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子どもの下痢:食べてはいけないものと食事のすすめ|小児科医がやさしく解説

子どもの下痢:食べてはいけないものと食事のすすめ|小児科医がやさしく解説
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子どもが急に下痢をすると、「何を食べさせればいいの?」「この食べ物は大丈夫?」と悩む保護者の方がとても多いものです。下痢の時は胃腸が弱っているため、普段なら平気な食べ物でも刺激になったり、症状を長引かせたりすることがあります。

一方で、正しく選んだ食事や水分補給は、つらい症状を和らげ、回復を助ける大きな力になります。本記事では、小児科医の視点から、下痢の時に避けたい食べ物、症状に合わせたおすすめの食事、段階的な食事の戻し方、水分補給のコツまで、家庭ですぐに役立つ形でやさしく解説します。

まず確認したい「下痢の時に食べてはいけないもの」

下痢のときの子どもの腸は、普段よりずっと敏感で傷つきやすい状態になっています。そのため、いつもなら喜んで食べられる食材でも、症状を悪化させたり、回復を遅らせたりすることがあります。
まずは「避けるべきもの」を理解しておくことが、安心して食事を選ぶための第一歩です。
ここでは、下痢を悪化させやすい食品と、その理由を小児科医の視点でわかりやすく整理します。

胃腸に負担をかける脂肪分の多い食品

唐揚げ、ポテト、コロッケ、ラーメン、カレー、ベーコン、ハムなどの脂っこい食品は、胃腸の動きが落ちている時期には特に不向きです。脂肪は消化に時間がかかるため、弱っている腸に負担をかけてしまいます。摂ってしまうと腹痛が強まったり、便がよりゆるくなったりすることが多いため、症状が落ち着くまでは控えるのが安心です。

食物繊維が多く腸を刺激する食品

健康のために良いと言われる食物繊維ですが、下痢の時には逆効果になることがあります。ごぼう、れんこん、きのこ類、海藻、こんにゃく、豆類は腸の動きを刺激し、下痢を悪化させることがあります。また、未消化のまま便に混ざることで、腸にさらなる負担をかけることもあります。
回復期までしばらくは避け、まずは刺激の少ない柔らかいものを中心にしましょう。

乳糖不耐で悪化しやすい乳製品

下痢をしているときは、腸の粘膜が弱って「乳糖(牛乳の糖分)」を分解する酵素が一時的に減ってしまうことがあります。これを乳糖不耐といい、牛乳・ヨーグルト・チーズを摂ると消化しきれない乳糖が腸に残り、水分を引き込んでさらに下痢が悪化する原因になります。
完全にNGというわけではありませんが、便が元の硬さに戻るまでは避けたほうが安心です。

下痢の時の基本の考え方:食べなくても大丈夫?

子どもの下痢が続くと、「何も食べられていないけれど大丈夫?」「体力が落ちない?」と心配になる保護者の方も多いですよね。しかし、下痢の時期は胃腸が炎症で弱っており、無理に食べさせるとかえって症状を長引かせてしまうことがあります。
まず押さえておきたいのは、 “食事より水分補給を優先する”という大原則 です。身体の仕組みを知ると、焦らずに見守れるようになります。

胃腸が弱っている時に無理をさせない理由

下痢は、腸の粘膜がウイルスや細菌、食べ物の刺激で傷つき、正常に働けなくなっているサインです。この状態で無理に食べると、さらに腸の動きが乱れ、腹痛や嘔吐が悪化することがあります。
特に固形物や脂肪分の多い食事は負担が大きく、かえって回復を遅らせます。
胃腸を「休ませる」ことが実はとても重要です。

エネルギーは体内のストックで補える仕組み

「食べないと元気がなくなるのでは?」と心配されますが、短期間であれば心配ありません。子どもの身体には、肝臓や筋肉に蓄えたエネルギー(グリコーゲン)があり、これを使って必要なエネルギーを補うことができます。
下痢の時に無理に食べなくても、数日で食欲が自然に戻るケースがほとんどです。

食事より水分補給が優先される理由

下痢で最も怖いのは脱水です。
水分がどんどん体外へ失われるため、食べ物よりも先に水分と電解質を補うことが大切です。

  • おしっこの量が減る
  • 口が乾く・涙が出ない
  • ぐったりしている

こうしたサインが見られたら、食事より水分を優先し、必要であれば早めに受診を検討してください。食欲が戻るのは「胃腸が回復し始めたサイン」なので、焦らずにお子さんのペースを大切にしましょう。

下痢が強い時に向いている食事

下痢が続いている間は、腸の働きが弱く、普段よりも消化に時間がかかります。そのため、刺激の少ない“やわらかい・温かい・消化の良い”食事が基本になります。無理に量を食べさせる必要はなく、「食べられるものを、食べられる分だけ」で十分です。ここでは、下痢が強い時期に特に向いている食事を小児科医の視点からまとめます。

おかゆ・うどんなどの消化しやすい炭水化物

おかゆや軟飯は、水分が多く、消化への負担が軽いため最もおすすめです。うどんも、しっかり煮込んで柔らかくすれば負担が少なく、つるんと食べやすいのが特徴です。
味付けは薄めにし、麺を短く切るなどの工夫をするとさらに食べやすくなります。パンの場合は、耳を切り落とし、焼かずにそのままか、パン粥にすると良いでしょう。

豆腐や卵など負担の少ないたんぱく質

体力の回復を助けるためには、少量のたんぱく質が役立ちますが、肉や脂肪の多い食品は負担になりやすい時期です。豆腐は非常に消化が良く、湯豆腐やすまし汁に入れるだけで食べやすくなります。卵は茶碗蒸しや卵とじうどんなど、柔らかく火を通した形が適しています。
無理に量を食べなくても、少しずつで十分です。

すりおろしリンゴやバナナが役立つ理由

すりおろしリンゴに含まれる「ペクチン」は、便をほどよく固め、腸内環境を整える働きがあります。甘さもあり、子どもが受け入れやすい点もメリットです。バナナは消化が良く、エネルギー源として優秀で、忙しい時でも手軽に準備できます。熟したもののほうが刺激が少なく、下痢の時にはより安心して与えられます。

少しずつ回復してきた時の食事の戻し方

下痢の症状が少し落ち着いてくると、「そろそろ普通の食事に戻していいのかな?」と迷うことがあります。回復期は無理をせず、腸の状態に合わせて段階的に食事を戻していくことが大切です。急に元の食事に戻すと、再び便がゆるくなることがあるため、“一歩ずつ、ゆっくり”を心がけましょう。

柔らかい主食から段階的に戻すステップ

まずは、負担の少ない主食から再開します。おかゆ→軟飯→白ごはんのように、固さを徐々に戻していきます。うどんの場合も、最初はクタクタに煮たものから始め、問題がなければ普通の固さへと進めます。子どもによって進むスピードは違うため、「食べてお腹が痛くならないか」を確認しながら調整しましょう。

煮込んだ野菜・白身魚を追加するタイミング

主食が問題なく食べられるようになったら、次はおかずを少しずつ増やします。にんじん、大根、じゃがいも、かぶなどの根菜を柔らかく煮た煮物やスープは安心です。
白身魚(タラ、カレイ、鯛)は脂肪が少なく消化しやすいため、ほぐして少量ずつ加えていきます。
味付けは薄めで十分です。

便がゆるくなった時の“戻すステップ”

もし、食事を戻している途中で便が再びゆるくなった場合は、急ぎすぎたサインです。

状況 対応
軟飯や普通のごはんで便が柔らかくなった おかゆに戻す
野菜や魚を増やした後に症状が悪化 主食中心(おかゆ・うどん)へ戻す
何を食べてもお腹が痛い 水分中心の“休ませる期間”をつくる

一度ステップを戻すことで腸の負担が軽くなり、多くの場合は数日で再び改善していきます。

家庭でできる水分補給のコツと注意点

下痢の時に最も気をつけたいのが「脱水」です。食べられなくても数日は心配ありませんが、水分が不足するとぐったりしたり、回復が遅れたりします。とくに小さな子どもは体内の水分量が少ないため、早め早めの対策がとても大切です。ここでは、安全に水分を補うためのコツと、受診が必要なサインをまとめます。

経口補水液とスポーツドリンクの使い分け

下痢が続くと、水分と一緒に塩分(ナトリウム)や糖分も失われます。そのため、「水だけ」では必要な電解質が補えず、体調が悪化することがあります。

おすすめの飲み物の選び方

  • 経口補水液(OS-1など):脱水が心配なときに最適
  • スポーツドリンク:軽度の下痢で水分を補いたい時に
  • スープの上澄み・麦茶:経口補水液が飲みにくい時の代わりに

スポーツドリンクは飲みやすい反面、糖分が多いものは下痢を悪化させる可能性があるため、薄めるなどの工夫をすると安心です。



「少量頻回」が腸にやさしい理由

腸が弱っていると、一度に大量に水分を飲むと刺激になってしまい、かえって下痢を悪化させることがあります。そのため、水分は一口(5〜10ml)を、10〜15分ごとに少しずつが鉄則です。寝ている時も、唇が乾いているようなら無理のない範囲で補給を心がけます。

脱水サインと受診の目安

次のようなサインが見られたら、家庭での対応だけでは不十分なことがあります。

  • おしっこが半日以上出ていない
  • 口が乾く、涙が出ない
  • ぐったりして目の力がない
  • 嘔吐を何度も繰り返す
  • 水分をほとんど受け付けない

これらが当てはまる場合は、迷わず小児科や救急を受診してください。必要に応じて点滴で水分を補うことができます。

子どもの「食べたい」を大切にする食事サポート

下痢のときは保護者の方が「何か食べさせなきゃ」と焦ってしまいがちですが、子どもには自分の体調に合わせて“食べたい・食べたくない”を判断する力があります。無理に食べさせようとすると、かえってストレスで食欲が落ちたり、嘔吐につながることもあります。子どもの感覚を尊重しながら、負担の少ない形で寄り添うことが大切です。

食べたい気持ちを尊重する心理的なメリット

子どもが「これなら食べたい」と言うときは、胃腸が少し元気になってきているサインです。その気持ちを尊重することで、食事への前向きな気持ちが保たれ、無理なく回復に向かうことができます。また、好きな食べ物でも下痢に合わない場合は、似たような“胃にやさしい代わりの食べ物”を提案してあげると安心です。

食事量にこだわらない声かけの工夫

回復期とはいえ、一度にたくさん食べると腸に負担がかかります。「もう少し食べなさい」と促すよりも、「一口食べてみようか」「あとでお腹がすいたらまた食べようね」と声をかけると、子どもが自分のペースで食べられます。少量を何回かに分ける“少量頻回”のスタイルが胃腸への負担も少なく安全です。

心配な症状がある時は早めに受診を

下痢は多くがウイルス性で自然に良くなっていきますが、例外もあります。次のような場合は、早めに医療機関へ相談してください。


  • 1週間以上下痢が続く
  • 血便が出る
  • ぐったりして食事も水分もとれない
  • 激しい腹痛を訴える

細菌感染や脱水の可能性があるため、医師の診察で進行を止めることが大切です。


よくある質問

  • Q下痢で何も食べられない日があっても大丈夫ですか?

    Aはい、大丈夫です。胃腸が弱っている時は無理に食べさせると負担になります。水分がとれていれば数日食べられなくても心配はいりません。

  • Q牛乳やヨーグルトはいつ再開できますか?

    A便がしっかりした形に戻ってからがおすすめです。乳糖を分解する力が一時的に落ちており、早く再開すると下痢が長引くことがあります。

  • Qスポーツドリンクしか飲んでくれません。大丈夫でしょうか?

    A飲めるものがあるのは良いことです。ただし糖分が多いと下痢を悪化させることがあるため、少し薄めて与えると安心です。

  • Qリンゴなら何でも良いのですか?ジュースでもOK?

    Aおすすめは「すりおろしリンゴ」です。リンゴジュースは糖分が多く、下痢を悪くする可能性があります。

  • Qバナナは未熟なものと熟したもの、どちらが良いですか?

    A熟したバナナがおすすめです。未熟なものは繊維が多く刺激になりやすいことがあります。

  • Q下痢が落ち着きかけたのに、普通の食事を食べたら悪化しました。何をすればいいですか?

    A食事を進めるスピードが早かった可能性があります。一つ前の段階(おかゆ・うどんなど)に戻して様子を見てください。

  • Qどのタイミングで病院を受診すべきですか?

    A1週間以上続く、血便が出る、水分がとれない、ぐったりしている場合は早めに受診してください。


まとめ

子どもの下痢は、家庭でも対応できることが多い一方で、食事選びや水分補給の方法によって回復のスピードが大きく変わることがあります。まずは、揚げ物や乳製品、食物繊維の多い食品など、腸に負担をかける食べてはいけないものを避け、お腹を休ませることが大切です。
下痢が続いている時は無理に食べさせず、「食べられるものを、食べられる分だけ」で十分です。おかゆや煮込みうどん、すりおろしリンゴ、バナナなど、消化にやさしい食事を中心に、段階的に戻していきましょう。

また、下痢で最も注意したいのは脱水です。
経口補水液やスープの上澄みなどを活用し、少量をこまめに与えることがポイントです。

ぐったりしている・水分がとれない・血便があるなどのサインがあれば、早めに小児科を受診してください。子どもは自分の体調に正直で、無理をしないことで回復が早まることも多くあります。
焦らず、温かく見守っていきたいですね。

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監修
先生 風間 尚子
風間 尚子先生
小児科専門医
現在、日本赤十字社医療センター非常勤医・ミル訪問クリニック・吉原医院に勤務。小児科専門医、PALS(小児二次救命処置)インストラクターとして救急対応にも精通。

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