子どもの熱が夜になると上がるのはなぜ?原因と家庭での対応・受診の目安を小児科医が解説

「日中は元気そうだったのに、夜になると急に熱が上がる」「寝る前に測ったらまた高くなっていて不安…」。そんなご相談を、小児科では毎日のようにお受けします。熱そのものよりも、「夜」「急に」「繰り返す」という状況が重なると、保護者の方の心配も大きくなりますよね。
実は、子どもの体温にはもともと「昼と夜で変動しやすい仕組み」があり、そこにウイルスや細菌の感染・日中の疲れが重なることで、夕方〜夜に熱が高くなることがよくあります。夜に熱が上がるからといって、必ずしも重い病気というわけではありませんが、注意が必要なサインも存在します。
この記事では、小児科医の立場から「なぜ夜になると熱が上がりやすいのか」という体の仕組みと、よくある原因となる病気、家庭でできる具体的なケア、救急受診が必要な状態と翌日の受診でよい状態の目安をわかりやすくお伝えします。読み終えるころには、「どんなときに様子を見てよくて、どんなときに受診したらよいか」がイメージしやすくなることを目指しています。
Contents
夜になると熱が上がると感じる理由
夜に熱が上がるのは、決して珍しいことではありません。子どもの体は大人よりも体温変化の影響を受けやすく、夕方から夜にかけての時間帯はもともと「体温が高くなりやすい仕組み」が働いています。そこにウイルス感染や日中の疲れが重なることで、発熱がより目立つようになります。夜になると急に上がったように感じても、その多くは体の自然なリズムや免疫の働きによるものですので、まずは落ち着いてお子さんの様子を観察することが大切です。
昼と夜で体温が変動する「サーカディアンリズム」とは
人間の体温は1日中ずっと同じではなく、早朝が最も低く、夕方〜夜に最も高くなる「サーカディアンリズム(体内時計)」があります。これは健康な時でも同じです。発熱時にはこの変動が強調され、夕方から夜にかけて体温がさらに上がって見えることがあります。特に子どもは体温調節が未熟なため、大人よりもこのリズムがはっきり出る傾向があります。
ホルモンの働きで夜に炎症反応が強まりやすい
日中は「コルチゾール」という炎症を抑えるホルモンが比較的多く分泌されます。しかし夜になるとこのホルモンの分泌は減少し、体を守る免疫反応(炎症)が強まりやすくなります。その結果、同じ感染症でも夜に熱が上がりやすく、「急に悪化したように見える」ことが起こります。これは体がウイルスや細菌と戦っているサインで、必ずしも危険な状態を示しているわけではありません。
日中の疲れが夕方以降に出て体温を押し上げることも
熱があっても、子どもは日中に少し元気になると遊んだり動き回ったりしてしまうことがあります。こうした活動の疲れが夕方にどっと出ることで、体温がさらに上がりやすくなります。「夜はに高熱に見えるのに、朝には下がっている」という現象もこの影響で起こりやすく、翌日また無理をすると夜に再び上がる…というサイクルになることもあります。
夜に発熱しやすい時に考えられる病気
夜に熱が上がるころとはよくあり、必ずしも特殊な病態ではありません。。多くの場合、子どもが日常的にかかりやすいウイルス感染症でみられる、ごく自然な体の反応です。ただし、中には受診が必要な感染症もありますので、特徴を知っておくと安心です。
風邪やウイルス感染でよくみられる体温のパターン
子どもの発熱の原因として最も多いのは「風邪(ウイルス性上気道炎)」です。ウイルス感染では、体がウイルスと戦う過程で発熱し、次のような体温推移になることがよくあります。
【ウイルス感染でよくある体温の流れ】
| 時間帯 | 体温の特徴 | 理由 |
|---|---|---|
| 早朝 | やや下がりやすい | 体温リズムで基礎体温が低い |
| 日中 | 比較的安定 | 活動で体温が上がるが大きな変化は少ない |
| 夕方〜夜 | 上がりやすい | 体内時計+ホルモン低下+疲れが重なる |
夜に熱が高くなっても、朝に下がる・日中は比較的元気に見えることがありますが、これは多くのウイルス感染で自然とみられる現象です。ただし 「元気さ」がしっかり保たれているか が判断のポイントになります。
インフルエンザ・突発性発疹などでの夜間発熱の特徴
風邪以外にも、子どもがかかりやすい感染症には夜間発熱を伴うものがあります。
◼️ インフルエンザ
- 突然の高熱(39℃前後)
- 強い倦怠感
- 頭痛、関節痛、咳
夜だけでなく、発熱の強さそのものが特徴で、全身症状がはっきり出ます。
◼️ 突発性発疹(乳幼児によくみられる)
- 3日程度の高熱が続く
- 解熱後に上半身を中心に細かい発疹
- 機嫌が悪くなることが多い
こちらも夜に熱が上がりやすく見えますが、解熱後に発疹が出るのが特徴的です。
◼️ 胃腸炎(ウイルス性)
- 発熱+下痢や嘔吐
- 水分がとれないと脱水に注意
夜間に嘔吐が重なると不安が強くなりやすい感染症です。
受診が必要な感染症のサインとは
以下のようなサインがある場合は、単なる風邪ではない可能性があり、受診を検討する目安になります。
- 熱が4日以上続く
- 水分がとれず尿量が少ない
- 呼吸が速い・息苦しそう
- 耳を痛がる(中耳炎の可能性)
- 嘔吐や下痢を繰り返す(胃腸炎・脱水リスク)
- 発疹が増えて痛がる・元気がない
- 普段と様子が明らかに違う
夜間に熱が高くなるだけで判断するのではなく、お子さんの全体の様子と、症状の組み合わせが大切です。
家庭でできる夜間の正しいケア
夜に熱が上がると「このままもっと上がったらどうしよう」と心配になりますよね。まず大切なのは、熱の高さだけにとらわれず、お子さんがつらそうかどうかを丁寧に観察することです。夜間は救急外来も混雑しやすく、必要以上の受診は負担になるため、家庭でできるケアを知っておくと安心して対応できます。ここでは、夜に熱が上がったときに保護者の方ができる基本的なケアをわかりやすくまとめます。
水分補給と脱水を防ぐための工夫
発熱時は体の中から水分が失われやすく、夜の寝ている時間帯は特に気づきにくくなります。のどが渇いたと言えない年齢のお子さんでは、普段よりも少し意識して水分をとらせてあげると安心です。湯冷ましや麦茶のような刺激の少ない飲み物で、少量ずつこまめに飲ませることがポイントです。嘔吐がある場合は、一度にたくさん飲ませると逆に吐きやすくなるため、ひと口ずつゆっくり与えると体が受け入れやすくなります。
服装・布団の調節と「熱の上がり始め/上がりきった後」の違い
発熱時の服装のポイントは、「その時の体の状態に合わせて調節する」ことです。熱の上がり始めは寒気が出るため、手足が冷たく震えていることがあります。この段階ではまだ体温が上がっている途中なので、薄手の毛布を一枚かけるなどして温めてあげると、お子さんが楽になります。
一方、熱が上がりきると顔が赤くなり、手足が熱くなってきます。この時は体の熱を逃がす工夫が必要で、厚着や掛けすぎはかえって熱がこもりやすくなります。汗をかいていれば、濡れた肌着を着替えさせ、風通しのよい薄手の服にしてあげると快適に過ごせます。
解熱剤を使うタイミングと注意点
解熱剤(熱冷まし)は「熱を下げる薬」ではなく、「つらさを和らげる薬」と考えると判断しやすくなります。熱が高くても、お子さんがよく眠れていて水分もとれている場合は、必ずしも使用する必要はありません。
使うか迷うときは、お子さんが苦しそうかどうかを基準に考えてみてください。ぐずって眠れない、水分がとれない、顔をしかめて明らかにしんどそうにしている場合は、解熱剤が楽にしてくれます。使用後に一時的に熱が下がっても、感染症そのものが治ったわけではないため、翌日の経過も必ず見るようにしましょう。
夜の発熱で救急に行くべきか迷ったとき
夜に熱が高くなると、保護者の方が最も悩むのが「今すぐ受診すべき? 朝まで待って大丈夫?」という判断です。実際、小児科では“熱の高さ”よりも“お子さんの様子”のほうが重視されます。夜間は通常の診療が受けられない時間帯であるため、不要な受診でお子さんの負担が増えることもあります。一方で、早めの受診が必要な状態も確かに存在します。ここでは、迷ったときに参考になる考え方と、緊急度を見極めるポイントを整理してお伝えします。
緊急受診が必要な症状(けいれん・呼吸異常・生後3か月未満など)
次のような症状がみられるときは、熱の高さに関係なくすぐに受診を検討してください。明確な異常サインがある場合、夜間であっても救急受診が優先されます。
- 生後3か月未満で 38.0℃ 以上の発熱
- 呼びかけに反応しづらい、ぐったりしている
- 息が速い、肩で息をしている、小鼻がピクピクする
- けいれん(ひきつけ)を起こした
- 顔色や唇が非常に悪い
- 半日以上尿が出ない・水分がとれない
- 嘔吐や下痢を繰り返し脱水が疑われる
これらは「緊急性の高い症状」で、風邪とは異なる重い病気が隠れている可能性があります。迷う場合はためらわず医療機関へ相談してください。
自宅で様子をみられる状態の見極め方
一方で、夜間救急に行かなくてもよいケースの特徴も押さえておくと、慌てず冷静に判断できます。ポイントは、「お子さんがつらくなさそうか」です。
たとえば、熱は高くても次のような状態であれば、夜間に急いで受診する必要は低いと考えられます。
- 水分が飲めている
- あやすと笑う、保護者の声にしっかり反応する
- 咳や鼻水などいつもの風邪と似た症状
- 寝つければ眠れている
こうした様子が保たれていれば、家庭でのケアを続けながら翌日の日中に小児科を受診するのが安心です。「朝に熱が下がって元気そうに見えても、一度診てもらう」というのが小児科としての推奨です。
翌日の小児科受診を検討するケース
緊急性は高くないものの、翌日には小児科で診察しておく方が安心な状態もあります。夜に無理をして救急を受診するより、明るい時間にしっかり診てもらうほうが適切な診断につながります。
代表的なケースは次のようなものです。
- 熱が 38〜39℃ で続き、夜は少ししんどそう
- 元気はあるが、食欲が落ちてきている
- 咳や鼻水が強くなってきた
- 耳をよく触る・痛がる(中耳炎の可能性)
- 発疹が出てきた、または増えている
- 発熱の原因がわからず不安が強い
翌日、小児科で診察を受けることで病気の経過が確認しやすく、お子さんの負担も少なくて済みます。
夜間に不安が強いときの過ごし方
夜はどうしても不安が大きくなりやすい時間帯です。日中なら気軽に小児科へ相談できるのに、夜間は頼れる先が限られ、ちょっとした変化でも「このまま悪化したらどうしよう」と考えてしまいますよね。そんな時こそ、保護者の方が落ち着いて対応できるよう、夜間ならではの過ごし方を知っておくと安心です。ポイントは「無理をさせない」「様子の変化に気づける状態を保つ」「必要以上に心配しすぎない」の3つです。
睡眠や休ませ方、保護者が気をつけたいポイント
発熱していると、体力を使いやすく普段より疲れやすくなります。夜はしっかり休ませることが回復の大切なステップです。うまく眠れない時は、抱っこや添い寝で安心させてあげるとリラックスしやすくなります。ただし、うつぶせになってしまうと呼吸がしづらくなることがあるため、できるだけ自然な仰向けや横向きの姿勢で寝かせてください。
保護者の方も、長時間の見守りで疲れてしまうと判断が鈍りやすくなります。安全を確保しつつ、交代で休憩をとるなど、無理のない体勢で見守ることが大切です。
体温測定の頻度と「測りすぎ」の注意
「熱が上がっていないか心配で、何度も測ってしまう」というご相談は多いです。体温測定は“必要なタイミングで”行えば十分で、頻繁に測ることでかえって不安が強くなることがあります。
目安としては、
- 寝る前
- 夜中に明らかに様子が変わった時
- 早朝
など、状況に応じた回数にとどめましょう。数値ばかりに気を取られるのではなく、呼吸の様子や元気さといった「実際の状態」を見ることの方がずっと重要です。
家庭で控えたほうがいい対応
心配のあまり、つい頑張りすぎてしまう対応がいくつかあります。次のような行動は避けたほうが安心です。
- 熱が高いからといって過剰に冷やす(寒気がある段階では逆効果)
- 厚着・布団のかけすぎで熱をこもらせる
- 無理に食べさせる、無理に起こして何度も体温を測る
- 元気があるのに深夜に救急へ急いで向かう
これらはお子さんの体力を余計に奪ったり、不安を強めてしまう原因になります。迷ったときは、「今、つらそうかどうか」を基準にシンプルに判断しましょう。
よくある質問
Q夜だけ熱が高くて朝に下がるのは大丈夫?
A夜に高く、朝に下がるという体温のパターンは、子どもの感染症では非常によく見られます。体内時計の働きや日中の活動による疲れで、夕方〜夜に体温が上がりやすくなるためです。朝に下がって元気そうに見えても病気が治ったわけではないので、翌日の小児科受診をおすすめします。急にぐったりしたり、水分がとれない様子があれば受診を急いでください。
Q38℃台が続くけれど元気な場合は受診すべき?
A元気があり、水分がとれていて、呼吸に問題がなければ、深夜に慌てて受診する必要はありません。翌日、日中に小児科で診てもらえば安心です。ただし、発熱が4日以上続く場合や、咳・鼻水・下痢などの症状が明らかに悪化している場合は、中耳炎や肺炎など別の病気が隠れていることもあるため、受診して確認しましょう。
Q解熱剤を使うと病気が長引くって本当?
A解熱剤が病気を長引かせることはありません。解熱剤はあくまで「つらさを和らげる薬」であり、ウイルスや細菌そのものに作用するものではありません。熱が高くて眠れない、水分がとれないなどの“つらそうな様子”がある場合は、使うことで回復に必要な休息がとりやすくなります。ただし、使用後に一時的に熱が下がっても、治ったわけではないため経過をみることが大切です。
Q寝ていても水分は飲ませたほうがいい?
A無理に起こす必要はありませんが、いつもより汗をかいていたり、呼吸が速くて脱水が心配なときは、軽く声をかけて飲めるか確認してみてもよいでしょう。深い眠りを妨げるほどの水分補給は不要です。起きたタイミングで、湯冷ましや麦茶など負担の少ない飲み物を少量ずつ与えると安心です。
Q熱性けいれんが心配な時に家庭でできることは?
A熱性けいれんは、38℃以上の発熱時に起こることがあり、多くは5分以内に自然に収まります。けいれんを起こした場合は、まず安全な場所に寝かせ、口に物を入れたり揺さぶったりしないことが大切です。すぐに医療機関へ連絡し、けいれんの時間と様子を落ち着いて伝えられると診療に役立ちます。けいれんが心配なご家庭では、事前にかかりつけ医に相談し対策を共有しておくと安心です。 解熱剤とけいれんの関連はなく、けいれんを心配して使用を避ける必要はありません。
Q家での冷やし方はどこを冷やすとよい?
A熱が上がりきって手足が温かくなったタイミングで、脇の下や太ももの付け根など太い血管が通る部分を軽く冷やすと体が楽になります。ただし、寒気がある段階で冷やすのは逆効果です。汗をかいている場合は、濡れた服を着替えさせ、風通しをよくしてあげることが優先です。
Q夜間に嘔吐を伴う発熱は何を疑う?
Aウイルス性胃腸炎でよく見られる組み合わせですが、脱水のリスクが高まりやすいため注意が必要です。水分をとるたびに吐いてしまう、顔色が悪い、尿が極端に少ないなどの症状があれば受診を急いでください。一方で、少量ずつなら飲めており元気も比較的保たれている場合は、翌日の日中の受診で問題ありません。
まとめ
夜になると子どもの熱が上がるのは、体内時計による体温の変動や、日中の疲れ、夜に弱くなるホルモンの働きなど、体の仕組みが大きく関わっています。そのため、必ずしも重い病気を意味するわけではありません。しかし、感染症の種類によっては夜に熱が上がりやすいものもあり、お子さんの**「元気さ」「水分がとれているか」「呼吸が苦しそうではないか」といった全体の状態を丁寧に見る**ことがとても大切です。
家庭では、水分補給や服装の調整、適切な解熱剤の使用など、夜でも安全にできるケアがあります。特に夜間は不安が強くなりやすい時間帯ですが、**“数値”より“様子”**を見ることを意識すると、必要以上に心配することが減り、落ち着いて対応しやすくなります。また、夜間に受診すべき症状と、翌日の小児科を待てる症状を知っておくことで、適切な判断ができるようになります。
子どもの体調は変化が早く、保護者の方が一番不安を抱えやすい場面でもあります。
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