お知らせ

2024.04.25
みてねコールドクター通信

溶連菌感染症について

冬から春、初夏に気を付けたい溶連菌感染症について

慶應大学病院 小児科専門医 中村先生がよくある質問にお答えします

溶連菌感染症は春から初夏にかけて、冬によく見られる感染症であり、強い喉の炎症を引き起こすのが特徴です。喉の痛み、発熱などの症状以外に発疹やイチゴ舌(舌にブツブツができる)、扁桃腺に白い斑点がつくなどの症状を伴うことがあり、治ったあとに腎炎などの合併症を引き起こすケースもあります。
今回は改めて、お子さまが感染したときの対応方法、登園の目安、親御さまからのよくある質問にお答えします。
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どんな病気?

溶連菌感染症は、「溶血性レンサ球菌」と呼ばれる細菌に感染することで発症します。一般的に小児科のクリニックで"溶連菌"という場合は、この溶血性レンサ球菌が、喉などの上気道に感染したことを言います。ですので、症状も発熱と喉が痛いといった症状が主で、咳や鼻水は目立ちません。
溶連菌感染症は、どの年代でも発症しますが最も多く見られるのは小学生です。3歳以下の乳幼児や大人は感染しても典型的な症状が出ないケースもあります。
溶連菌は一般的な風邪と同じように、飛沫感染します。

どんな症状が出るの?

・喉の強い炎症による症状
感染して2~5日の潜伏期間を経て、発熱、倦怠感、喉の痛み、イチゴ舌(舌の表面がイチゴのように赤くブツブツする)といった症状を引き起こします。発熱は38~39℃になることが多く、喉の赤みや痛みが強くなりやすいのが特徴です。
同時に腹痛や嘔吐などの消化器症状、首のリンパ節の腫れ、頭痛などの症状が現れるケースも少なくありません。

・発疹が出ることも…
さらに、手足や体幹に小さな赤い発疹が出ることがあります。発疹は全身に広がると5~6日程度で消えていきます。とびひの原因にもなります。

・まれに怖い「劇症型溶連菌感染症」「溶連菌による皮膚感染」を引き起こすことがある
溶連菌は抗菌薬を適切に使用すれば、確実に治る感染症です。しかし、まれにとても怖い感染症になってしまうことがあります。それが、全身に広がって敗血症や多臓器不全を引き起こす「劇症型溶連菌感染症」と、進行が早く場合によっては体を切断したりすることさえあり得る「溶連菌による皮膚感染」です。
手脚に強い痛みや腫れ、高熱などの症状があるときは注意しましょう。発症すると急激に悪化する場合もあるため、痛みが強い・腫れや発赤の進行スピードが早いときはできるだけ早めに医療機関を受診してください。

溶連菌に感染した数週間後に、関節が痛くなる、おしっこに血が混じる、体がむくむ、といったことがあれば、医療機関に受診して、溶連菌に感染していたことを伝えてください。

検査はどうするの?

特徴的な喉の所見が確認できれば、迅速診断キットを使用して検査を行います。溶連菌の迅速診断キットは精度が高く、喉を綿棒で擦って検査を行います。5~10分程度で結果が出ます。
注意が必要なのは、<感染していなくても検査で陽性と出ることがある>ということです。保育園や小学校に通っている子どもの5〜20%の口の中には溶連菌がいる(感染はしていないけど、保菌している)と言われています。熱が高い、咳がない、喉の痛み・赤みが強いなどの時に検査を行うことが正しい診断には重要になります。

感染したらどうする(治療法は)?

溶連菌感染症の治療には抗菌薬の内服が必要です。溶連菌は耐性菌が少ないので、抗菌薬がよく効きます。
なお、溶連菌感染症の治療で最も大切なことは、出された抗菌薬を全て内服することです。溶連菌感染症はしっかり治り切らないと、症状が改善してから2~4週間ほどでリウマチ熱などの合併症を引き起こすことがあります。抗菌薬を内服すれば、2日ほどで症状は改善して熱も下がっていきますが、処方された抗菌薬は症状が改善した後も必ず飲み切るようにしましょう。副作用が出る場合には医師に相談しましょう。

ホームケアのポイント

溶連菌感染症は、38~39℃の高熱により体の水分が失われやすいのにもかかわらず、強い喉の痛みで水分や食事が上手く摂れなくなるケースも少なくありません。ホームケアではできるだけ小まめに水分を摂れるように心がけて下さい。食事は味が濃いものは避けて喉に刺激になりにくいものがおすすめです。
症状が強いときにはご本人が食べられるもの、飲めるものを少しずつあげれば問題ありません。ただし、喉に刺激になる熱いもの・冷たすぎるもの・辛いもの・酸っぱいものは避けましょう。のど越しがよいヨーグルトやゼリー、消化の良い薄味のお粥や煮込みうどんなどがおすすめです。
ただし、以下のような症状があるときは水分が不足している可能性があります。点滴などの治療が必要になる場合もあるため、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

・肌、唇、口の中が乾いている
・汗をかかない
・尿の回数が少なく、尿が濃くなっている
・便が硬く水気がない
・ぐったりしている
・機嫌が悪いが涙が出ない

その他、体温が高いときは首、脇の下、足の付け根など太い血管が走行している部位を冷やすと効果的です。ご本人の機嫌が悪くならなければぜひ試してみてください。

家庭内感染を防ぐには?

溶連菌感染症には有効なワクチンがないため、家庭内での感染を防ぐには手洗い・うがいなどの正しい対策が必要です。
溶連菌感染症は、飛沫感染と接触感染によって家族に感染を拡げる可能性があります。
飛沫感染は発症者の咳やくしゃみのしぶきに含まれる溶連菌が近くにいる人の口や鼻から侵入、接触感染は溶連菌が付着した手で口や鼻に触れることで体内に侵入する経路のことです。
家庭内での感染を防ぐには、以下のような対策を行いましょう。

・こまめな看病が必要な乳幼児を除いて、家族と別室の部屋で休むなど物理的な距離をとる
・発症者と接するときは双方でマスクを着用する
・手洗いや消毒をする
・タオルや寝具、食器は共用しない
・おむつや吐物などの片づけをするときは手袋を着用し、手洗いと消毒を徹底する

登園・登校はいつから大丈夫?

溶連菌に罹ったら、登園・登校はできません。
溶連菌に感染してしまった後の登園・登校基準は「適正な抗菌薬治療開始後24時間を経て、全身状態が良い状態」であることです。抗菌薬を内服すれば24時間以内に熱が下がることが多く、周囲の人へ感染させる可能性も無くなるからです。そのため、治療開始後24時間以上が経過し、症状が回復して水分や食事が十分に摂れるようになれば登園・登校は可能です。

教えて!中村先生~溶連菌について、親御さんからよくある質問にお答えします~

Q:同じシーズンに何度も罹ることはありますか?
A:はい、溶連菌は何度も繰り返す可能性があります。お子さんにお薬を飲ませることは大変ですが、抗菌薬を全て飲み切ることが重要です。

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Q:大人も感染しますか?感染した場合、どのような症状が出ますか?
A:はい、お子さんから親御さんにうつってしまうことも珍しくありません。症状はお子さん達と一緒で、高い熱、喉の痛みです。溶連菌感染では咳は出ないので、咳が出ている時はウィルスなどによる、他の感染症を疑います。

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Q:症状が落ち着いていても抗菌薬は飲ませたほうが良い?
A:はい、必ず飲ませてください。溶連菌は、稀ですがリウマチ熱などの重篤な合併症を起こすことが知られています。リウマチ熱になると心臓にダメージが加わる場合があり、小児科医としては絶対に防ぎたいと思っています。

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Q:症状がないのに、検査したら陽性だった。治療は必要ですか?
A:熱や喉の痛みが無ければ抗菌薬の内服をする必要はありません。溶連菌は健康なお子さん達の5-20%に存在している(保菌している)と言われています。そういう意味では熱やのどの痛みがない時には検査を行う意義はあまりないかもしれません。

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慶應義塾大学病院 小児科専門医 中村 俊一郎先生

溶連菌は春〜初夏もしくは、冬に感染のピークがあるのですが、2023~2024年の冬、溶連菌がとても流行しました。

溶連菌は熱と喉の痛みが特徴です。解熱剤としても使われるアセトアミノフェンには痛み止めの作用があるので、お子さんが喉を痛がって水分を取れない時には使うと良いと思います。

溶連菌は細菌なので抗菌薬を使って治療を行う必要がありますが、耐性菌も少ないですし、抗菌薬もすぐ効くことが多いのですが、後遺症のことを考えて必ず抗菌薬は飲み切って頂くことが重要です。

また、他の感染症が流行したこともあり、抗菌薬がなくなるクリニック•地域も出てきています。
結果として患者さんに処方できる抗菌薬の選択肢が少なくなり、溶連菌感染時に飲むと発疹を起こすことがあるサワシリンを出す機会が増えています。

薬を変更すれば皮疹は良くなるのですが、皮膚症状の原因を確かめるために飲んでいた薬がなんだったのかが重要になります。皮疹が出ても慌てず、お薬手帳を忘れずに医療機関に受診してくださいね。

監修医師のご紹介
慶應義塾大学医学部卒、同病院 小児科
小児科専門医・小児心身医学認定医・公認心理師・出生前コンサルト小児科医
普段は大学病院で病気のお子さん、病気を抱えるお子さんのきょうだい・親御さんのメンタルヘルスケアを担当。
<子どもの心の健康>から<日本の社会を変える>を合言葉に小児科医として活動しています。

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