子どもの熱が下がらないときの原因と対処・受診の目安を小児科医が解説

お子さんの熱がなかなか下がらないと、とても心配になりますよね。解熱剤を使ってもまた上がってくる、元気はあるけれど数日間高熱が続いている…こうした状況は、子どもの体にとって自然な反応であることも多く、一つひとつの状態を丁寧に見極めることが大切です。本記事では、熱が続くときに考えられる原因、危険なサイン、家庭でのケア、そして受診すべきタイミングを、小児科医の視点でやさしく解説します。焦らず、安心して対応できるよう、一緒に整理していきましょう。
Contents
子どもの「熱が下がらない」とはどういう状態?
子どもの発熱は、体が病原体と戦っているサインです。そのため「熱が下がらない」と感じても、医学的には自然な経過であることも多く、数字だけでは判断できません。たとえば解熱剤を使っても一時的にしか下がらなかったり、数日間高熱が続いたりする場面は、必ずしも異常とは言えません。大切なのは、熱の高さだけでなく、お子さんの全体の状態─水分がとれているか、反応は良いか、いつも通り眠れるか─を総合的に見ることです。この章では、保護者が不安に感じがちな「熱が下がらない状態」を、わかりやすく整理していきます。
熱が下がらない3つのパターン
「熱が下がらない」と一口に言っても、背景には複数のパターンがあります。まず多いのが、発熱が始まって1〜3日ほどの“病気の初期”に見られるケースです。風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症では、この時期は体内でウイルスと免疫が激しく戦っており、熱が上下しながら続くことが一般的です。また、解熱剤によって一時的に下がっても薬が切れると再び上がることがあります。さらに、熱が一度下がっても翌日にまた上がる「二峰性(にほうせい)」の経過を示す病気もあります。こうしたパターンを知っておくと、ひとつの状態に過度に不安を感じずに見守ることができます。
解熱剤を使っても上がる理由(正常な反応)
解熱剤は熱の原因そのものを治す薬ではなく、あくまで“つらさを和らげるための薬”です。そのため、原因となるウイルスや細菌が体内にいる間は、薬の効果が切れると再び熱が上がってしまいます。これは異常ではなく、体が病原体に対抗している自然な反応です。よくあるご相談として「解熱剤が効かないのでは?」という心配がありますが、薬で熱が一時的に下がれば、効いているサインと考えて大丈夫です。むしろ熱の数値よりも、薬で少しでも楽になった結果、眠れるようになったり、水分がとれるようになったりするかどうかが、とても重要な観察ポイントです。
発熱そのものが「防御反応」であること
発熱は、体がウイルスや細菌と戦うための“防御システム”の一つです。体温が上がることで免疫細胞が活発になり、病原体の増殖を抑えることができます。つまり、発熱は体がしっかり働いている証拠でもあり、熱が高いこと自体が危険というわけではありません。もちろん、ぐったりしている・水分が取れないなどの状態があれば受診が必要ですが、数字だけで「重症」と判断せず、全体の様子を見ていくことが大切です。発熱の仕組みを理解しておくことで、熱が続くときにも落ち着いて対処しやすくなります。
熱が続く主な原因|風邪から細菌感染・まれな病気まで
子どもの発熱は多くが感染症によるもので、数日間続くことも珍しくありません。「熱が下がらない=重症」というわけではなく、まずはどのような病気で熱が続きやすいのか知っておくことが大切です。風邪から始まる一般的な感染症から、細菌によるもの、さらにごくまれな疾患まで幅広くあります。症状の組み合わせや経過を見ることで、ある程度の原因が推測でき、落ち着いて見守りや受診の判断がしやすくなります。ここでは、熱が長引く代表的な原因についてわかりやすく解説します。
ウイルス性感染症で熱が続く仕組み
子どもがかかる発熱の多くはウイルス性です。風邪(ライノウイルス・RSウイルスなど)、インフルエンザ、アデノウイルス(プール熱)などが代表的で、これらでは通常 3〜5日ほど高熱が続くことがよくあります。 免疫がウイルスを排除するまで時間がかかるため、熱が上がったり下がったりする経過も自然なものです。また、突発性発疹のように、解熱後に発疹が出て初めて診断が分かる疾患 もあり、熱の推移だけでは判断できないこともあります。元気が保てていれば、多くは自然に回復しますが、症状が強い場合は受診も検討しましょう。
細菌感染症が疑われるサイン
ウイルス感染症より重くなりやすいのが細菌感染症です。抗生物質が必要になるケースが多く、特徴的な症状を伴うことがあります。
代表的な細菌感染症と特徴の例:
| 病名 | 特徴的な症状の例 |
|---|---|
| 溶連菌感染症 | 喉の強い痛み、高熱、赤い発疹、舌のブツブツ |
| 中耳炎 | 耳を触る、痛がる、機嫌が悪い |
| 肺炎 | 咳が強い、息が苦しそう、呼吸が速い |
| 尿路感染症(乳幼児に多い) | おしっこの時に泣く、尿のにおいが強い、元気がない |
ウイルス性との違いは、ぐったりしている・呼吸が苦しい・局所の強い痛み など、症状の強さがはっきりしていることが多い点です。こうしたサインがある場合は早めの受診が必要です。
川崎病など発熱が長引く特別なケース
まれではありますが、ウイルスや細菌以外の病気が原因で発熱が5日以上続くことがあります。その代表が 川崎病 です。これは血管に強い炎症が起きる疾患で、早期診断と治療が重要になります。
川崎病が疑われる特徴(※診断基準に基づく代表的な症状)
- 5日以上続く高熱
- 目の充血
- 唇の赤み、舌が赤くブツブツする(いちご舌)
- 手のひらや足の裏が赤くなる
- 首のリンパ節が腫れる
- 発疹が出る
発熱の経過とともに上記の症状が揃ってくる時には川崎病の可能性も考えられます。「元気・水分・呼吸」に加え、こうした特徴的な症状が出てきていないかにも注意しておくと良いでしょう。
危険な症状の見極め方|すぐ受診すべきサイン
子どもの熱が続くとき、最も大切なのは「重症化のサインを見逃さないこと」です。熱そのものは体の防御反応であり、数字だけでは危険かどうかは判断できません。しかし、熱が続く中で現れる“いつもと違う兆候”には注意が必要です。ここでは、夜間でも受診すべき症状と、翌日の受診でよい症状を分かりやすく整理します。保護者の方が迷いや不安を感じやすい部分だからこそ、小児科医としての視点から安心できる判断基準をお伝えします。
夜間・休日でも受診した方がよい状態
次のような症状がある場合は、病気が重くなっているサインの可能性があり、時間帯に関わらず受診が必要です。
- 生後3か月未満の38℃以上の発熱
- ぐったりしている、反応が弱い、刺激しないと起きない
- 呼吸が苦しそう(肩で息をする、息が速い、ゼーゼーする)
- 水分がとれない・吐いてしまう・半日以上尿が出ない
- 顔色が悪い、唇が紫〜土気色
- けいれん(ひきつけ)を起こした
これらは、脱水や細菌感染症などが進んでいる可能性があり、早急な診察が必要になります。特に乳児では悪化が早いため、迷ったときは受診を優先しましょう。
翌日の受診でよいケース
緊急性がない場合は、無理に夜間救急を受診する必要はありません。夜間の検査や治療は限られることもあり、翌日のかかりつけ医で丁寧に診てもらうほうがよいこともあります。
例えば次のような状態です:
- 高熱(38℃以上)はあるが、機嫌が比較的よい
- 水分がしっかり取れている
- 寝つけており、大きくぐったりしていない
- 咳や鼻水など「いつもの風邪」に近い症状
ただし 高熱が3日以上続いている場合 は、一度受診して診察を受けることをおすすめします。
熱以外の症状から見る緊急性の判断
発熱に加えて、ほかの症状がどう現れているかも大切な判断材料です。特に次の症状は注意が必要です。
- 激しい咳が続き呼吸が苦しそう(肺炎の可能性)
- 耳を何度も触る・泣く(中耳炎の可能性)
- 熱以外の症状がなく比較的元気なのに、熱が続く(尿路感染症の可能性)
熱の高さに関係なく、子どもの様子が“普段と明らかに違う”と感じた場合は、早めに医療機関へ相談してください。保護者の違和感は意外と正確なサインとなります。
家庭でのケア|熱が続くときに保護者ができること
子どもの熱が続くと、保護者の方は「早く楽にしてあげたい」と気持ちが焦りがちです。しかし、発熱の多くは体が病原体と戦っているサインであり、家庭でのケアによってお子さんが体力を保ちながら回復に向かえることが大切です。数字だけにとらわれず、“水分・元気・呼吸”の3つを軸に観察しながら、お子さんが過ごしやすい環境を整えてあげましょう。ここでは、熱が続くときに家庭で行えるケアを順を追って紹介します。
水分補給と脱水予防のポイント
発熱時は汗や呼吸で水分が失われやすく、知らないうちに脱水が進むことがあります。水分補給は最も重要なケアであり、特別な飲み物でなくても構いません。麦茶や湯冷まし、子ども用のイオン飲料などを、少量ずつこまめに与えることが基本です。特に、普段よりおしっこの量が少ない、口の中が乾いている、涙が出にくいなどの様子がある場合は、脱水のサインである可能性があります。水分を飲めたかどうかは、熱の高さよりも大切な観察ポイントです。
暖めるべき時・涼しくするべき時の見分け方
熱の上がり始めと上がりきった後では、お子さんが快適に感じる環境が大きく変わります。寒気や震えがあるときは体が熱を上げようとしているため、毛布を1枚追加したり、靴下を履かせたりして、保温することで楽になります。
一方、顔が赤く手足が熱いときは体が熱を逃がそうとする段階にあり、厚着をするとかえって苦しくなります。薄手の服にしたり、布団を軽くするなどの調整をすることで、熱がこもるのを防ぐことができます。冷却ジェルシートは熱がこもることもあるので気持ちよさを目的に使う程度で十分です。
解熱剤の正しい使い方(使う目安と注意点)
解熱剤は発熱の原因を治す薬ではありませんが、お子さんがつらくて眠れなかったり、水分がとれなかったりする場合には役立ちます。目安としては38℃以上の発熱でつらそうなとき、ぐずって眠れないときなどが使うタイミングです。
逆に、熱が高くても元気がある・食事や水分がとれているといった場合は、無理に使用する必要はありません。使用するときは必ず子ども用のアセトアミノフェンなどを年齢や体重に沿って適切に使い、頻回の使用や大人用の薬の流用は避けてください。
熱が長引くときの「よくある勘違い」
子どもの熱が数日続くと、つい「長すぎるのでは?」「何か重大な病気では?」と不安が大きくなるものです。しかし、発熱の多くは自然な経過であり、誤った思い込みによって必要以上に心配したり、逆に大切なサインを見逃してしまうこともあります。この章では、外来でよくご相談いただく“ありがちな勘違い”を取り上げながら、正しい見方をお伝えしていきます。知識があることで、家庭での対応が落ち着いて行えるようになります。
熱の数字だけに注目しすぎることの危険
体温の数字はどうしても目につきやすく、「39℃だから危険」「37.5℃に下がったから安心」と考えがちです。しかし、**子どもの発熱で最も重要なのは“数字そのもの”ではなく、“お子さんの様子”**です。たとえ39℃の高熱でも、機嫌がよく水分がとれているなら、体力が保たれている証拠であり、大きく心配しなくてよい場面も多くあります。一方で、熱がそれほど高くなくても、ぐったりしている、反応が弱いといった様子があれば、受診が必要なケースです。数字に一喜一憂せず、全体を観察することが大切です。
熱が高い=重症とは限らない理由
熱が高いと「重症では?」と心配になるのは自然なことですが、実は**熱の高さと病気の重さは必ずしも比例しません。**例えばインフルエンザでは40℃近くの熱が出ることもありますが、ほとんどは自然に回復します。一方、肺炎や尿路感染症のような細菌感染は熱がそれほど高くなくても体調が悪くなることがあります。子どもの免疫はまだ発達途中のため、感染症に対して熱を出しやすい傾向があります。熱が高いからといって、すぐに重症と決めつける必要はありません。
冷却ジェルや民間療法の誤解
発熱時に冷却ジェルシートを貼ったり、保冷剤を当てたりすることがありますが、これらはあくまで“気持ちよさを感じるためのケア”であり、熱そのものを下げる効果はほとんどありません。冷感材により冷たさを感じるものの、ジェルに熱がこもって逆効果なこともあります。一般的な室温隊服の調整、首や足の付け根など太い血管の通っている箇所を冷やすなど、保護者が安心して行えるケアを知っておくと、無理のない対応ができます。
いつまで様子を見る?受診のタイミングと検査の考え方
子どもの発熱は、ほとんどがウイルス感染によるもので、数日かけて自然に良くなるケースが多くあります。しかし「どこまで自宅で様子を見てよいのか」「どのタイミングで受診すべきか」は迷いやすいポイントです。受診の目安を知っておくことで、必要なときに適切な医療を受けられ、逆に急がなくてもよい場面では落ち着いて対応できます。また、検査は“いつ受けたか”によって結果が大きく変わるため、その仕組みを知っておくことも重要です。ここでは、小児科での判断ポイントをわかりやすくまとめます。
受診が必要な症状の見極め方
発熱の高さだけでは受診の必要性は判断できません。最も重要なのは、お子さんの全身状態です。ぐったりしている、水分が飲めない、反応が弱いといった状態は、体力の消耗や重症化のサインであり、熱の数字よりはるかに重要な情報となります。
反対に、熱が高くても笑顔が見られたり、遊べる余裕があったり、しっかり水分がとれている場合は、急いで夜間救急を受診する優先度は低くなります。また、呼吸が苦しそう、唇が青い、けいれんを起こした場合などは迷わず受診が必要です。普段のお子さんと比べて「明らかに様子が違う」場合は、慎重に判断しましょう。
高熱が続くときに考慮する病気(感染症・川崎病など)
3〜4日以上高熱が続く場合、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染だけでなく、細菌感染症の可能性も考慮します。中耳炎、肺炎、尿路感染症などは抗生物質での治療が必要になることがあり、適切な診断が欠かせません。
また、5日以上発熱が続き、発疹、目の充血、唇の赤み、手足の腫れなどがある場合は、まれですが川崎病の可能性もあるため、早めの受診が必要です。長引く発熱には理由があるため、症状の組み合わせや経過を含めて、医師が総合的に判断します。
検査を行うタイミングと「陰性=安心」ではない理由
インフルエンザやRSウイルス、アデノウイルスなどの迅速検査は、発症早期すぎるとウイルス量が少なく“陰性”と出てしまうことがあります。特に発熱から6〜12時間以内は、正確性が低くなるケースが多く、タイミングを誤ると必要な診断につながらないことがあります。そのため、小児科では発熱から12〜24時間ほど経ってからの検査を推奨することが一般的です。また、陰性であっても症状が強ければ医師が慎重に経過をみる必要があります。“陰性=大丈夫”とは言い切れないことを知っておくと、受診時の不安が軽減されます。
よくある質問
Q熱が3日続いていますが、受診したほうがいいですか?
A高熱が3日以上続く場合は、一度小児科で診てもらうことをおすすめします。多くはウイルス感染によるものですが、中耳炎や肺炎、尿路感染症など細菌性の病気が隠れていることもあります。元気がある場合でも、早めに診察を受けることで必要な治療につながります。
Q解熱剤を使うと病気が長引いたりしませんか?
A解熱剤は病気の原因を治す薬ではありませんが、使ったことで治りが遅くなることはありません。高熱でつらそうなとき、眠れないとき、水分がとれないときの「つらさを和らげる目的」で使用するものです。元気で飲食できている場合は必ずしも使う必要はありません。
Q熱が上がったり下がったりを繰り返すのは大丈夫?
A子どもの発熱では、1日の中で熱が上下するのは自然な反応です。特に夕方〜夜に高くなりやすく、朝に下がることも珍しくありません。上下すること自体より、機嫌・水分摂取・呼吸の様子など「全体の状態」を見ることが大切です。
Qインフルエンザの陰性でしたが、熱が高いです。受診し直すべき?
A発熱してから早いタイミングで検査すると、ウイルス量が少なく陰性になることがあります。症状が強い場合や、周囲で流行している場合は、12〜24時間ほど経ってから再検査することがあります。心配な場合は遠慮なく小児科に相談してください。
Q熱が下がったのに、また上がってきました。よくあること?
A一度解熱しても、体がまだ完全に回復していないと再び熱が上がることがあります。多くはウイルス感染でみられる経過ですが、元気がない・咳が悪化している・機嫌が悪いなど他の症状が強い場合は受診を検討してください。
まとめ
お子さんの熱が下がらないときは、数字だけにとらわれず、全体の様子を丁寧に観察することが最も大切です。発熱は体が病原体と戦っているサインであり、3〜4日続くことも珍しくありません。まずは水分がしっかりとれているか、機嫌はどうか、呼吸が苦しそうではないかを目安に、落ち着いてサポートしてあげてください。また、ぐったりしている、反応が弱い、呼吸が乱れている、乳児の高熱などの緊急性が高いサインがある場合は、夜間でも受診が必要です。
発熱の経過は病気によってさまざまですが、保護者の方が不安を抱えながら一人で判断し続ける必要はありません。気になる症状があれば、早めに医師の診察を受けることで安心につながります。
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