の全乳児(ハイリスク児含む) 1回の筋肉注射で1シーズン対応

投与の判断や適応は医師が行いますが、特に早産・基礎疾患のある赤ちゃんについては、出生後早めにかかりつけ医へ相談することをおすすめします。費用や保険適用の詳細は受診時に確認してください。

新しい選択肢:母子免疫型ワクチン

近年では、RSウイルスの予防として 母子免疫型ワクチン(アブリスボ) という新しい選択肢も登場しています。

このワクチンは、妊娠中の母親に接種することで、母体で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生後まもない時期、特に生後6か月頃までの重症化を予防する効果が期待されています。
接種は、妊娠24〜36週の間に1回行うとされています。

RSウイルスは乳児期に重症化することもあるため、こうした予防法について、気になる方は主治医と相談してみるのも一つの選択肢です。
今年度から多くの自治体で助成が開始されています。検討される場合は、お住まいの自治体の情報をご確認ください。


哺乳困難・鼻づまりへの家庭ケア

特効薬のないRSウイルス感染症において、家庭でのケアは回復を支える重要な柱です。特に乳幼児では、鼻づまりによる哺乳困難が水分・栄養不足につながりやすく、放置すると脱水や体力低下を招くことがあります。「少し飲めなくなった」「機嫌が悪い」という段階から早めにケアを始めることで、悪化を防ぎやすくなります。まずは鼻の通りを確保してから授乳する流れを習慣にするだけで、赤ちゃんの哺乳が格段に楽になります。

鼻吸い・少量頻回授乳と水分補給の工夫

乳幼児は口呼吸が未発達なため、鼻が詰まっていると乳首をうまく吸えません。授乳前に鼻の通りを確保することが、哺乳量を維持する最大のポイントです。

鼻吸い・授乳の手順:

  • 授乳の5〜10分前に電動または手動の鼻吸い器で鼻水を吸引する
  • 鼻づまりがひどい場合は生理食塩水スプレーを鼻腔に噴霧してから吸引すると取れやすい
  • 1回の授乳量が減っても回数を増やし(2〜3時間おきから1〜1.5時間おきに)合計量を確保する
  • 飲めているかどうかはおしっこの回数で確認する(1日6〜8回以上が目安)

哺乳量が普段の半分以下になったり、おしっこの回数が著しく減ったりしている場合は水分補給が不十分なサインです。焦らず少量ずつ与えながら、翌日の小児科受診を検討してください。

加湿と寝かせ方で呼吸を楽にする

乾燥した空気は気道の粘膜を刺激し、鼻づまりや咳を悪化させます。室内の湿度を50〜60%に保つことで粘膜の乾燥を防ぎ、鼻水の粘性を下げて排出しやすくなります。加湿器がない場合は、洗濯物を部屋に干すだけでも一定の効果が期待できます。室温は冬期20〜22℃、夏期26〜28℃を目安に、エアコンの風が直接赤ちゃんに当たらないよう調整してください。

また、背中の下にバスタオルを2〜3枚重ねてゆるやかな傾斜(15〜30度)をつけて寝かせると、鼻水が喉へ落ちにくくなり夜間の咳が軽減しやすくなります。乳幼児は自分で姿勢を変えられないため、傾斜をつける際は背中全体を支える形にし、頭だけが高くなる枕の使いすぎには注意してください。

よくある質問

  • QRSウイルスかどうか、検査で確認できますか?

    ARSウイルスの検査が保険適用となるのは、原則として1歳未満の乳児・入院中・重症化リスクの高い乳幼児に限られます。1歳以上では症状から診断し、検査なしで対症療法を行うことが多いです。

  • QRSウイルスに特効薬はありますか?

    A特効薬はなく、症状をやわらげる対症療法が治療の中心です。咳・鼻水・発熱への薬で自然回復を助けます。細菌感染ではないため抗菌薬(抗生物質)は効きません。回復には通常1〜2週間かかります。

  • QRSウイルス感染後、保育園・幼稚園にはいつから登園できますか?

    A法律上の出席停止規定はありませんが、「呼吸器症状が消失し全身状態が良いこと」が登園の目安です。通っている園のルールによっては医師の診断書が必要なことがあるため、事前に確認してください。

  • Q一度かかったら免疫はつきますか?また感染しますか?

    A免疫が長く続かない感染症のため、生涯にわたって繰り返し感染する可能性があります。初感染後はある程度の抗体が残るため、2回目以降は症状が軽めになる傾向があり、大人や年長の子どもが軽症で済みやすいのはこのためです。

  • Qゼーゼーが続いています。喘息になってしまいますか?

    ARSウイルス感染後にゼーゼーが繰り返す場合、気管支喘息へ移行するリスクが指摘されていますが、全員がなるわけではありません。気になる場合は小児科でアレルギー検査や経過観察について相談してください。

  • Q流行の時期はいつですか?年中注意が必要ですか?

    A近年は春から増加し夏にピークがみられる傾向ですが、年々変化しており季節外れの感染もあります。特に生後6か月未満の赤ちゃんがいる家庭では、年間を通じた基本的な感染対策の継続が重要です。

  • Q大人が風邪をひいたとき、赤ちゃんへの感染を完全に防げますか?

    A完全な予防は難しいですが、手洗いの徹底・授乳前の消毒・症状がある間のマスク着用でリスクを大幅に下げることができます。家庭内で感染者が出たら早めに対策を強化してください。


まとめ

新生児・赤ちゃんのRSウイルス感染症は月齢が低いほど重症化しやすく、無呼吸発作や細気管支炎へのリスクを念頭に置いた観察が必要です。陥没呼吸・鼻翼呼吸・哺乳量の急激な低下など「いつもと違う」変化を感じたら早めに小児科へ相談し、家庭では鼻吸い・加湿・少量頻回授乳を続けながら回復を支えてください。

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監修
先生 風間 尚子
風間 尚子先生
小児科専門医
日本赤十字社医療センターにて小児科医として勤務した後、現在は都内の小児科クリニックにて診療に従事。みてねコールドクターの医療監修も担当。PALS(小児二次救命処置)インストラクターとして救急対応にも精通。

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