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子どもの下痢に下痢止め薬は必要?使わない理由と整腸剤の選び方を小児科医がやさしく解説

子どもの下痢に下痢止め薬は必要?使わない理由と整腸剤の選び方を小児科医がやさしく解説
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子どもの下痢が続くと、「薬で止めてあげたほうがいいのかな」と心配になりますよね。特に食事が進まない、何度もおむつを替える、肌が赤くなるなど、保護者の方にとって負担が大きい時期でもあります。しかし、実は子どもの下痢は“無理に止めないほうが良い”ことが多く、薬の使い方にも大切なポイントがあります。この記事では、下痢止め薬を使わない医学的な理由、安心して使える整腸剤、家庭でのケア、受診の目安まで、小児科医の立場からやさしく解説します。焦らず、安全にお子さんをサポートできるよう一緒に確認していきましょう。

子どもの下痢でまず知っておきたい考え方

子どもの下痢が続くと「早く止めてあげたい」と感じるのは自然なことです。しかし、小児科ではまず“下痢を無理に止めない”という考え方が大切になります。子どもの腸は大人よりも未熟で、ウイルスや細菌が入ると敏感に反応し、便をゆるくして体外へ排出しようとします。これは、体を守るための大切な仕組みです。下痢の時期はお尻がかぶれる、食欲が落ちるなど心配も多いですが、適切なケアを行うことで、多くの場合は自然に回復へ向かいます。まずは「なぜ下痢が起きているのか」を理解し、安心して対応していきましょう。

下痢はウイルスや細菌を外へ出す体の防御反応

子どもの下痢の多くはウイルス性胃腸炎などによるもので、腸に入ったウイルスや細菌、毒素を早く体の外へ出そうとする防御反応です。下痢そのものは体が戦っている証拠であり、自然なプロセスといえます。薬で無理に止めてしまうと、原因となるウイルスが腸内に長く残ってしまい、回復が遅れたり症状が悪化したりすることがあります。まずは下痢が持つ役割を知ることで、落ち着いて対応できるようになります。

下痢を無理に止めると起こりやすいリスク

下痢止め薬は腸の動きを抑えることで便を出にくくしますが、子どもにはこの作用が強く出すぎることがあります。その結果、腸の中にとどまったウイルスや細菌が増えて、症状の長期化や腹痛の悪化につながることがあります。まれに、腸の動きが止まりすぎて腸閉塞や麻痺性イレウスといった重大な状態を招く恐れもあります。これらの理由から、小児科では子どもの胃腸炎に「下痢止め薬」を基本的に使わず、自然な排泄を妨げない方が安心とされています。


子どもの下痢は長引きやすい理由

子どもの腸はまだ成熟途上で、大人のように安定した働きをしません。そのため、一度ウイルス性胃腸炎になると腸の動きや粘膜の回復に時間がかかり、下痢が1〜2週間ほど続くことも珍しくありません。長引くと心配になりますが、元気があり水分がとれていれば、多くの場合は自然に良くなります。下痢が続くこと自体は子どもではよくある経過であり、焦らず家庭でできるケアを続けることが大切です。

下痢止め薬を原則使わない医学的な理由

子どもの下痢は、腸に入り込んだウイルスや細菌、毒素を早く体外へ出すための大切な反応です。しかし、下痢止め薬(止痢薬)は腸の動きを抑えて便を出にくくする作用があるため、この自然な排出を妨げてしまう可能性があります。特に子どもの腸は未熟で、薬の影響を受けやすいため、思わぬ副作用を引き起こすことがあるのです。小児科では、胃腸炎が疑われる多くのケースで下痢止め薬をあえて使わず、整腸剤や水分補給など「自然に治る力を支えるケア」を中心に対応することが基本です。


子どもに下痢止めが推奨されない病態とは

ウイルス性胃腸炎(ロタウイルス、ノロウイルスなど)や細菌性の下痢の場合、下痢を止めてしまうと腸内に原因となる病原体がとどまり、病気の回復が遅れたり、症状が悪化したりすることがあります。また、腹痛や嘔吐が伴う場合に下痢を止めると、腸閉塞(ちょうへいそく)や麻痺性イレウスが隠れてしまい、重症化に気づくのが遅れることもあります。このため、小児科では急性胃腸炎に下痢止めを使用することは原則避けています。

下痢止め薬の成分と作用の仕組み

市販の下痢止め薬には、ロペラミドなど腸の動きを抑える成分が含まれることがあります。これらの成分は、大人には有効な場合がありますが、子どもでは腸の動きを強く抑えすぎることがあり、思わぬ副作用の原因になります。


成分 働き 子どもへの注意点
ロペラミド 腸の動きを抑え、便を出にくくする 腸閉塞・麻痺性イレウスのリスクが高まり、小児では基本的に使用しない
タンニン酸系薬剤 腸の粘膜を引き締め、便を固める 便が固まりすぎて排泄しづらくなることがある

大人向けの市販薬を子どもに誤って使用してしまうケースもあるため、「下痢止め」の表記だけで判断せず、成分を必ず確認することが大切です。

危険なケース(腸閉塞・麻痺性イレウスなど)を避けるために

下痢止め薬を使うことで腸の動きが止まり、便やガスが詰まってしまうと、激しい腹痛、嘔吐、顔色不良などの症状が出ることがあります。腸閉塞や麻痺性イレウスは早急な治療が必要な状態であり、見逃すと命に関わることもあります。特に子どもは症状を細かく訴えられないことが多く、下痢止めで症状が隠れてしまうと危険です。安全に回復していくためにも、子どもに下痢止め薬を使わないことが基本となっています。


安心して使える整腸剤の種類と選び方

子どもの下痢に対して、小児科でよく使用されるのが「整腸剤」です。整腸剤は腸の動きを止める薬ではなく、乱れた腸内環境を整えて、お腹が自然に回復していくのを手助けする役割があります。下痢を無理に止めることはしないため、胃腸炎に伴う下痢にも安心して使える点が特徴です。特に子どもの腸は大人より敏感で、腸内細菌のバランスが崩れやすいため、整腸剤が優しく働きます。病院で処方されるもの、市販で購入できるものがありますが、選ぶポイントを知っておくと安心です。


整腸剤が「下痢を止めない」理由と役割

整腸剤は、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌などの善玉菌を補ったり、腸内のバランスを整えたりすることで、「腸が本来の力を取り戻すのをサポートする薬」です。下痢を止める薬ではないため、便の回数がすぐに減るわけではありませんが、腸内環境が整ってくると徐々に落ち着いていきます。胃腸炎だけでなく、軽い軟便や食べ過ぎによるお腹の不調にも使われることが多く、副作用が少ないことも特徴です。自然に治る力を促すという意味で、子どもには整腸剤が適した選択肢といえます。


小児科で処方される整腸剤の特徴

病院でよく処方される整腸剤には、それぞれ異なる菌が含まれており、腸内環境を整えるアプローチが少しずつ違います。


薬の名前 主な成分 特徴
ビオフェルミン 乳酸菌 乱れた腸内バランスを整え、幅広い下痢に使いやすい
ミヤBM 酪酸菌 腸内の悪玉菌を抑え、整腸作用が安定している
ラックビー ビフィズス菌 赤ちゃんや小さな子にも使われやすい

どの整腸剤が良いかは年齢や症状によって変わるため、医療機関では状況に合わせて選択されます。いずれも「下痢止め」とは異なり、安心して使用できることが特徴です。


市販の子ども用整腸剤を選ぶときのポイント

ドラッグストアで市販薬を選ぶ場合は、必ず「下痢止め成分が入っていないもの」を選ぶことが大切です。ロペラミドなどの成分は子どもには使用できません。選ぶ際は以下を参考にすると安心です。


  • 「乳酸菌」「ビフィズス菌」「酪酸菌」などの記載がある
  • 「子ども用」「小児用」と明記されている
  • 「整腸」「腸内環境を整える」という表現がある
  • 「下痢止め」「止瀉薬」といった文言がない

特に「子ども用ビオフェルミン」などの指定医薬部外品は、小児でも使いやすい整腸剤として広く利用されています。


家庭でできる下痢のケアと過ごし方

子どもの下痢では、薬よりも「家庭でのケア」がとても重要です。腸が回復するまでの間、お尻の皮膚を守る、負担の少ない食事を選ぶ、水分をしっかり補給するなど、毎日の小さな工夫が治りを助けます。下痢の回数が多いと心配になりますが、元気があり水分がとれていれば大きな問題はないことが多いため、焦らず見守ることが大切です。ご家庭でできるケアを丁寧に行うことで、お子さんが少しでも快適に過ごせるようサポートしてあげましょう。


お尻のケア(洗い方・保護のコツ)

下痢便は刺激が強く、子どもの薄い皮膚はすぐに赤くなったり痛みが出たりします。おむつ交換ではこすらず、可能であればシャワーや座浴でやさしく洗うのが最も効果的です。洗った後は、柔らかいタオルで押さえるように水分を取ります。皮膚を保護するため、ワセリンや亜鉛華軟膏を厚めに塗ると、便が触れる刺激を軽減できます。お尻のケアを丁寧にすることで、痛みやかぶれを大幅に防ぐことができ、お子さんが過ごしやすくなります。

食事の進め方と避けたい食べ物

下痢の時は腸が疲れているため、消化に負担の少ない食事を選ぶことが大切です。冷たい飲み物、脂っこい料理、繊維が多い野菜、甘いジュース、乳製品などは腸を刺激し、下痢を悪化させることがあります。おかゆ、うどん、やわらかく煮た野菜、豆腐、白身魚など、消化の良い食事を少量ずつ与えると負担が少なく進められます。急に大量に食べると再び下痢がひどくなることがあるため、回復に合わせてゆっくり戻していくことが大切です。

水分補給と脱水を防ぐための工夫

下痢が続くと体から水分が失われやすく、脱水のリスクが高まります。水分補給には経口補水液が最も適しており、こまめに少量ずつ飲ませるのがポイントです。吐き気がある場合でも、スプーン1杯ずつゆっくり飲ませることで負担が少なくなります。麦茶や白湯も悪くはありませんが、電解質のバランスを整える点では経口補水液が理想的です。おしっこの回数や色をチェックしながら、必要な量が取れているか確認すると安心です。

受診の目安と気をつけたいサイン

子どもの下痢は多くが自然に回復しますが、なかには受診が必要なケースもあります。特に乳児は脱水になりやすく、症状の変化が早いため注意が必要です。「どのくらい様子を見てよいのか」「病院に行くべきか迷う」という声は多く、小児科としても保護者の方に知っておいてほしいポイントがあります。元気があるか、水分がとれているか、おしっこの回数はどうかといった全身の様子を確認しながら、危険なサインを見逃さないことが大切です。

すぐに受診したほうがよい症状

血便が出た、黒っぽいタール状の便が出たなど、明らかに普段と違う便が出た場合は早めの受診が必要です。また、ぐったりしている、目がうつろ、反応が弱いなどの全身状態の悪化は重要なサインです。さらに、おしっこが極端に少ない、唇が乾いている、泣いても涙が出ないなど、脱水を疑う症状がある時も受診を急いでください。下痢だけでなく、激しい腹痛を繰り返したり、嘔吐が続いて水分をまったく受け付けない場合は、早期の判断が安心につながります。


嘔吐・発熱を伴う下痢で注意すべき点

嘔吐と下痢が同時に続くと脱水が急速に進むため注意が必要です。発熱がある場合も、体内の水分がさらに失われやすくなります。特に小さなお子さんは体が小さく、短時間で症状が進むことがあるため、飲めた量やおしっこの回数をしっかり観察しましょう。発熱自体はウイルスと戦っているサインですが、ぐったりしている、呼びかけに反応が弱い、息が荒いといった症状がある場合は迷わず受診を検討してください。

病院に相談するタイミングの考え方

下痢が数日続いていても、元気があり水分がとれていれば、急いで受診せず家庭でのケアを続けて構いません。しかし、「これは大丈夫かな」と少しでも不安に感じる場合は、医療機関に相談することが最も安心です。夜間や休日で受診が難しい場合は、オンライン診療を活用して状況を説明し、受診の必要性を判断してもらう方法もあります。保護者の方が安心して看病できるよう、迷ったときには遠慮せず相談して大丈夫です。


よくある質問

  • Q下痢が続く場合でも、下痢止め薬を使ってはいけませんか?

    A子どもの下痢は体がウイルスや細菌を外に出そうとする反応であり、止めてしまうと回復が遅れたり、症状が悪化したりすることがあります。基本的には下痢止め薬は使わず、整腸剤や水分補給を中心に対応することが安心です。

  • Q整腸剤はどれくらいの期間続ければよいですか?

    A整腸剤は腸内環境を整える薬のため、効果が出るまでに少し時間がかかります。数日から1週間程度使用することが多いですが、症状や年齢によって異なります。心配な場合は医療機関に相談してください。

  • Q下痢があるとき、食べてはいけないものはありますか?

    A冷たい飲み物、脂っこい料理、繊維が多い野菜、甘いジュース、乳製品は腸への負担が大きく、下痢を悪化させることがあります。おかゆやうどん、豆腐など消化の良いものを少量ずつ進めると安心です。

  • Q下痢が1週間以上続いていますが大丈夫でしょうか?

    Aウイルス性胃腸炎では1〜2週間下痢が続くことも珍しくありません。ただし、水分がとれない、脱水のサインがある、体重が減ってきている、血便が出るなどの症状があれば受診を検討してください。

  • Q下痢と一緒に嘔吐が出た場合、どうしたらいいですか?

    A嘔吐があると水分が失われやすく、脱水のリスクが高まります。経口補水液を少量ずつ与える方法が有効ですが、まったく飲めない場合や元気がない場合は早めに相談することが大切です。


まとめ

子どもの下痢は、ウイルスや細菌が体の外へ出ようとする自然な反応であり、多くの場合は薬で無理に止めずに経過を見守ることが大切です。腸が刺激を受けている時期は、お尻のケアや水分補給、消化の良い食事を心がけることで、つらさを和らげることにつながります。整腸剤は腸内環境を整えるサポートとして安全に使えることが多く、無理に下痢を止める薬ではないため、子どもの回復力を妨げにくいというメリットがあります。

また、下痢が続くと保護者の方も心配が大きくなりがちですが、元気があり水分がしっかりとれている場合は、自宅でケアを続けながら様子を見られることがほとんどです。一方で、血便、脱水のサイン、嘔吐が続く、ぐったりしているなど、普段と明らかに違う様子があるときは、早めに医療機関へ相談することが安心につながります。子どもの体調は変化が早いため、不安を感じたときに頼れる相談先を把握しておくことも大切です。

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監修
先生 風間 尚子
風間 尚子先生
小児科専門医
現在、日本赤十字社医療センター非常勤医・ミル訪問クリニック・吉原医院に勤務。小児科専門医、PALS(小児二次救命処置)インストラクターとして救急対応にも精通。

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