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子どもの体調不良時の食事|小児科医がすすめる食べやすい食べ物と栄養のポイント

子どもの体調不良時の食事|小児科医がすすめる食べやすい食べ物と栄養のポイント
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子どもの体調がすぐれないとき、保護者は「何か食べさせなければ」と不安になるものです。
しかし、病気のときに最も大切なのは、栄養を無理に摂らせることではなく、体の回復を助ける環境を整えることです。

とくに食事は、症状の経過に合わせて“無理なく・やさしく・少しずつ”戻していくのが理想的です。本記事では、小児科医の視点から、体調不良時におすすめの食べ物や飲み物、避けたい食品、家庭でのケアのポイントをわかりやすく解説します。

体調不良の子どもに食事を与えるときの考え方

子どもが感染症にかかったとき、食欲が低下するのはよく見られる生理的変化です。
そんな時は、食事を無理に取らせるよりも、体が回復に専念できる環境を整えることが大切です。

体調不良時の基本は、

  • 水分を優先すること
  • 胃腸に負担をかけないこと
  • 子どものペースに合わせること

この3つです。どれもシンプルですが、実際には焦って食べさせようとしてしまう保護者が少なくありません。ここではまず、体調不良時の「食事の基本姿勢」を整理しておきましょう。

食欲がないときは「栄養」より「水分」を優先する

体調を崩したときにまず大切なのは、「食べること」よりも「飲むこと」です。
発熱や嘔吐、下痢などの症状があると、体内の水分が急速に失われるため、脱水を防ぐことが何よりも優先されます。

そのため、麦茶や白湯、子ども用の経口補水液などを、スプーン1杯ずつでも構いませんから、短い間隔でこまめに与えるようにしましょう。

「何も食べていないのに大丈夫かな」と心配する保護者も多いですが、水分が取れていれば、1〜2日程度食べれなくても問題ありません。もちろん最低限の塩分と糖分をとる必要はありますが、補水ができていれば自然に回復へ向かう力を持っています。
ただし、冷たすぎる飲み物は胃腸への刺激になるため、人肌程度の温かさを目安にすると安心です。

胃腸にやさしい消化の良い食べ物を選ぶ

食欲が戻ってきたら、まずは消化の良い穀類やスープ類から始めてみましょう。
おかゆや柔らかいうどん、野菜のスープなどは、体への負担が少なく自然にエネルギーを補えます。

味つけは薄めにし、塩分や脂肪を控えることで胃腸の働きを助けます。
また、香りのよい出汁を使うと食欲を刺激し、少量でも「食べたい」という気持ちを引き出せるでしょう。

無理なく食べられる環境づくりと声かけのコツ

体調がすぐれない子どもにとって、食べる環境も回復を左右します。
静かで落ち着いた場所で、保護者が穏やかな表情で見守るだけでも、子どもは安心して食事に向かうことができます。

「もう少し頑張って食べよう」ではなく、「これだけ食べられたね」「少しずつ良くなってきたね」と声をかけることが、子どもの回復力を育てます。心の安心は、体の回復にもつながる大切な“栄養”なのです。

症状別|体調不良時におすすめの食べ物と飲み物

体調不良といっても、症状によって体の状態は異なります。発熱、嘔吐、下痢、食欲不振――それぞれに合わせた食事のとり方を知っておくと、回復をサポートしながら無理のないケアができます。

ここでは、代表的な症状ごとに「食べやすい食べ物」と「避けたい食材」を紹介します。

発熱があるとき:水分と塩分補給が大切

発熱があると、汗とともに水分や塩分が失われやすくなります。
そのため、まずは脱水を防ぐことが何より重要です。
おかゆやスープなどで自然に水分を取りつつ、必要に応じて経口補水液を取り入れるとよいでしょう。

食べ物 ポイント
おかゆ 消化が良く、温かさが安心感を与える
野菜スープ・味噌汁の上澄み 水分と塩分をバランスよく補える
ゼリー・アイスクリーム 熱による食欲低下時に口当たりが良い

食べられる量よりも、**水分をしっかりと摂れているか**を確認しましょう。 冷たい飲み物や刺激の強い味つけは避け、体をやさしく潤すことを心がけてください。

嘔吐・吐き気があるとき:少量ずつ、段階的に再開

嘔吐や吐き気があるときは、まず胃を休ませる時間を設けることが大切です。
吐いた直後に食べ物や飲み物を与えると、再び嘔吐を起こすことがあります。
30分から1時間ほど経過して落ち着いたら、スプーン1杯の水分を5分おきに少しずつ与えましょう。
人肌程度の白湯や経口補水液が適しています。
吐き気が治まり、水分が摂れるようになったら、重湯や薄いおかゆ、具のないスープを少しずつ再開します。
量を増やすのは子どもの様子を見ながらで構いません。
「吐かずに飲めた」「食べられた」という成功体験を積むことが、回復の第一歩です。

下痢のとき:腸にやさしい主食と避けたい食材

下痢が続くときは、腸の負担を減らしながら脱水を防ぐことが重要です。
おかゆやうどんなど、水分が多くやわらかい主食を中心にしましょう。

食材 ポイント
おかゆ・重湯 消化が良く、水分補給にも役立つ
やわらかいうどん 炭水化物と塩分を同時に補える
すりおろしりんご ペクチンが腸の調子を整える
バナナ エネルギー源として優れ、消化しやすい

一方で、ごぼうやきのこ、海藻類など繊維の多い食材や、乳製品、脂っこい料理は腸の動きを刺激し、症状を悪化させることがあります。 食欲が出てくるまでは、刺激の少ないやさしい食事を心がけましょう。

小児科医がすすめる回復を助ける食事とメニュー例

体調が少しずつ回復してきたら、エネルギーを補いながら胃腸を整える段階に入ります。
この時期は「何を食べるか」よりも、どんな形や温度で食べるかがポイントです。
消化の良い主食を中心に、体にやさしいメニューを少しずつ取り入れていきましょう。

主食:おかゆ・うどん・パンがゆなどの消化の良いごはん

回復期の子どもには、炭水化物中心の温かくやわらかい主食が最適です。香りや食感のやさしさが食欲を刺激し、体力回復を助けます。

主食 ポイント
おかゆ 温かくとろみがあり胃にやさしい
うどん 柔らかく短く切って与える
パンがゆ 牛乳やスープで煮て口当たりを良く
おじや 出汁の香りで食欲を促す

タンパク質とビタミンをとれるやさしい食材

体力の回復には、良質なタンパク質とビタミンが欠かせません。ただし、脂肪分を控え、柔らかく調理することがポイントです。

食材 調理の工夫
豆腐 湯豆腐やスープでやさしく温める
茶碗蒸しや卵スープでふんわりと
白身魚 蒸す・煮るなど脂を使わない調理法で
鶏むね肉 茹でて細かくほぐすと食べやすい

ビタミン類は、にんじんやかぼちゃ、ブロッコリーなどを柔らかく煮たスープで取り入れるとよいでしょう。こうした食材は粘膜を守り、免疫機能の回復を助けます。

デザート・間食でととのえる「楽しみながら食べる工夫」

食欲が落ちているときは、「食事」というよりも、“食べるきっかけ”をつくるおやつが役立ちます。ゼリーやプリン、すりおろしたりんご、バナナなどは口当たりが良く、自然な甘みで気持ちを落ち着けてくれます。

また、少量のヨーグルト(酸味の弱いもの)は腸の調子を整える働きもあります。
一口のアイスクリームも、熱や喉の痛みがあるときには気持ちを和らげる助けになるでしょう。食べる量よりも「楽しく食べられたか」を大切にし、焦らず子どものペースに合わせてください。

体調不良時に避けたい食べ物と理由

回復を早めるためには、「食べさせること」と同じくらい大切なのが「避けること」です。体調不良のときは胃腸が敏感になっており、普段は平気な食材や味つけでも、回復を遅らせたり、再び体調を崩す原因になることがあります。
ここでは、子どもの体に負担をかけやすい食品とその理由を整理してみましょう。

胃腸に負担をかける脂っこい料理や濃い味付け

体調を崩しているときは、胃腸の働きが一時的に弱まっています。そのため、脂肪分の多い料理や香辛料の強い食べ物は避けるようにしましょう。
一見するとエネルギーになりそうですが、消化に時間がかかり、胃の不快感や腹痛を引き起こすことがあります。

食品 理由 代わりにおすすめ
唐揚げ・天ぷら 油分が多く消化が遅い 茹で鶏・白身魚
カレー・ラーメン 香辛料や塩分が強い うどん・野菜スープ
スナック菓子 油と塩分の摂りすぎ おにぎり・おかゆ

体力を回復させたいときほど、体にやさしい「薄味・温かい・柔らかい」料理を意識しましょう。少し味気なく感じるときは、出汁の風味を活かすと自然に食欲を引き出せます。

食物繊維や乳製品の取り方に注意

普段は健康に良いとされる食材でも、体調不良のときには一時的に避けたほうが良いものがあります。
代表的なのが、食物繊維の多い食品と乳製品です。食物繊維は腸の動きを整える働きがありますが、下痢や腹痛があるときには刺激が強く、かえって症状を長引かせることがあります。

ごぼうやれんこん、きのこ、こんにゃく、海藻などは体調が戻ってから再開しましょう。
代わりに、にんじんやじゃがいも、かぼちゃなどを柔らかく煮込むと、やさしくエネルギーを補えます。

乳製品についても注意が必要です。下痢や嘔吐のあとには、一時的に乳糖を分解する力が弱まり、牛乳を飲むとお腹が痛くなることがあります。無理をせず、症状が治まってから少しずつ再開しましょう。

食品 再開の目安 与え方の工夫
牛乳 嘔吐・下痢が完全に治まってから 温めて少量から試す
ヨーグルト 腹痛がないことを確認してから プレーンをスプーン1〜2杯程度
チーズ 完全回復後に 少量をおかゆやうどんに混ぜる

「体によさそう」でも避けた方がよい意外な食品

「体に良い」と思っていても、体調を崩しているときには刺激になる食材があります。
酸味の強い果物や糖分の多いドリンク、大人向けの健康食品などは、その代表です。

避けたい果物 理由 代わりにおすすめ
オレンジ・グレープフルーツ 酸が胃を刺激しやすい すりおろしりんご
キウイ・いちご 酸味や種が喉にしみる バナナ
パイナップル 酵素が舌を刺激する 煮たりんご

また、スポーツドリンクや栄養ドリンク、果汁100%ジュースなども注意が必要です。 糖分が多く、胃腸への刺激になることがあります。水分補給には、麦茶や白湯、子ども用の経口補水液を選ぶと安心です。 健康食品やサプリメントも、体が元気を取り戻してから医師に相談のうえで取り入れましょう。

💡 小児科医のアドバイス
回復を早めるためには「強い栄養」よりも「やさしい食事」が大切です。
無理に食べさせようとせず、体が自然に“欲しい”と感じるものを少しずつ取り入れていきましょう。

回復期の食事と生活の整え方

熱が下がり、少しずつ元気が戻ってきたとき、保護者が最も悩むのが「いつから普通の食事に戻していいのか」という点です。

回復期は、見た目は元気そうでも、胃腸や体力はまだ完全には回復していないことが多いもの。ここでは、無理のないステップで食事を戻していく方法を紹介します。

食欲が戻るまでの段階的なステップ

体調が落ち着いてきたら、食事の内容をおかゆから初めて、徐々に通常時のご飯に近づけていきましょう。
このとき大切なのは、「昨日より少し食べられた」「今日は味がわかるようになった」といった小さな変化を見逃さないことです。焦らず、子どものペースを尊重しながら進めることが、最も安全で確実な回復の方法です。

栄養バランスと免疫力を高める食事の考え方

体が元気を取り戻してきたら、少しずつタンパク質とビタミンを意識した食事を取り入れましょう。

たとえば、朝はおかゆと果物、昼はうどん、夜は豆腐と野菜スープ――そんな組み合わせでも、1日を通して見れば十分にバランスが取れています。

大切なのは「完璧な栄養」ではなく、安心して食べられることです。食事が進むにつれて、自然と体の免疫力も戻っていきます。

回復を支える家庭での環境づくりと休養

食事と同じくらい大切なのが、家庭での過ごし方です。体をしっかり休ませるために、部屋の温度は20〜23℃、湿度は50〜60%を目安に保ちましょう。

乾燥していると咳や喉の痛みが悪化するため、加湿器や部屋干しで湿度を整えると良いでしょう。また、テレビや照明を控えめにして、静かで落ち着いた環境をつくることも回復を助けます。

保護者の声かけも重要です。
「無理しなくていいよ」「少しずつで大丈夫」という一言が、子どもに安心感を与え、回復の力を引き出します。たとえ食べる量が少なくても、叱ったり焦らず、「少し食べられたね」「頑張ったね」と肯定してあげましょう。心が落ち着くことで、体の治り方も穏やかになります。

🌿 小児科医のメッセージ
食べる・眠る・安心する――この3つが整えば、子どもの体は自然に元気を取り戻します。
焦らず、あたたかく見守ることが、いちばんの治療です。

よくある質問

  • Q子どもが体調不良で1日まったく食べない場合、病院に行くべきですか?

    A水分がしっかり取れていて、元気が少しでもあれば、1日程度食べなくても大きな問題はありません。 ただし、水分も取れない・ぐったりしている・尿が少ないなどの場合は、脱水の可能性があるため受診を検討しましょう。 経口補水液を少量ずつ与えてみるのが最初のステップです。

  • Q発熱中にアイスクリームやゼリーを与えても大丈夫ですか?

    Aはい、構いません。熱で食欲が落ちているときには、冷たくて口当たりのよい食品が食べやすい場合があります。 ただし、冷やしすぎると胃腸を刺激することがあるため、少し常温に戻してから与えるのがおすすめです。

  • Q下痢が続いているとき、ヨーグルトを食べさせても大丈夫ですか?

    A下痢の最中は避けたほうが安心です。 乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)が、一時的に消化しにくくなっていることがあるためです。 症状が治まったら、プレーンタイプのヨーグルトを少量から試してみてください。

  • Q体調が良くなってきたとき、どんな順番で食事を戻せばいいですか?

    Aまずは「おかゆ → うどん → ごはん」の順に、やわらかい主食から戻していくとスムーズです。 おかずは豆腐や卵スープなど、あっさりしたタンパク質を中心に。 味つけは薄めを心がけ、体が完全に元気になるまで1〜2日は控えめな食事を続けましょう。

  • Q食欲がないときに食べやすい市販の食品はありますか?

    Aはい、いくつかあります。 たとえば、子ども用ゼリー・プリン・経口補水ゼリー・やわらかうどんパウチなどは、手軽で消化がよくおすすめです。 ただし、添加物や糖分が多いものは避け、できるだけシンプルな原材料の製品を選びましょう。

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監修
先生 風間 尚子
風間 尚子先生
小児科専門医
現在、日本赤十字社医療センター非常勤医・ミル訪問クリニック・吉原医院に勤務。小児科専門医、PALS(小児二次救命処置)インストラクターとして救急対応にも精通。

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