風邪などの内科症状

子どもの喉の痛み:原因と対処法、受診の目安を小児科医が解説

子どもの喉の痛み:原因と対処法、受診の目安を小児科医が解説
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お子さんが「喉が痛い」と訴えると、食事や水分を嫌がったり、声がかすれたりして心配になりますね。
喉の痛みは、風邪などのウイルス感染が多くを占めますが、溶連菌感染症など治療が必要な細菌感染の場合もあります。
また、乾燥した空気や声の出しすぎ、アレルギーが原因になることもあり、原因によって対応が異なります。
この記事では、子どもの喉の痛みの主な原因・家庭でできるケア・病院を受診すべきタイミングを、小児科医の視点からわかりやすく解説します。
不安なときに慌てず行動できるよう、家庭での工夫や受診の目安を丁寧に整理していきます。

子どもの喉の痛みはなぜ起こる?主な原因と特徴

お子さんの喉の痛みの多くは、風邪などのウイルス感染によって起こります。ウイルスが喉の粘膜に炎症を起こすことで、痛みや違和感、発熱などの症状が現れます。

しかし、原因はそれだけではありません。細菌感染、乾燥、声の出しすぎ、アレルギーなど、生活環境や体調によっても起こりうるのです。ここでは、それぞれの原因と特徴をやさしく整理してみましょう。

風邪やウイルス感染による喉の痛み

子どもの喉の痛みのうち、約8〜9割はウイルス感染が原因とされています。ライノウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなど、さまざまな種類のウイルスが喉の炎症を引き起こします。
ウイルス感染の特徴は、咳や鼻水、発熱などを伴うことです。痛みは軽度から中等度で、数日から1週間ほどで自然に回復します。
治療は、病気そのものを直接治すのではなく、症状をやわらげて体を楽にする対症療法が中心です。安静と十分な水分、のどを潤す環境づくりが最も大切です。

💡 ポイント

  • インフルエンザやヘルペスなど限られたウイルスに対する抗ウイルス薬を除いて、一般的な風邪の原因になるようなウイルスに直接効く薬はありません。
  • しっかり休み、水分をこまめにとることが回復の近道です。

溶連菌感染症など細菌感染による喉の痛み

ウイルスより頻度は低いものの、細菌感染による喉の痛みも注意が必要です。代表的なのが「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)」です。
溶連菌の症状は、**高熱・強い喉の痛み・発疹・いちご舌(舌が赤くブツブツする)**などが特徴です。風邪と違い、咳や鼻水があまり見られないのがポイントです。
放置するとリウマチ熱や腎臓の炎症などの合併症を起こす可能性があるため、早めに受診して抗菌薬(抗生物質)による治療を受けることが大切です。

項目 風邪(ウイルス性) 溶連菌感染症(細菌性)
主な原因 ウイルス 細菌(A群溶血性レンサ球菌)
発熱 微熱〜38℃台 急な高熱(39℃前後)
咳・鼻水 あり ほとんどなし
喉の痛み 軽〜中程度 強い痛み
治療 対症療法 抗菌薬(抗生物質)

熱がないのに喉が痛い場合の原因

「熱がないのに喉が痛い」というケースも少なくありません。
この場合は、感染症以外には喉が刺激されていることも考えられます。
乾燥した空気やホコリを吸い込んだり、寝ている間に口呼吸をしていたりすると、喉の粘膜が乾いて痛みを感じやすくなります。
また、風邪の初期症状で、まだ発熱や咳が出ていない段階のこともあります。

🌿 目安
44. 軽い痛みで食事や会話ができる → 自宅で様子を見てOK
45. 水分を嫌がる・痛みが強い → 早めに小児科を受診


乾燥・アレルギー・声の出しすぎによる影響

冬場やエアコンを使う季節は、空気の乾燥によって喉の粘膜が傷つきやすくなります。
また、運動会や発表会などで大きな声を出したあと、声帯に炎症が起きて痛むこともあります。
さらに、アレルギー性鼻炎による後鼻漏(こうびろう)も喉の違和感の原因です。鼻水が喉の奥に流れ込み、刺激してしまうのです。
このような場合は、部屋の湿度を保ち、声を休め、アレルギー症状があるときは医師に相談するとよいでしょう。

ご家庭でできる対処法とケアのポイント

お子さんの喉の痛みを和らげるために、家庭でできることはたくさんあります。大切なのは、無理をさせず「喉を潤し、体力を整える」ことです。

風邪などのウイルス感染による場合は、時間の経過とともに自然に回復することがほとんどですが、痛みが強い時期は、家庭でのちょっとした工夫が大きな助けになります。
この章では、食事・水分補給・環境づくり・薬の使い方を中心に、日常生活でできるケアを紹介します。

喉を潤す水分補給と飲み物の工夫

喉を潤すことは、痛みをやわらげるうえで最も効果的です。一度にたくさん飲ませるよりも、少量をこまめに与えるのがポイントです。
麦茶、白湯、経口補水液など、刺激の少ない飲み物を選びましょう。冷たすぎる飲み物は喉の刺激になるため、常温またはぬるめが理想的です。

酸味の強いオレンジジュースや炭酸飲料は、痛みを悪化させることがあるため避けましょう。

おすすめの飲み物 理由
麦茶・白湯 カフェインを含まず、刺激が少ない
経口補水液 発熱・脱水時に効果的
すりおろしリンゴ湯 喉ごしがよく、自然な甘みで飲みやすい

喉にやさしい食事と避けたい食べ物

痛みが強いときは、無理に食べさせる必要はありません。
水分はこまめに取りながら、食べられそうなタイミングで、喉ごしの良い・やわらかい食事を用意してあげましょう。
たとえば、プリン、ヨーグルト、ゼリー、おかゆ、冷ましたスープなどは飲み込みやすくおすすめです。
反対に、味の濃いもの、熱すぎる料理、柑橘類のような酸味の強いものは刺激となるため控えましょう。

🌿 食事の目安

  • 痛みが強いとき → 冷たいゼリーやプリン中心
  • 回復期 → おかゆややわらかいうどんなど、温かく消化のよいもの

部屋の湿度と環境を整えるコツ

空気が乾燥すると、喉の粘膜がさらに炎症を起こしやすくなります。
室内の湿度は50〜60%を目安に保つとよいでしょう。加湿器がなくても、濡れタオルを室内に干すだけでも十分効果があります。

寝るときは口呼吸を防ぐために、枕の高さを調整したり、鼻づまりがある場合は部屋の空気を清潔に保つことも大切です。お子さんの部屋はこまめに換気しながら、温度差が大きくならないようにしましょう。


環境づくりのポイント 実践例
湿度を保つ 加湿器・濡れタオル・室内干し
換気を行う 30分に1回5分ほど窓を開ける
空気を清潔に 空気清浄機やフィルター清掃を忘れずに

痛みが強いときの薬の使い方と注意点

痛みが強くて食事や水分が取れない場合は、医師に相談のうえで痛み止め(解熱鎮痛薬)を使うことができます。

一般的には、アセトアミノフェン(カロナールなど)がよく処方されます。使用の際は、年齢・体重に合わせた用量を守ることが大切です。
一時的に痛みをやわらげて、水分や食事を取りやすくする目的で使用します。市販薬を使う場合でも、用法・用量を守り、長引くときは自己判断せず小児科を受診しましょう。

💡 注意点

  • 座薬・シロップなど、飲みやすい形を選びましょう。
  • 痛み止めで無理に活動させず、安静を優先。

受診が必要なサインと医療機関での対応

喉の痛みは、軽い風邪から溶連菌感染症などの細菌感染まで、さまざまな原因で起こります。
多くは自然に回復しますが、なかには早めの受診が必要なケースや、緊急性の高い症状もあります。
この章では、受診の目安や診療の流れをわかりやすくまとめました。
「もう少し様子を見てもいいのか」「すぐ病院に行ったほうがいいのか」――そんなときの参考にしてください。

早めの受診を検討すべき症状

次のような場合は、喉の炎症が強かったり、細菌感染が疑われる可能性があります。
自然に治るのを待たず、早めに小児科を受診しましょう。


  • 水分をほとんど飲めない、または飲むのを嫌がる
  • 38.5℃以上の高熱が続く
  • 喉の痛みが強く、飲み込むときに泣くほどつらそう
  • 発疹が体に出てきた
  • 耳を痛がる
  • 2〜3日経っても症状が改善しない

🌿 ポイント
「食べられない」「飲めない」「高熱が続く」――この3つのいずれかがあるときは、受診をためらわないことが大切です。


緊急で受診・救急相談をすべき状態

次のような症状が見られるときは、すぐに医療機関へ連絡し、夜間や休日でも受診を検討しましょう。

  • 呼吸が苦しそう、肩で息をしている
  • 顔色や唇が青白い、紫色をしている
  • ぐったりして反応が鈍い
  • よだれが多く、飲み込みができない
  • けいれんを起こした
  • 犬の鳴くような高い音の咳がする

これらの症状は、喉の腫れや炎症が強く、気道(空気の通り道)が狭くなっている可能性があります。
呼吸状態の変化は一刻を争う場合があるため、迷わず相談しましょう。直接医師に判断してもらえるオンライン診療も有効ですし、「#8000(子ども医療でんわ相談)」や救急窓口も活用してください。

小児科で行われる検査と診療の流れ

小児科では、まず喉の赤みや腫れ、膿の有無を目視で確認します。
必要に応じて、溶連菌抗原検査やインフルエンザ抗原検査が行われることもあります。
短時間で結果がわかるため、その場で治療方針が決まります。


検査内容 目的 所要時間
溶連菌迅速検査 細菌感染の有無を確認 約10分
インフルエンザ検査 合併症の有無を確認 約15分

診察では、発熱の有無、痛みの強さ、水分摂取量などもあわせて確認されます。
医師が必要と判断した場合には、抗菌薬や解熱鎮痛薬が処方されることがあります。

抗菌薬が必要な場合と治療のポイント

溶連菌感染症や細菌性咽頭炎などの場合は、抗菌薬(抗生物質)による治療が必要です。
薬を飲み始めると、通常は1〜2日で熱や痛みが軽くなりますが、症状が落ち着いても自己判断で中止せず、処方された分は最後まで飲み切ることが大切です。

抗菌薬の飲み忘れや中断は、再発や合併症の原因になることがあります。
また、薬によっては整腸剤を併用することもありますので、処方時に医師や薬剤師に確認しておきましょう。

💡 治療の注意点

  • 症状が軽くなっても、薬は最後まで飲み切る
  • 服薬後に発疹や下痢が出たら、すぐに医師へ連絡
  • 家庭では、安静と水分補給を続けることが大切

再発を防ぐための予防と生活習慣

喉の痛みは、風邪などの感染症が治ったあとにも再発することがあります。
その多くは、乾燥した環境や疲労、免疫力の低下によって起こります。
お子さんが再びつらい思いをしないように、家庭でできる小さな工夫を続けることが大切です。
この章では、日常生活で意識しておきたい予防のポイントを整理します。

感染症を防ぐ手洗い・うがい・マスクの習慣

感染の多くは、手から口や鼻を経由して広がります。
保育園や学校でさまざまなウイルスに触れる機会が多いため、手洗いとうがいを習慣化することが基本です。
うがいは、のどの奥まで強く行う必要はなく、水または薄い食塩水で軽くすすぐ程度で十分です。
マスクは、風邪が流行する季節や人の多い場所での感染予防に効果的です。

習慣 実践の目安
手洗い 帰宅後・食事前・トイレ後に石けんで20秒以上
うがい 朝・帰宅後・就寝前に軽く2〜3回
マスク 混雑した場所・咳が出るとき・乾燥した日

栄養・睡眠・保湿で喉を守る

免疫力を保つには、食事・睡眠・保湿のバランスが欠かせません。
栄養バランスのよい食事を心がけ、特にビタミンを含む食品を意識的にとりましょう。

  • ビタミンA:にんじん、ほうれん草、卵
  • ビタミンB:鶏肉、卵、牛乳・豆乳
  • ビタミンC:いちご、ブロッコリー、じゃがいも
  • ビタミンE:アーモンド、かぼちゃ、植物油

また、就寝中に喉が乾燥しやすいため、寝室の湿度を50〜60%に保ちましょう。
加湿器を使うほか、濡れタオルをかけるだけでも効果的です。

季節ごとの注意点と家庭でできる対策

季節によって喉のトラブルの原因は少しずつ変わります。
冬は乾燥、春は花粉、夏は冷房の風、秋は朝晩の寒暖差など、それぞれに注意が必要です。

季節 主な原因 対策のポイント
花粉・黄砂 外出後の洗顔・マスク着用
冷房の風・冷たい飲食物 冷やしすぎず室温を一定に保つ
朝晩の寒暖差 体温調節しやすい服装を心がける
乾燥・ウイルス感染 加湿・うがい・保温を意識

こうした季節ごとのケアを意識することで、喉のトラブルを大きく減らすことができます。

予防接種や定期受診の活用

喉の痛みを引き起こす感染症のなかには、インフルエンザなどやヘルパンギーナなど、予防接種で防げるものもあります。
ワクチンは感染そのものを防ぐだけでなく、重症化を防ぐ効果もあります。
また、アレルギー性鼻炎や扁桃炎を繰り返すお子さんは、定期的に小児科で経過をみてもらうと安心です。
「いつもと違う」「症状が長引く」と感じたら、早めに相談することで、再発を防ぐことにつながります。


よくある質問

  • Q熱がないのに喉が痛いときは、病院へ行ったほうがいいですか?

    A熱がない場合、多くは軽いウイルス感染や乾燥による刺激が原因です。 ただし、痛みが強くて水分を嫌がる、食事をまったく取れないなどの様子がある場合は、早めに小児科を受診しましょう。 喉の粘膜が炎症を起こしているときは、こまめな水分補給と加湿を続けることで改善しやすくなります。

  • Q溶連菌感染症の喉の痛みは、どんな特徴がありますか?

    A溶連菌感染症では、高熱と強い喉の痛みが同時に起こることが多く、体に赤い発疹が出ることもあります。 また、舌の表面が赤くブツブツとした「いちご舌」になるのも特徴です。 咳や鼻水が少なく、急に元気がなくなるような場合は早めに医療機関で検査を受けましょう。

  • Q痛みが強いときに市販の薬を使っても大丈夫ですか?

    A市販の子ども用解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)は、一時的に痛みを和らげる目的で使用できます。 ただし、年齢・体重に合わせた用量を守ることが大切です。 自己判断で続けて使うのではなく、痛みが長引く場合や再発する場合は、必ず小児科に相談してください。

  • Q喉の痛みを繰り返さないために、家庭でできることはありますか?

    A最も効果的なのは、乾燥を防ぎ、十分な休養と栄養をとることです。 手洗い・うがいを習慣づけ、寝室の湿度を50〜60%に保つだけでも予防効果があります。 また、季節の変わり目には喉が乾燥しやすいため、ぬるま湯や麦茶をこまめに飲むよう心がけましょう。

  • Q痛みが長く続いたり、何度も繰り返す場合はどうすればいいですか?

    A2週間以上喉の痛みが続く、または何度も繰り返す場合は、慢性的な炎症やアレルギーが関係している可能性があります。 扁桃炎や後鼻漏などの病気が隠れていることもあるため、一度小児科または耳鼻科を受診してみましょう。 医師の判断で検査や治療を行うことで、再発を防ぎやすくなります。


まとめ:焦らず、家庭でできるケアと相談を大切に

お子さんの喉の痛みは、風邪などの軽い感染症から、溶連菌感染症のように治療が必要なものまでさまざまです。
多くの場合は時間の経過とともに自然に回復しますが、保護者ができる最も大切なサポートは、「焦らず、やさしく見守ること」です。
痛みが強いときは無理に食べさせず、飲めるときに少しずつ水分をとらせてあげましょう。
部屋の湿度を保ち、声を出しすぎないようにするだけでも、喉の回復をぐっと助けることができます。
また、発熱や発疹、水分がとれないなどのサインが見られたら、早めに小児科を受診してください。

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監修
先生 風間 尚子
風間 尚子先生
小児科専門医
現在、日本赤十字社医療センター非常勤医・ミル訪問クリニック・吉原医院に勤務。小児科専門医、PALS(小児二次救命処置)インストラクターとして救急対応にも精通。

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