子どものインフルエンザにおすすめの食事|食べやすい物と回復を助けるポイントを小児科医が解説

インフルエンザで高い熱が続くと、子どもはぐったりして食欲が落ちやすく、「何を食べさせればいいの?」「食べないままで本当に大丈夫?」と心配になる保護者の方はとても多いものです。実は、インフルエンザの時期は胃腸の動きが弱まり、無理に食べさせようとするとかえって負担になることもあります。本記事では、小児科医の視点から、発熱のピーク期に食べやすい食品、少し食べられるようになってきた回復期の食事、避けたほうがよい食材、そして食べさせる際の工夫について、安心して実践できる形でやさしく解説します。
Contents
インフルエンザ中の食事は「無理に食べさせなくていい」理由
インフルエンザにかかった子どもは、高熱やだるさ、喉の痛みで食欲が大きく落ちます。保護者の方は「食べないと体力がもたないのでは?」と心配になりますが、実は発症直後〜数日間は“ほとんど食べられなくても大丈夫”な時期です。身体はウイルスと戦うために多くのエネルギーを使っており、胃腸の働きは自然と弱まります。
そのため、無理に食べさせると負担になったり、嘔吐につながったりすることがあります。まず大切なのは、水分と少しの糖分を保つこと。食べられるものを、食べられる時に、少しだけで十分なのです。
高熱で胃腸の働きが弱るしくみ
発熱すると、身体は免疫反応を活発にしようとして多くのエネルギーを使います。その分、胃や腸に送る血流が減り、消化機能が低下します。これが「食欲が自然と落ちる」理由です。特にインフルエンザは発熱が急激で高いことが多く、胃腸の働きが一時的に停滞することで、普段食べられるものでも受け付けなくなる子が多くいます。無理に食事を押し込むと、吐き気や腹痛が悪化し、逆効果となることがあります。
食べないことで体力が落ちないのかという不安
「食べないままでは回復が遅くなるのでは?」という不安はよくある相談ですが、インフルエンザの数日間は水分さえとれていれば問題ありません。身体は肝臓や筋肉に蓄えた糖(グリコーゲン)を使ってエネルギーを補っています。短期間の食欲低下は心配いりませんし、無理に食べるよりも、水分を保ちつつしっかり眠ることの方が回復にとって大切です。
水分と糖分を優先したい理由
インフルエンザで気をつけたいのは、食事よりもむしろ脱水です。
高熱が続くことで汗が増え、普段より水分を失いやすくなります。水分が不足するとだるさや頭痛が悪化し、回復の妨げとなります。糖分は少量でもエネルギー源になるため、ゼリー飲料やスポーツドリンクなど“飲みやすいもの”で補給できれば十分です。食事が進まなくても、水分と糖分がとれていれば安心して見守ることができます。
発症直後〜高熱のピークにおすすめの食事
インフルエンザの発症直後から高熱が続く期間は、喉の痛みやだるさで「食べたい」という気持ちが起こりにくい時期です。この段階では無理に食べさせる必要はなく、水分と少しの糖分がとれるものを優先することで体が楽に回復へ向かいます。冷たいものは喉の炎症を和らげる効果があり、飲み込みやすさも大きなポイント。ここでは、食欲がほとんどない時でも摂りやすい食品を、医学的理由とともに紹介します。
喉ごしが良くエネルギー補給しやすい食べ物
高熱でだるさが強い時は、噛む力・飲み込む力のどちらも低下します。そのため、固形物よりも“とろり”や“つるん”と入る食べ物が向いています。ゼリーやプリン、飲むタイプのゼリー飲料は、糖分と水分を同時に摂れるため、脱水を予防しつつ体力を補う良い選択です。特に「エネルギー補給」と明記されたゼリー飲料は、体力が落ちやすい発症初期に役立つことが多いです。
アイス・ゼリー・プリンが役立つ医学的ポイント
喉の炎症が強いと、温かいものがしみて痛むことがあります。バニラアイスやシャーベットは冷たさで喉の痛みを一時的に和らげ、食べるハードルを下げてくれます。また、アイスは少量でもカロリーがしっかりとれるため、子どもにとって効率の良いエネルギー源になります。
- アイスクリーム:喉の痛みの軽減+高カロリーでエネルギー補給に最適
- ゼリー飲料:水分と糖質を同時に補給できる
- プリン:卵と牛乳でたんぱく質が少しとれる
これらは「食べられる範囲でOK」という気持ちで取り入れてください。
冷たいスープやヨーグルトが飲みやすい理由
冷たいスープ(コーンスープやポタージュなど)は、温かいものより喉への刺激が少なく、飲みやすく感じる子が多くいます。
また、ヨーグルトは喉にも優しいうえ、適度にたんぱく質とエネルギーが補給できます。酸味が強いタイプはしみることがあるため、甘めのものや飲むヨーグルトを選ぶとよりスムーズです。
飲みやすい状態で負担なく摂れることが、この時期の最優先ポイントです。
食欲が戻り始めた回復期にすすめたい食事
熱が少し下がり、子どもが「なんか食べたい」と言い始めたら、回復に向かっているサインです。この時期は、弱っていた胃腸がゆっくり働き始める段階なので、最初は消化しやすい炭水化物から再開し、徐々にたんぱく質やビタミンを足していきます。無理に量を増やす必要はなく、子どもが食べやすい形に調整してあげることが大切です。
消化にやさしい炭水化物から始めるメリット
胃腸の動きが完全には戻っていない回復期は、まず“胃の負担になりにくいもの”からスタートすることが基本です。炭水化物はエネルギー源になりやすく、量の調整もしやすいため、回復期の初めに向いています。特に「柔らかく煮込む」「小さく切る」などの工夫で、さらに食べやすくできます。食べられた量が少なくても、確実にエネルギーを補える点が安心材料になります。
うどん・おかゆ・雑炊・パン粥などの選び方
この時期におすすめの定番メニューは次の通りです。
- やわらかいうどん(煮込みうどん):消化が良く、のど越しも軽い
- おかゆ・雑炊:卵を少し入れると栄養バランスがアップ
- パン粥・:食パンの耳を切り落として柔らかくすれば食べやすい
特に卵入りのおかゆ(卵とじ雑炊)は、たんぱく質を負担なく摂れるため、体力回復に役立ちます。麺や米は“柔らかさ”がポイントで、少しでも食べやすい状態にしてあげましょう。
果物で整える胃腸とエネルギーの補給
果物はエネルギー補給と胃腸の調子を整える両方に役立つため、回復期にとても便利です。
- すりおろしりんご:ペクチンが胃腸をサポート
- バナナ:糖質がエネルギーになりやすく、すぐに力になる
- りんご・バナナの組み合わせは定番で、ほとんどの子どもが受け入れやすい
特にすりおろしりんごは、のど越しがよく、食欲が不安定な時でも比較的食べやすいのが特徴です。
果物は無理のない範囲で少しずつ取り入れ、食べられる感覚を取り戻す助けにしてください。
インフルエンザ中に避けたい食べ物とその理由
回復に向かうためには“何を食べるか”と同じくらい“何を避けるか”も大切です。インフルエンザで弱っている時期は、胃腸が通常よりも敏感になっており、普段なら平気な食べ物でも負担になることがあります。また、喉が炎症で腫れていると刺激物がしみやすく、不快感が強まって食欲がさらに落ちてしまうことも。ここでは、避けたい食品とその理由をわかりやすく整理します。
胃腸に負担をかける脂っこいメニュー
唐揚げ・フライ・ラーメン・揚げ物などの脂っこい料理は、消化に時間がかかり、弱っている胃腸にとって大きな負担になります。インフルエンザ中は、身体がウイルスと戦うことにエネルギーを使うため、胃腸の働きが落ちている状態。脂質の多い食事は腹痛・吐き気・下痢を悪化させることがあるため、回復するまでは控えるのが安心です。
食物繊維が多い食品が下痢を悪化させる理由
きのこ・ごぼう・海藻類・パイナップルなど、繊維が多い食品は「健康によい」イメージがありますが、発症中の子どもにはやや不向きです。繊維は胃腸の動きを活発にさせる作用があり、弱った腸には刺激が強すぎることがあります。特にインフルエンザで下痢が出ている時期に繊維質をとると、便がゆるくなりやすく、脱水のリスクが高まることもあるため注意しましょう。
刺激の強い酸味・炭酸が喉を刺激する仕組み
みかん・グレープフルーツなどの酸味が強い果物、炭酸飲料、スパイスの効いた料理は、腫れている喉にしみやすく、飲み込みにくさを悪化させます。結果として食事や水分補給のハードルが上がり、回復を妨げてしまうことも。味が濃いものや刺激の強い飲み物は、喉の痛みが落ち着くまで避けた方が無難です。
食べさせ方のポイント:量・温度・タイミング
インフルエンザのときは、「何を食べるか」よりも「どう食べるか」が大切になります。子どもは高熱のあいだ、普段よりも疲れやすく、のどの痛みやだるさで思うように食べられません。少しの工夫で食べやすさが大きく変わり、負担を軽くしながら必要なエネルギーや水分をとることができます。子どものペースに合わせて、無理のない範囲で進めていきましょう。
ぬるめの温度が喉にやさしい理由
熱々の料理は、炎症で腫れた喉にとって強い刺激になります。反対に冷たすぎるものも、飲み込みのタイミングが難しくなることがあります。最も飲み込みやすいのは 「人肌~ぬるめ」 の温度。とくにスープやおかゆは温度調整で食べやすさが大きく変わるため、子どもの反応を見ながら調整してあげてください。
一気に食べさせない「少量頻回」の考え方
体力が落ちているときに、一度にたくさん食べると吐き気が強まったり、胃が痛くなったりすることがあります。そこで、小児科が推奨するのが 「少量頻回」 です。これは、一回の量は少なくして、その分回数を増やすという方法です。
- 一口食べたら休憩
- 少し食べてやめてもOK
- 遊びながらではなく、落ち着いた姿勢で
「少しずつで大丈夫」と伝えながら、子どもが安心して食べられる環境を作ることがポイントです。
子どもが「食べたい」と言うものを優先する大切さ
病気のときは、普段好きな食べ物でも食べられないことがあります。一方で、「これなら食べたい」というものが急に変わることもよくあります。インフルエンザの時期は、栄養バランスより“食べられるものを選ぶ”ことが最優先です。例えば、普段甘いものを控えていても、発熱の時期にプリンやゼリーを選ぶのはむしろ合理的です。食べられたこと自体が回復への一歩になります。
水分補給の工夫と脱水を見逃さないコツ
インフルエンザで最も注意したいのは「食べないこと」よりも脱水です。高熱が続くと汗の量が増え、呼吸も早くなるため、体から想像以上に水分が失われていきます。とくに幼児はのどの痛みやだるさで飲む量が減りやすく、短時間で脱水になることもあります。ここでは、自宅でできる水分補給のコツと、脱水の危険サインをわかりやすく解説します。
スポーツドリンク・経口補水液の使い分け
インフルエンザ時は、ただの水よりも電解質(塩分)と糖分を一緒に補える飲み物がおすすめです。
| 種類 | 特徴・使い方 |
|---|---|
| 経口補水液(OS-1など) | 脱水症ぎみの時に最適。短時間で身体に吸収されやすい。味が苦手な場合は少量ずつでOK。 |
| スポーツドリンク | 発熱で汗をかく時期に飲みやすい。糖分と塩分をバランスよく補給できる。原液が甘すぎる場合は少し薄めて。 |
| 水・麦茶 | 補助として使用。単独では電解質が不足しがち。 |
乳幼児は一度に多く飲めないため、「一口ずつこまめに」が基本です。
乳児と幼児で異なる水分の与え方
子どもの年齢によって、水分の飲み方のコツは少し違います。
乳児(0〜1歳):母乳やミルクが主。こまめに授乳し、ぐずって飲まない場合はスプーンで少しずつ。
幼児(1〜5歳):ストローやコップで飲める量が変わるため、好きな飲み方に合わせる。冷たすぎると喉にしみることがあるため「常温〜少し冷たい程度」が飲みやすい。
「一度にたくさん」より「細かく何度も」。これが脱水を予防するコツです。
危険な脱水サインと受診の目安
水分が足りなくなると、以下のようなサインが出てきます。これらが見られたら、受診のタイミングを待たず早めに医療機関へ相談してください。
- 口の中が乾いてカサカサしている
- おしっこが明らかに減っている(半日以上出ていない)
- 涙が出ない
- ぐったりしている、抱っこすると力が入らない
- 息が速い、顔色が悪い
水分補給がうまくいくと、熱が高い日でもぐっと楽に過ごせるようになります。食事より優先して、こまめな水分補給を心がけてください。
よくある質問
Qインフルエンザで全く食べない日があっても大丈夫ですか?
A高熱の数日間は食べられなくても問題ありません。胃腸の働きが落ちているため、水分さえとれていれば心配はいりません。
Q食事がとれないとき、どんな飲み物がよいですか?
A経口補水液やスポーツドリンクが適しています。水だけだと電解質が不足するため、甘みと塩分がある飲み物が回復を助けます。
Qアイスばかり食べたがるのですが良いのでしょうか?
A大丈夫です。喉の痛みを和らげ、小さな量でもエネルギーを摂れるため、インフルエンザ時にはむしろ合理的な選択です。
Q回復期におすすめの食事は何ですか?
A柔らかく煮たうどん、おかゆ、雑炊、パン粥など“胃に優しい炭水化物”から再開し、少しずつ卵や果物を足していくと良いです。
Q下痢があるときに避けた方がよいものは?
Aきのこ・ごぼう・海藻など繊維の多い食品は腸を刺激するので、症状が落ち着くまで控えましょう。
Q炭酸飲料を欲しがります。飲ませても良いですか?
A腫れた喉に刺激が強くしみます。飲みたい場合は、炭酸を抜いて少しだけにするか、別の飲み物に置き換えるのがおすすめです。
Q 食事量が戻るのにどれくらいかかりますか?
A個人差がありますが、多くは解熱して1〜3日ほどで食欲が戻ります。焦らず、お子さんのペースに合わせて大丈夫です。
まとめ
インフルエンザにかかった子どもは、高熱やだるさで食欲が大きく落ちますが、発症直後の数日間は無理に食べさせる必要はありません。 胃腸の働きが弱っているため、固形物を頑張って食べるよりも、水分と少量の糖分を補う方が体にとって負担が少なく、回復を妨げません。高熱のピーク時はアイス・ゼリー・プリンなど喉ごしのよいものを中心に、 「食べられるときに、食べられるものを、少しだけ」 が基本です。
食欲が少し戻ってきたら、柔らかい炭水化物(うどん・おかゆ・雑炊)から始め、卵や果物を少しずつ追加していくと、胃腸にやさしくエネルギーを補えます。一方で、脂っこい料理や食物繊維の多いもの、酸味・炭酸の強い食品は、胃腸や喉に負担をかけやすいため控えましょう。
食事の内容以上に大切なのが水分補給で、スポーツドリンクや経口補水液を活用し、脱水サイン(尿が少ない、涙が出ない、ぐったりなど)を見逃さないよう注意してください。
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