子どもが嘔吐したときの消毒はどうする?嘔吐物の処理と消毒液の作り方を小児科医が解説

お子さんが急に吐いてしまうと、まずは背中をさすって落ち着かせてあげたくなりますよね。一方で、感染性胃腸炎(ノロウイルスやロタウイルスなど)の場合、嘔吐物の片付け方しだいで家族にうつるリスクが大きく変わります。大切なのは、慌てず「自分が触れない・吸い込まない」準備をして、正しい順番で処理することです。
この記事では、ご家庭でそろえられる準備物、消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)の作り方、嘔吐物の処理手順、洗濯や拭き掃除の注意点、受診の目安まで、小児科医の視点でわかりやすくまとめます。
Contents
子どもの嘔吐物は「処理」が重要:感染性胃腸炎(ノロウイルス等)と二次感染
お子さんが吐いてしまうと、まずは落ち着かせてあげたいですよね。とはいえ、感染性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)が背景にある場合、嘔吐物の片付け方で家庭内の感染が広がることがあります。
大切なのは 「急いで片付ける」よりも、「触れない・吸い込まない」準備をしてから正しい順番で処理すること です。保護者の方が安全に動ければ、それだけで二次感染の確率は下げられます。ここでは、嘔吐物で感染が起こりやすい理由と、アルコール消毒だけでは不十分になりやすい場面を整理します。
嘔吐物で感染が広がりやすい理由(触れる・吸い込む・手から口へ)
嘔吐物には、病原体が含まれていることがあります。片付けのときに、手で触れたり、汚れた手で口元や食べ物に触れたりすると、そこから感染が起こり得ます。また、強くこすったり、勢いよく拭いたりすると、細かな飛沫が広がって吸い込むリスクも高まります。
おうちの方がまず意識したいのは 「静かに、広げずに」 です。換気をして、マスクや手袋で自分を守り、嘔吐物を外側から内側へ集めるように処理すると、広がりを抑えやすくなります。
アルコール消毒だけでは不十分になりやすい場面
消毒用アルコールは便利ですが、感染性胃腸炎の原因によっては効果が十分でないことがあります。そのため、嘔吐物の処理では、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムを含むもの)を適切な濃度に薄めた消毒液を使う方法が基本になります。
ご家庭では「とりあえずアルコールをかける」ではなく、まず嘔吐物をペーパーで覆って回収し、その後に必要な場所を消毒する流れが安全です。手指は石けんでの手洗いを優先し、消毒は場所と道具に使い分けると過不足が減ります。
家庭で慌てないために、最初に決めておく役割分担
嘔吐が起きたとき、看病される方は「子どものケア」と「片付け」を同時に抱えがちです。可能なら、役割を分けるだけで慌てにくくなります。たとえば、ひとりは子どものそばで体勢を整え、水分補給は落ち着いてから少量ずつにする。もうひとりは換気をして、手袋・マスクをつけて片付ける、といった分担です。
人手がない場合でも、まず子どもを安全な場所に寝かせてから片付けに移れば大丈夫です。焦らず順番を守ることが、結果的に一番早く、安全につながります。
まず準備:家庭の感染対策セット(手袋・マスク・ビニール袋)
嘔吐物の片付けは、やり方以前に「準備」で安全性が決まります。感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)を想定するなら、処理する人が触れない・吸い込まない状態を作るのが最優先です。あれこれ道具を探している間に、動き回って汚れが広がることもあるので、ご家庭では最低限セットを決めておくと慌てにくくなります。
親御さんが落ち着いて手順を踏めれば、それだけで二次感染は減らせます。ここでは、家にあるもので準備できる感染対策セットと、塩素系漂白剤を扱うときの注意点を整理します。
使い捨て手袋は「二重」で安心、マスクと換気もセットで考える
嘔吐物の処理では、手袋とマスクを「セット」で考えます。手袋は使い捨てを選び、可能なら二重にすると、外側を外したあとも手を汚しにくく安心です。マスクは、飛沫(小さな水滴)を吸い込むリスクを下げる目的で使います。
加えて、窓を開けて換気をすると、においで気分が悪くなるのも防ぎやすくなります。焦らずに「まず装備してから触る」こと。装備がそろわない状態で急いで片付けるのが、一番危険になりやすい場面です。
ペーパータオルとビニール袋(2枚)の使い分け
処理に使うものは、特別な道具でなくて構いません。看病される方は、次の最低限が手元にあるだけで動きが安定します。
- 使い捨て手袋:手を守る(できれば二重)
- マスク:飛沫を吸い込みにくくする
- ペーパータオル(または使い捨て布):嘔吐物を静かに覆って回収する
- ビニール袋(2枚):汚れた物を二重に密封して捨てる
- 塩素系漂白剤:場所の消毒に使う(後で薄めて使用)
処理が終わったら、使った物はその場で袋にまとめて口をしっかり縛り、手袋を外した後に石けんで手洗いをすると安心です。
塩素系漂白剤(ハイター等)を使う前の注意点(混ぜない・保管)
塩素系漂白剤(ハイター等)は、嘔吐物の処理で役立ちますが、扱いには注意が必要です。まず、原液のまま使わず、水で薄めて使います(作り方は後のセクションで目安を示します)。
また、酸性の洗剤(トイレ用洗剤など)と混ざると有害なガスが出ることがあるため、同時に使わないでください。皮膚につくと荒れやすいので、必ず手袋を着け、使った後は水拭きで拭き取ると変色を減らしやすくなります。作った消毒液は容器にラベルを貼り、誤飲やいたずらを防ぐために子どもの手が届かない場所で保管しましょう。
消毒液(次亜塩素酸ナトリウム)の作り方:用途で濃度を分ける
嘔吐物の処理でよく使うのが、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムを含むもの)を薄めた消毒液です。ポイントは、用途に合わせて濃度を分けること。嘔吐物が付いた場所の消毒と、ドアノブやおもちゃなどの拭き掃除では、必要な濃度が違います。
保護者の方が迷いやすいのは「どれくらい薄めるか」ですが、目安を決めておくと落ち着いて対応できます。ここでは、ご家庭で作りやすい500ml/2Lの目安と、作った後の扱い(混ぜない・保管・素材への注意)を整理します。
嘔吐物が付いた場所は約0.1%:作り方の目安(500ml/2L)
嘔吐物が直接付いた床・壁などは、しっかり処理したいので約0.1%を目安にします(※漂白剤の濃度は製品で異なるため、ラベル表示を確認してください)。次の表は、成分が「約5%」の塩素系漂白剤を想定した例です。
| 作る量 | 0.1%の目安(約5%製品の例) |
|---|---|
| 500ml | 水500mlに対して漂白剤 約10ml(キャップ約2杯) |
| 2L | 水2Lに対して漂白剤 約40ml(キャップ約8杯) |
作るときは、換気しながら手袋をつけ、ペットボトル等に入れてよく混ぜます。嘔吐物に直接使う場面ほど、作り間違いを避けるために「計量の目安を決めておく」と安心です。
ドアノブ・おもちゃ等は約0.02%:拭き掃除用の目安
ドアノブ、スイッチ、おもちゃなどの拭き掃除は、強すぎる濃度だと素材を傷めやすいので約0.02%を目安にします。おうちの方が使いやすいように、こちらも例を示します(約5%製品を想定)。
| 作る量 | 0.02%の目安(約5%製品の例) |
|---|---|
| 500ml | 水500mlに対して漂白剤 約2ml(キャップ約1/2杯) |
| 2L | 水2Lに対して漂白剤 約10ml(キャップ約2杯) |
拭き掃除は、消毒液を布やペーパーに含ませて行い、最後に水拭きで仕上げると変色やベタつきを減らせます。手指の消毒に使うものではないので、触れたら石けんで手洗いをしてください。
作った消毒液の扱い(ラベル、作り置き、金属や色落ちへの注意)
ご家庭では、作った消毒液は必ずラベルを貼り、誤飲やいたずらを防ぐため子どもの手が届かない場所に保管してください。次亜塩素酸ナトリウムは時間とともに効果が落ちやすいので、作り置きは最小限(できればその日のうちに使い切る)がおすすめです。
また、金属は傷みやすく、色柄ものは色落ちの可能性があります。目立たない場所で試す、使用後は水拭きするなど、素材に合わせて調整しましょう。さらに重要なのが「混ぜない」ルールです。酸性の洗剤(トイレ用など)と一緒に使うと有害なガスが出ることがあるため、同時に使わないでください。
正しい嘔吐物の処理手順:外側→内側、10分、仕上げの水拭き
嘔吐物の片付けは「急いで終わらせる」より、飛び散らせずに回収し、必要な場所を消毒することが大切です。とくにノロウイルスなどが疑われる場合、強くこすったり、掃除機で吸ったりすると、細かな粒子が広がる心配があります。
保護者の方が押さえておきたいコツは、①換気と装備で自分を守る、②外側から内側へ静かに集める、③消毒液で一定時間置く、④最後に水拭きで仕上げる、の順番です。ここでは、ご家庭で再現しやすい手順に絞って整理します。
1)換気して、飛び散らせない準備をする
まず窓を開けて換気し、処理する人はマスクと手袋(できれば二重)を着けます。おうちの方は、嘔吐物の周りを歩き回らないことも大切です。歩くたびに汚れが広がったり、足裏に付いて別の部屋へ運んでしまったりするためです。ペーパータオル、ビニール袋(2枚)、作った消毒液(0.1%)を手の届く場所に置いてから作業を始めましょう。
髪が長い場合はまとめ、袖やひもが床に触れないようにすると安心です。準備に数分かけるだけで、結果的に片付けが早く安全になります。
2)拭き取りは外側から中心へ、静かに集める
次に、嘔吐物の上をペーパータオルでそっと覆います。いきなり拭き始めると広がりやすいので、まず「覆って吸わせる」イメージです。回収するときは、外側から中心に向かって静かに集め、強くこすらないようにします。
汚れたペーパーはその都度ビニール袋へ入れ、袋の口は一度ねじっておくと漏れにくくなります。カーペットなどで取り切れない場合も、無理にこすらず、できる範囲で回収したうえで消毒に進みます。看病される方が気分が悪くなりそうなら、いったん休憩して交代しても大丈夫です。
3)消毒液で浸して10分→拭き取り→水拭き、最後に密封して捨てる
拭き取った後の床や周囲は、0.1%の消毒液を含ませた布やペーパーで覆うようにして10分ほど置くのが目安です(素材によっては変色することがあるため注意)。その後、消毒液を拭き取り、仕上げに水拭きをしてベタつきや変色を減らします。
最後に、使ったペーパー・手袋・マスクはまとめて二重の袋に入れて密封し、可燃ごみとして捨てます。手袋は外側が汚れている前提で外し、外した後は石けんでしっかり手洗いをしてください。落ち着いて順番を守れば、家庭でも十分に安全に処理できます。
衣類・寝具・カーペットを汚したとき:洗濯機に入れる前が勝負
吐いたものが服や寝具につくと、片付け以上に困りますよね。ここで大切なのは、洗濯機にそのまま入れないことです。嘔吐物が付いたまま回すと、洗濯槽の中で汚れが広がり、ほかの衣類に付着してしまう可能性があります。
ご家庭では「付着物を落とす→(必要に応じて)つけ置き→分けて洗う」の順で進めると、無理なく二次感染を減らせます。素材によっては塩素系漂白剤が使いにくいこともあるので、代わりの方法も合わせて整理します。
付着物は水洗いで落とす(飛沫に注意)、分けて扱う
まずは、汚れた部分をバケツの中などで水洗いして、付着物を落とします。ここで勢いよくこすったり、シャワーを強く当てたりすると飛沫が広がりやすいので、静かに洗うのがコツです。
落とした後は、汚れた衣類やタオルはほかと分け、運ぶときもビニール袋に入れて移動すると安心です。看病される方は、作業中に顔や髪を触りやすいので、いったん手を止めて手袋を外し、手洗いしてから次に進む意識があると安全です。
つけ置きの考え方(0.02%)と、色落ちが心配な場合の代替
色柄物やデリケート素材は、塩素系漂白剤で色落ちすることがあります。そのため、おうちの方は「使える素材か」をタグ表示などで確認し、迷う場合は目立たない場所で試すのが安心です。
つけ置きは0.02%を目安にし、たとえば30分〜60分ほど浸けてから、ほかの衣類と分けて通常の洗濯へ、という流れが取り入れやすい方法です(※時間や濃度は例です)。難しければ「付着物を落として分けて洗う」だけでも、何もしないより感染拡大を抑えやすくなります。
熱での対策(熱湯・スチーム等)と、できる範囲での現実的な工夫
塩素系漂白剤が使いにくい素材では、熱を使う方法が助けになることがあります。例として、耐熱性があるものなら「85℃以上の熱湯に1分以上」など、熱で対策する考え方もあります(やけどに十分注意してください)。
乾燥機の高温、スチームアイロンを使える範囲で活用するのも一案です。とはいえ、すべてを完璧にやろうとすると負担が大きくなります。まずは「洗濯機にそのまま入れない」「分けて扱う」を優先し、できる方法を積み重ねるだけで十分意味があります。
子どもの様子も同時に確認:受診の目安と水分補給のコツ
片付けが落ち着いたら、次はお子さんの体調チェックに意識を戻しましょう。嘔吐の原因が感染性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)だった場合、いちばん心配なのは脱水(体の水分が不足した状態)です。
ご家庭では「吐いた回数」だけでなく、水分が少しでも飲めるか、尿が出ているか、元気さはどうかを見てください。うまく飲めないときは、飲ませ方を工夫するだけで改善することもあります。一方で、早めに小児科へ相談したほうがよいサインもありますので、ここで整理しておきます。
受診を急ぎたいサイン(繰り返す嘔吐、ぐったり、尿が出ない等)
親御さんが迷いやすいところなので、受診の目安を短くまとめます。次のような様子があれば、早めに小児科や病院へ相談してください。
- 何度も繰り返し吐いて水分が保てない
- ぐったりして反応が弱い、顔色が悪い
- おしっこが半日以上出ない/尿の色が濃い
- 口の中が乾く、泣いても涙が少ないなど脱水が心配
- 血が混じる嘔吐、強い腹痛が続く など
「いつもと違う」と感じる直感も大切です。安全側に倒して相談して大丈夫ですよ。
水分は「少量・頻回」:経口補水液を与えるタイミングと量の目安
吐いた直後は胃が刺激に敏感なので、無理に飲ませるとまた吐きやすくなります。まずは落ち着くのを待ち、嘔吐が止まって1〜2時間ほどたってから、少量ずつ試すのが目安です。
おうちの方がやりやすい方法は「少量・頻回」です。たとえばスプーン1杯(5〜10ml)を5〜10分おきに、というイメージで進めます。飲み物は、経口補水液(OS-1など)が選びやすいです。ジュースや濃いスポーツドリンクは糖分が多く、下痢があるときに負担になることがあるため、様子を見ながらにしましょう。
下痢がある場合の見守りと、家族内感染を広げない生活動線
下痢があるときは、脱水が進みやすいので、尿の回数や元気さをより丁寧に確認します。また、家族内感染を広げないために「触れた手で口に触れない」環境づくりが大切です。ご家庭では、トイレの後と食事の前の手洗いを徹底し、タオルは共有せずにペーパータオルや個別タオルにすると安心です。
ドアノブやスイッチなど、よく触る場所は0.02%の消毒液で拭き、最後に水拭きで仕上げると続けやすくなります。全部を完璧にやろうとしなくて大丈夫です。「手洗い」「共有を減らす」「よく触る所だけ消毒」を押さえるだけでも効果があります。
よくある質問
Q消毒液はどれくらい置けばいい?
A拭き取った後の床などは、0.1%の消毒液で湿らせて10分ほど置くのが目安です。最後に水拭きすると変色やベタつきを減らせます。
Q嘔吐物にアルコールをかけて拭けば十分?
A原因によってはアルコールだけでは不十分なことがあります。嘔吐物は静かに回収し、床などは塩素系漂白剤を薄めた消毒液で対応するのが基本です。
Q塩素系漂白剤は原液のまま使っていい?
A原液は刺激が強く、素材を傷めたり危険になることがあります。必ず水で薄めて使い、酸性洗剤と混ぜない・換気する・手袋をする、を守ってください。
Q処理に使った手袋やペーパーはどう捨てる?
A汚れた物はビニール袋に入れて密封し、できれば二重にして捨てます。外した後は石けんで手洗いし、必要なら着替えもすると安心です。
Qカーペットや布団はどう消毒すればいい?
Aまず付着物を静かに取り除き、素材に合う範囲で対応します。塩素系が難しい素材は熱(乾燥・スチーム等)を検討し、無理せず「分けて扱う」を優先しましょう。
まとめ
嘔吐物の片付けは、つい「早く終わらせなきゃ」と焦ってしまいますよね。ですが二次感染を防ぐコツは、スピードよりも順番です。まずは換気をして、手袋・マスクで自分を守ってから、嘔吐物を外側から内側へ静かに回収します。その後、用途に合わせた濃度の消毒液(塩素系漂白剤を薄めたもの)で必要な場所を消毒し、最後に水拭きで仕上げると安心です。衣類や寝具は洗濯機に直行させず「入れる前のひと手間」を大切にすると、ご家庭での広がりを減らしやすくなります。
一方で、片付けに集中するほど、お子さんの様子の変化を見落としがちです。看病される方は、吐く回数だけでなく、水分が少しでも取れるか、尿が出ているか、ぐったりしていないかを一緒に確認してください。迷ったときは早めに相談して大丈夫です。おうちの方が無理をしないことも、回復への近道になります。
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