感染症

RSウイルス感染症と風邪の違い|子どもの症状と重症化を防ぐポイントを小児科医が解説

RSウイルス感染症と風邪の違い|子どもの症状と重症化を防ぐポイントを小児科医が解説
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RSウイルス感染症は、乳幼児に多くみられる呼吸器の感染症で、一般的な風邪と似た症状から始まります。しかし、特に生後6か月未満の赤ちゃんでは、咳や呼吸の症状が悪化しやすく、細気管支炎や肺炎に進行することがあるため注意が必要です。

この記事では、RSウイルスと風邪の違い、子どもの症状の見分け方、家庭でのケアや受診の目安を、小児科医の立場からわかりやすく解説します。焦らず落ち着いて見守りながら、必要なタイミングで医師の診察を受ける判断ができるようサポートします。

RSウイルス感染症とは?風邪との違いを解説

RSウイルス感染症は、呼吸器に炎症を起こすウイルス感染症のひとつです。多くの子どもが2歳までに一度は感染すると言われており、特に乳幼児期には重症化するリスクが高いことが特徴です。ここでは、RSウイルスの特徴や流行時期、一般的な風邪との違いを整理して解説します。

RSウイルス感染症の原因と流行時期

RSウイルスは、主に「飛沫感染」や「接触感染」によって広がります。感染力が非常に強く、保育園・幼稚園などで集団感染が起こることもあります
例年、秋から冬にかけて流行しますが、近年では初夏(6〜7月)から増え始める傾向も見られます。これは季節性の変化やマスク着用の減少など、社会的な環境変化の影響も関係していると考えられています。

比較項目 一般的な風邪 RSウイルス感染症
主な原因ウイルス ライノウイルスなど多数 RSウイルス
主な症状 鼻水・咳・微熱 鼻水・発熱・咳・呼吸のゼーゼー音
重症化リスク 低い 乳児では細気管支炎・肺炎の危険
流行時期 冬中心 秋〜冬(近年は夏前後にも)

このように、RSウイルスは呼吸器の奥(気管支・肺)まで炎症を起こしやすいのが特徴で、特に乳児では注意が必要です。

一般的な風邪との違いと見分け方

風邪とRSウイルス感染症は、初期症状がほぼ同じため区別がつきにくいものです。
しかし、経過の長さや咳・呼吸の変化に注目すると違いが見えてきます。

  • 風邪は多くの場合、数日で軽快する
  • RSウイルスは咳や鼻水が1〜2週間続くことがある
  • 咳が次第に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と重くなり、呼吸が速く浅くなる

また、呼吸のたびに胸のあたりがペコペコとへこむ「陥没呼吸」や、顔色が悪くなる場合は下気道炎(細気管支炎)を起こしている可能性があります。こうした症状が出た場合は、早めに小児科での診察が必要です。

子どもがかかりやすい理由

RSウイルスは、大人や年長児にも感染しますが、多くの場合は「軽い風邪」で済みます。
一方で、乳幼児(特に生後6か月未満)は気道が細く、粘液や痰の影響を受けやすいため、呼吸が苦しくなりやすい傾向があります。

また、早産児や心臓・肺に基礎疾患のある子どもでは重症化しやすいため、家庭でも呼吸の速さ・食事や水分のとり方・機嫌の変化をこまめに観察することが大切です。

特に「ミルクを半分も飲めない」「おしっこの回数が極端に減っている」などのサインがあれば、夜間でも早めに受診を検討してください。

子どものRSウイルス感染症の症状と経過

RSウイルス感染症は、初期は風邪と同じような症状から始まるため、家庭では気づきにくいことがあります。
しかし、数日のうちに咳や呼吸が悪化し、下気道(気管支や肺)に炎症が広がるケースもあります。ここでは、発症の流れと重症化のサインを段階的に整理します。

初期症状(鼻水・咳・発熱)の特徴

感染から発症までの潜伏期間はおよそ2〜8日(平均4〜6日)。発症すると、まずは次のような軽い風邪症状が現れます。

  • 鼻水が増える
  • 咳が出始める
  • 38〜39℃の発熱が1〜2日続くこともある

この段階では、一般的な風邪とほぼ同じため見分けるのは困難です。
ただし、咳の質や呼吸の速さが次第に変化してくるようであれば注意が必要です。

重症化しやすい呼吸器症状のサイン

発症から5日目ごろが症状のピークです。
特にこの時期に、呼吸が苦しそう、咳が強くなるなどの変化が見られた場合は、細気管支炎や肺炎の初期段階かもしれません。

注意してほしいサイン 観察のポイント
ゼーゼー・ヒューヒューという音(喘鳴) 呼吸のたびに音がする、夜間に悪化
陥没呼吸 鎖骨の間や肋骨の下が呼吸のたびにへこむ
鼻翼呼吸 鼻の穴がピクピク動く
顔色が悪い・唇が青白い 酸素不足(チアノーゼ)のサイン
水分が取れない・おしっこが減る 脱水や全身状態の悪化

こうした症状は、夜間や早朝に急に悪化することがあります。
特に乳児では体力が少ないため、ためらわず医療機関での診察を受けることが大切です。

細気管支炎・肺炎に進行するケース

RSウイルスは、上気道だけでなく下気道にまで炎症を起こすことがあります。
この状態を「細気管支炎」といい、さらに進むと肺炎を併発することもあります。
特徴的な症状としては、

  • 咳き込みが強くなり、息をするたびにゼーゼーする
  • 呼吸が速く浅く、胸の動きが激しい
  • ミルクや食事を受け付けず、ぐったりしている

こうした場合は、入院による酸素投与や吸引治療が必要となることもあります。
特効薬はありませんが、早めの対応によって多くの子どもが1〜2週間で回復します。

重症化を防ぐための家庭でのケア

RSウイルス感染症には特効薬がないため、家庭でのケアがとても重要です。
目的は、呼吸を少しでも楽にし、水分をしっかり補うこと。症状がつらいときほど、「できる範囲で体を休ませる」ことを意識してみましょう。

水分補給と呼吸を楽にする工夫

発熱や速い呼吸により、体から水分が失われやすくなります。
まずは脱水を防ぐことが何より大切です。

  • 飲ませ方の基本は「少量をこまめに」
  • 乳児の場合は哺乳の量を減らして授乳回数を増やす
  • 水分やミルクにとろみをつけ、むせにくくする湯冷まし、麦茶、乳幼児用イオン飲料(アクアライトなど)を活用
  • 吐き戻しや咳き込みがある場合は、スプーン1杯ずつ与える

また、呼吸がしやすい体勢を取らせるのも効果的です。抱っこの姿勢や、少し上体を起こす角度にすると胸の圧迫が軽くなり、呼吸が楽になります。眠るときは、枕を少し高くして傾斜をつけるとよいでしょう。

鼻水・咳への対処法と加湿のポイント

鼻づまりは呼吸を妨げ、ミルクや水分をとるのを難しくします。
こまめに鼻水を吸ってあげると、呼吸がぐっと楽になります。
市販の鼻吸い器を使うか、耳鼻科や小児科で吸引してもらうのも良い方法です。
咳が強いときは、室内の湿度を保つことが大切です。
加湿器を使用するほか、洗濯物を室内に干すなど、湿度50〜60%を目安にします。
乾燥は痰を固くし、咳を悪化させる原因になるため注意しましょう。

ケアの目的 家庭でできる対策
鼻づまり 鼻吸い器で吸う・姿勢を起こす
咳の悪化防止 加湿・水分補給・空気清浄
呼吸を楽にする 背中をさすって痰を出しやすくする

睡眠と安静を保つ環境づくり

RSウイルス感染症の回復には、十分な休息と安静が欠かせません。熱があるときは無理に動かさず、眠りやすい環境を整えましょう。

  • 部屋の温度:20〜24℃前後を保つ
  • 空気をきれいに保ち、タバコや香料を避ける
  • 夜間の咳き込みに備えて、枕元に水やティッシュを用意

また、保護者が不安を感じると、お子さんにもその不安が伝わります。「少しずつ良くなっているね」「がんばってるね」と声をかけ、安心できる雰囲気を作ってあげましょう。

受診の目安と医療機関での治療

RSウイルス感染症は、家庭で見守れるケースも多い一方で、呼吸の状態が急に悪化することがある病気です。特に乳児では短時間で変化するため、「いつ受診すべきか」の判断がとても重要になります。ここでは、夜間や休日も含めて受診を検討すべきサインと、医療機関で行われる治療について説明します。

夜間・休日でも受診が必要なサイン

次のような症状がある場合は、時間帯にかかわらずすぐに医療機関を受診してください。
これらは呼吸困難や脱水など、重症化のサインである可能性があります。

観察される症状 注意すべき理由
息をするたびに胸がペコペコへこむ(陥没呼吸) 呼吸筋が疲れているサイン
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする 下気道に炎症が広がっている可能性
顔色が悪い、唇が青白い 酸素が十分に取り込めていない
水分やミルクが飲めない 脱水・全身状態の悪化につながる
おしっこが極端に減っている 体内の水分不足が進行している

特に生後6か月未満の赤ちゃんは症状が急に悪化することがあり、数時間で状態が変わることもあります。少しでも「いつもと違う」と感じたら、ためらわずに医師の診察を受けましょう。

小児科・クリニックで行う検査と治療

医療機関では、鼻や喉からの分泌液を採取し、RSウイルスを特定する迅速検査を行うことがあります。結果はおよそ15分ほどで判明します。ただし、症状が典型的であれば検査を行わず、臨床的に診断されることもあります。治療の基本は、対症療法(症状を和らげる治療)です。

たとえば次のようなケアが行われます。

  • 鼻吸引による呼吸の改善
  • 解熱薬の使用(高熱でつらいときのみ)
  • 鼻汁や咳を和らげる薬の内服

抗ウイルス薬はなく、体の回復力を支えるサポート治療が中心となります。医師の指示に従い、家庭でも安静と水分補給を続けましょう。

入院が必要になるケースと経過

以下のような場合は、入院による観察や治療が必要になることがあります。

  • 呼吸数が多く、胸の動きが激しい
  • 酸素濃度(SpO₂)が低い
  • 水分が十分に取れず脱水傾向
  • 生後3か月未満、または心臓・肺にの病気がある

入院では、酸素投与・吸引・点滴管理などが行われ、呼吸の状態が安定するまで慎重に経過をみます。多くの子どもは1週間前後で回復しますが、咳や鼻水が残ることも珍しくありません。回復期も無理をさせず、安静を保つようにしましょう。

再感染と予防のポイント

RSウイルス感染症は、一度かかったからといって安心できるものではありません。
免疫が長く続かないため、同じ子どもが複数回感染することもあります。ここでは、再感染の仕組みと、家庭でできる予防の工夫を小児科医の視点で解説します。

RSウイルスの再感染はなぜ起こる?

RSウイルスに感染すると体内で抗体が作られますが、その免疫は数か月〜1年程度しか持続しません。

そのため、年齢を重ねても何度も感染する可能性があります。ただし、2歳以降の再感染では重症化することはまれで、軽い咳や鼻水程度の症状で済むケースがほとんどです。

それでも、家庭内で乳幼児や基礎疾患のある子にうつると、再び重症化する危険があるため注意が必要です。

再感染の多くは、兄弟・姉妹や保育園での集団生活を通じて起こります。園で流行しているときは、帰宅後の手洗い・うがいを徹底することが基本です。

感染を防ぐための家庭での対策

RSウイルスは飛沫感染・接触感染の両方で広がります。感染力が非常に強いため、家庭内でも「少しの油断」が感染拡大につながります。

感染経路 家庭での予防方法
飛沫感染 マスクの着用、咳・くしゃみの際の口元ガード
接触感染 手洗い・アルコール消毒・タオルや食器の共有を避ける
便からの感染 おむつ交換後の手洗いを念入りに行う

お子さんが鼻水や咳をしているときは、使用済みのティッシュをすぐに捨て、周囲の大人も鼻水の拭き取りや抱っこのあとは必ず手洗いを行いましょう。また、加湿と換気を意識し、ウイルスが乾燥で拡散しにくい環境を保つことも大切です。

ワクチン・手洗い・マスクの活用法

現時点で、RSウイルスに対する一般的な予防接種(ワクチン)は存在しません
ただし、早産児や基礎疾患をもつ乳児には、感染予防のための抗体製剤(パリビズマブ)が医療機関で投与される場合があります。

家庭でできる予防策としては、次の3点を日常的に意識しましょう。

  • 外出後の手洗いを習慣化する
  • 室内の**湿度を50〜60%**に保つ
  • 家族に咳・鼻水の症状がある場合はマスクを着用する

これらの小さな積み重ねが、家庭内感染を防ぎ、子どもの重症化リスクを減らします。

よくある質問

  • QRSウイルス感染症は風邪とどう違うのですか?

    ARSウイルス感染症は風邪の一種ですが、下気道(気管支や肺)まで炎症が広がりやすい点が大きな違いです。 一般的な風邪は数日で軽快しますが、RSウイルスでは咳や鼻水が1〜2週間続くことがあり、乳児では細気管支炎や肺炎に進行することがあります。

  • Q咳が長く続いています。まだRSウイルスが治っていないのでしょうか?

    ARSウイルス感染後は、咳だけが数週間残ることがあります。 これは気道の回復に時間がかかるためで、感染が続いているわけではありません。 ただし、咳が悪化したり、再び発熱がみられる場合は別の感染症を併発している可能性もあるため、小児科を受診しましょう。

  • Q兄弟にうつるのを防ぐにはどうすればいいですか?

    ARSウイルスは接触や飛沫でうつるため、家庭内での予防が大切です。 タオルや食器の共有を避け、こまめな手洗いを徹底しましょう。 おむつ交換のあとや鼻水を拭いたあとは必ず手を洗い、咳のある家族はマスクを着用することで感染拡大を防げます。

  • Q保育園や幼稚園にはいつから登園できますか?

    A発熱がなくなり、呼吸が落ち着き、水分や食事がとれるようになったら登園可能です。 鼻水や軽い咳が残っていても、全身の状態がよければ問題ありません。 ただし、園によっては登園許可証が必要な場合もあるため、医師と保育園双方に確認しましょう。

  • Q再感染を防ぐ方法はありますか?

    ARSウイルスの免疫は一度の感染では完全に得られないため、再感染を完全に防ぐことはできません。 しかし、家庭での手洗い・加湿・換気を習慣化することで、感染のリスクを減らすことができます。 また、早産児や基礎疾患があるお子さんには、医療機関で抗体製剤の投与を受けられる場合があります。

まとめ

家庭でのケアと医師の診察を受けるタイミング

RSウイルス感染症は、乳幼児に多くみられる呼吸器の感染症で、初期は風邪と見分けがつきにくいものです。

しかし、咳が強くなる、呼吸が苦しそう、水分がとれないといった変化が見られたら、早めに小児科での診察を受けることが大切です。家庭では、こまめな水分補給・加湿・安静を心がけるだけでも症状の悪化を防ぐ助けになります。

焦らずにお子さんの呼吸のリズムや表情を観察しながら、必要なタイミングで医師の判断を仰ぎましょう。RSウイルス感染症はほとんどの場合、時間の経過とともに自然に回復します。保護者が落ち着いて対応することが、お子さんにとっていちばんの安心につながります。

家庭でのケアと医師の診察を受けるタイミング

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監修
先生 風間 尚子
風間 尚子先生
小児科専門医
現在、日本赤十字社医療センター非常勤医・ミル訪問クリニック・吉原医院に勤務。小児科専門医、PALS(小児二次救命処置)インストラクターとして救急対応にも精通。

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