子どもに熱があるときの食べ物|小児科医がすすめる食事と飲み物の工夫

子どもが発熱すると、食欲が落ちたり、水分を嫌がったりと、家庭ではどう対応すべきか迷うことが多いものです。体が熱を出すのは、ウイルスや細菌と戦うための自然な反応です。そのため、焦らずに体の回復を助ける食事を選ぶことが大切です。
この記事では、小児科医の視点から「熱があるときに適した食べ物・飲み物」と「避けたい食品」「食べさせ方の工夫」まで、家庭で実践できるケアのポイントを解説します。
Contents
子どもの発熱時に大切な考え方
子どもの発熱は、多くの場合ウイルスや細菌に対する体の防御反応です。体温を上げることで免疫細胞が活性化し、病原体を退治しやすくする自然な働きです。そのため、発熱自体は「悪いこと」ではなく、むしろ体がしっかり反応している証拠といえます。
ただし、熱が出ると体の水分が失われやすく、食欲も落ちるため、家庭では水分補給と安静を中心にサポートすることが大切です。高熱が続いても、元気があり、水分をとれていれば急いで薬を使う必要はありません。反対に、ぐったりしている、泣く元気がない、水分がとれない場合は小児科へ相談しましょう。
熱の高さだけで判断せず、子どもの様子や表情、食欲の有無を総合的に見ることが、家庭でのケアの第一歩です。
熱が出る理由と体の仕組みを理解する
子どもの体は、ウイルスや細菌と出会うたびに免疫力を育てています。その過程で体温を上げるのは、体の「免疫システム」が働いているサインです。体温が上がることで白血球などの免疫細胞が活発になり、ウイルスの増殖を抑えやすくなります。
一方で、発熱中は体のエネルギー消費が増え、胃腸の働きは一時的に低下します。そのため、普段と同じように食べさせると、かえって胃腸に負担をかけてしまうことがあります。「よく食べること」よりも「体を休ませること」を優先し、食事はやさしい内容に切り替えるのが理想的です。
発熱は多くの場合、1〜3日で落ち着きます。体が回復に集中できるよう、保護者は「栄養よりも水分」「頑張らせずに見守る」という姿勢で過ごすことを心がけましょう。
発熱時に意識したい食事と水分の基本
熱があるときの子どもの体は、普段より多くのエネルギーと水分を消耗しています。汗や早い呼吸によって、気づかないうちに体の水分が奪われ(これを「不感蒸泄」といいます)、脱水症状を起こしやすい状態になっています。そのため、食事よりもまず「水分をしっかり補うこと」が最優先です。
食欲がないときに無理に食べさせると、嘔吐や腹痛を起こすことがあります。食べ物は“体が求めたときに、少しずつ”が基本。保護者が意識すべきは、「食べるより飲む」ことを支える姿勢です。体に負担をかけずにエネルギーと水分を補給することが、発熱時の最も重要な家庭ケアになります。
水分補給を最優先にする理由と与え方のコツ
子どもは体内の水分量が多く、発汗で水分を失うスピードも大人より早いため、短時間で脱水状態に陥るリスクがあります。とくに高熱時や下痢・嘔吐を伴う場合は、経口補水液や乳幼児用イオン飲料を上手に活用しましょう。
飲み物を与えるときは、一度にたくさん飲ませるよりも、スプーン1杯や少量を5〜10分おきにこまめに与えるのがポイントです。冷たすぎる飲み物は胃を刺激することがあるため、常温または少し冷ました温度が適しています。
| 状況 | おすすめの飲み物 | 注意点 |
|---|---|---|
| 軽い発熱 | 湯冷まし、麦茶、番茶 | 甘みの強いジュースは避ける |
| 高熱・下痢・嘔吐あり | 経口補水液、イオン飲料 | 炭酸・酸味の強い飲料は刺激になる |
| 食欲が少し戻ってきたとき | スープ、牛乳、みそ汁の上澄み | 熱すぎる飲み物は避ける |
水分がとれているかどうかの目安は、おしっこの回数と色です。半日以上おしっこが出ない、または尿が濃い色をしている場合は脱水のサインと考え、小児科へ相談するようにしましょう。
熱があるときに食べやすい食べ物
発熱時の子どもの体は、ウイルスや細菌と戦うために多くのエネルギーを使っています。その一方で、胃腸の働きは弱まり、普段よりも消化に時間がかかりやすい状態です。そのため、「たくさん食べさせる」よりも、「消化がよく、少しずつ食べられるもの」を選ぶことが大切です。
おすすめは、やわらかく煮込んだおかゆやうどんなど、温かくて刺激の少ない食べ物です。これらは体をやさしく温め、胃腸にも負担をかけません。果物ではすりおろしたリンゴやバナナ、たんぱく質源としては豆腐や卵など、口当たりが良く飲み込みやすいものを中心に選びましょう。
食事は「食べられる範囲」で構いません。熱のある間は、食事よりも水分を優先し、食べられるようになったタイミングで少しずつ再開するようにしましょう。
消化がよく体をやさしく支えるメニュー例
子どもの発熱時に向く食事のポイントは、柔らかい・あっさり・温かいの3つです。具体的には以下のようなメニューが挙げられます。
| 食品グループ | おすすめの食べ物 | 理由 |
|---|---|---|
| 主食 | おかゆ、雑炊、やわらかいうどん、パンがゆ | 胃にやさしくエネルギー補給に適している |
| たんぱく質 | 豆腐、卵(半熟卵・卵とじ)、白身魚 | 消化が良く、体力回復を助ける |
| 果物・デザート | すりおろしリンゴ、バナナ、ゼリー、プリン | 食べやすく、水分・ビタミン補給にもなる |
| スープ類 | 野菜スープ、味噌汁の上澄み、コンソメスープ | 栄養と水分を同時にとれる |
また、食べるときの温度にも注意が必要です。熱すぎるものは喉を刺激し、冷たすぎるものは胃を冷やしてしまいます。人肌程度の温かさを目安にし、子どもが「おいしい」と感じる温度を大切にしましょう。
保護者は「全部食べさせよう」とせず、“ひと口でも食べられたら十分”という気持ちで見守ることが、回復への一番のサポートになります。
熱のときに避けたい食べ物と注意点
子どもが発熱しているときは、胃腸の働きが一時的に弱まり、普段よりも消化に時間がかかります。そのため、どんなに栄養があっても胃に負担をかける食べ物は避けることが大切です。
代表的なのは、脂っこい料理や味の濃い食べ物です。唐揚げやハンバーグなどの揚げ物・炒め物、脂身の多い肉料理、バターや生クリームを使ったデザートなどは消化に時間がかかり、体に負担をかけます。また、みかんやオレンジなどの酸味の強い果物、炭酸飲料やスパイスの効いたカレーなども、喉や胃腸を刺激するため避けましょう。
冷たすぎる・熱すぎる食べ物も同様に、消化器を刺激します。発熱時の食事は、常温〜人肌程度の温度を意識すると安心です。
胃腸への負担を減らす工夫と調理のポイント
発熱中の子どもに食事を作る際は、「柔らかく・薄味で・油を控える」ことを意識しましょう。味付けはできるだけシンプルにし、塩や醤油を控えめにすることで、胃腸への負担を減らせます。
| 避けたい食材・調理法 | 理由 |
|---|---|
| 揚げ物・炒め物 | 油分が多く消化に時間がかかる |
| 繊維の多い野菜(ごぼう・きのこ・海藻) | 消化に時間がかかり胃を刺激する |
| 香辛料・辛味の強い料理 | 胃粘膜を刺激しやすい |
| 冷たい飲食物 | 胃腸の血流を下げて働きを弱める |
一方で、やさしい味のスープや煮込み料理は、少し冷ましてから与えると良いでしょう。温かいおかゆ+スープなどの組み合わせは、胃にも優しく水分も同時に補えます。
保護者は「何を避けるか」だけでなく、「どう調理するか」も意識することで、同じ食材でもずっと体にやさしい食事になります。
食欲がないときの食べさせ方と声かけ
発熱時の子どもが食欲をなくすのは、自然な体の反応です。無理に食べさせようとすると、かえって嘔吐したり、食事への抵抗感を強めてしまうことがあります。そのため、保護者は「食べさせる」よりも「食べられるタイミングを見守る」ことを意識するのが大切です。
食欲が落ちているときでも、水分をしっかり取れていれば数日は問題ありません。まずは経口補水液や麦茶などで水分補給を優先し、体調が少し落ち着いてから食事を再開するようにしましょう。
熱が下がり始めたころに、自然と「何か食べたい」と言い出すことが多いです。その時に備えて、すぐ出せるようなやさしい食事を用意しておくと安心です。
声かけは「頑張って食べよう」ではなく、「ひと口でも食べられたね」「少しずつでいいよ」といった前向きな言葉を選ぶことで、子どもの安心感につながります。
少量でも無理なく栄養をとる工夫
子どもの体が回復し始めると、少しずつ食事を受け入れられるようになります。この時期は“量より回数”を意識することがポイントです。1回でたくさん食べられなくても、数時間おきに少しずつ食べることで、無理なく栄養を補うことができます。
| 工夫の例 | 内容 |
|---|---|
| 食事の回数を増やす | 1日3食にこだわらず、4〜5回に分ける |
| 温度を工夫する | 冷たすぎず、人肌程度で与える |
| 形を変える | 飲みにくいものはスープやゼリー状にする |
| 好きな食材を取り入れる | 本人が欲しがるものを少量ずつ与える |
子どもが「アイス」「ゼリー」と言う場合でも、口の中が痛くなければ少量なら問題ありません。むしろ、“食べたい気持ち”が出てきたことが回復のサインです。
保護者が焦らず、「少しずつでいい」という姿勢で寄り添うことが、安心して回復を支える一番の方法です。
発熱の段階別 食事と飲み物の選び方
発熱中の子どもにとって、「どのタイミングで何を食べるか」はとても大切です。熱の状態や体力の戻り具合によって、体が受け入れやすい食事は変化します。そのため、発熱の段階ごとに食事を調整することが、無理なく回復を促すポイントです。
発熱初期は体がウイルスと戦っている真っ最中のため、消化機能が弱まり、食事よりも水分が中心になります。少し熱が落ち着いてきたら、やわらかい食事でエネルギーを補い、回復期にはバランスの取れた食事で体力を整えていきます。
こうした段階的な対応を意識することで、子どもの体に余分な負担をかけずに済みます。
発熱初期・回復期で変える食事のすすめ方
発熱時の食事は、「初期 → 安定期 → 回復期」と少しずつ変化させていくのが理想です。各段階でおすすめできる食べ物と飲み物をまとめました。
| 段階 | 状態の目安 | 食べ物・飲み物の例 |
|---|---|---|
| 発熱初期(高熱・食欲不振) | 水分が不足しやすく、食事はほぼ取れない | 経口補水液、麦茶、湯冷まし、すりおろしリンゴ、重湯 |
| 安定期(熱が下がり始めた頃) | 少しずつ食欲が戻り始める | おかゆ、具なしうどん、スープ、ゼリー、プリン |
| 回復期(平熱〜元気が戻る) | 食欲が出て、体力を取り戻す時期 | 卵入り雑炊、豆腐、煮込みうどん、やわらかい野菜スープ |
発熱初期は“食べられない”ことを心配しすぎず、水分補給に集中しましょう。少し元気が出てきたら、冷たくてやさしい口当たりの食べ物から再開するのが安心です。回復期には、たんぱく質やビタミンを含む食材を取り入れ、体力をゆっくり取り戻します。
保護者が段階ごとに工夫してあげることで、子どもの体は自然と回復に向かいます。焦らず、「今の体に合った食事」を選ぶことが、最も大切なケアです。
よくある質問
Q子どもが熱のとき、食欲がない場合はどうすればいいですか?
A発熱時は体が回復に集中しているため、食欲が落ちるのは自然なことです。無理に食べさせず、水分補給を優先しましょう。食欲が少し戻ったら、ゼリーやおかゆなどの消化の良い食べ物から少しずつ再開します。
Q熱が高いときにおすすめの飲み物はありますか?
A経口補水液(OS-1など)や麦茶、湯冷ましがおすすめです。高熱で汗を多くかくと塩分も失われるため、イオン飲料を取り入れるのも良いでしょう。冷たすぎる飲み物は胃を刺激するため、常温で与えるのが安心です。
Q発熱中に避けたほうがいい食べ物はありますか?
A脂っこい料理、香辛料の強い食事、酸味の強い果物(みかん、オレンジなど)は避けましょう。これらは胃腸を刺激し、消化を妨げることがあります。やさしい味付けのおかゆやスープが最も適しています。
Q熱があるときにアイスやプリンを与えてもいいですか?
A冷たい食べ物は一時的に喉の痛みを和らげる効果があります。食欲がないときは、少量であれば問題ありません。ただし、甘みが強いアイスは控えめにし、ヨーグルトやゼリーなど栄養を補えるものを選ぶと良いでしょう。
Q何日くらい食欲が戻らないと病院を受診したほうがいいですか?
A通常は熱が下がると徐々に食欲が戻りますが、2日以上水分も取れない、ぐったりしている、尿が少ないなどのサインがあれば、脱水や別の感染症の可能性があります。迷ったときは早めに小児科を受診してください。
まとめ
子どもの発熱は、体がウイルスや細菌と戦っている「回復のプロセス」です。心配になるものの、焦らずに水分と休養をしっかり確保することがいちばんのケアになります。
食事は「食べられるものを、少しずつ、無理なく」が基本。熱のあるあいだは、消化の良いおかゆやうどん、すりおろしリンゴ、豆腐などを中心にして、体への負担を減らしましょう。食欲がないときは、食べさせるよりも水分補給を優先してください。
また、子どもの表情や元気の有無、尿の回数などを見守ることも大切です。
「なんとなく元気がない」「水分がとれていない」と感じたら、早めに小児科を受診しましょう。発熱そのものよりも、体全体の状態を見極めることが家庭でできる最大のサポートです。
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